インバウンドコラム
著者:ベンジャミン・ボアズ
出版社:クロスメディア・パブリッシング
著者のベンジャミン・ボアズ氏は在日歴15年を超え、内閣府が進める「クールジャパン戦略」でクールジャパン・プロデューサーを務めるほか、国内外で多数の講演を手掛ける。
本書では、省庁の垣根を越えて魅力的な日本を世界に発信しようと2010年にスタートして以降日本国内を中心に国外にも広がった「クール・ジャパン戦略」の現在の問題点や課題を指摘。日本のクール(かっこいい)なコンテンツを世界中に届けるために必要な視点について、筆者自身の経験なども踏まえながら、提言している。
「マイジャパン」と「ユアジャパン」を区別
著者が本書を通じて一貫して伝えているのは、世界を見渡せば既に大勢の人が日本をクールだと感じていることだ。ところが、現在のクール・ジャパンプロジェクトで発信されている物の多くは、日本の価値観に基づいて発信されており、著者はこの状況を「マイジャパン」と呼んでいる。これに対し、海外の人にとっての「日本」や「クールな日本」は、海外の人がそれぞれの頭の中でイメージするものにすぎず、それは時代により変化するもので、また人によっても違うという。著者はこれを「ユアジャパン」と呼んでいる。
そして、日本では「マイジャパン」と「ユアジャパン」を区別することなく、一緒くたに捉えられていること、また諸外国に日本の魅力を発信するためには、海外から見た日本のイメージを理解したうえで展開するべきだが、多くの場合、国内に住む日本人が捉える「マイジャパン」の視点で情報発信されたり、プロジェクトが進んでいることが問題だと指摘している。
商品を利用する「消費者」がカッコいいことを訴求せよ
世界から見た日本の印象、イメージを理解しないまま、日本人の常識や価値観に基づいて日本の魅力を発信し続けているいま、単なる自画自賛のキャンペーンとなってしまっていること。
この状態から脱却するためにも、海外の消費者に目を向けること、彼らが何を望んでいるのか、またクールだと思っているのになぜ購入しないのか、行動に起こさないのか、彼らへのヒアリングなどを通じて分析すること。そして消費者のニーズにマッチした商品を提供するべき、と著者は主張している。
また、気を付けなければいけないのは、商品やサービスの魅力を訴求するだけでは十分ではなく、商品を利用している消費者がクールでかっこいい、というメッセージを伝えること。
マーケティングやプロモーションの原点である「ターゲットは誰なのか」「そのターゲットは何を期待しているのか」を知ること。またそれらを理解するためにも、相手の声に耳を傾けることが大切だという。
日本の魅力をどのように海外や外国人に伝えファンになってもらうか、という視点で展開されており、訪日客誘致に取り組む観光インバウンド事業者にも役立つ内容となっている。
インバウンドのお客様を誘客したいと考える地域、観光事業者の方で、マーケティングやプロモーションなどに携わる方であれば、現在の取り組みを見直す良い機会になるのではないか。
文:株式会社やまとごころ 堀内 祐香
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