インバウンドコラム
著者:中藤 玲
出版社:日経BP 日本経済新聞出版本部
「年収1400万円は低所得」という帯の言葉からいきなり引き込まれて、ノンストップで読破。日本経済だけでなく、我々の仕事や生活の現状と今後を深く考えさせられる一冊だ。
日本経済新聞社に所属する著者は、様々な調査やインタビューを踏まえ、多面的な視点から「安いニッポン」の実態を指摘している。ディズニーの入場券も100円ショップで有名なダイソーの商品も、欧米だけでなくアジア諸国よりも安く、ともに世界最安値水準。他にも豊富な事例を紹介するとともに、経済アナリストや業界を代表する企業の当事者へのインタビューから、その根本原因や対策についても深掘りする内容となっている。
本書は2021年3月に出版されているが、その当時の為替レートは1ドル108円、2年後の2023年3月は1ドル133円とかなり円安が進行した。本書の内容以上に「安くなったニッポン」を想像するだけで、さらにその衝撃度合いが増す。
ニセコといったインバウンドに人気の観光地をはじめ、宿泊や飲食、また、それを支える労働環境や賃金についても言及する内容になっており、生産性の低さや人材不足が深刻な観光産業に関わる我々こそ知っておくべき実態や課題が満載だ。ぜひ一読してもらいたい。
文:株式会社やまとごころ 代表取締役 村山 慶輔
最新記事
ガイドの仕事のリアルを物語で描く『通訳ガイド美桜の日本へようこそ! プロポーズは松本城で』 (2024.12.04)
日本の観光変革に必要な人材とは?『観光地経営でめざす地方創生 ─ インバウンド獲得の司令塔となる世界水準DMOとは』 (2024.11.27)
「今」求められる持続可能な観光の実践に向けて『オーバーツーリズム 増補改訂版 観光に消費されないまちのつくり方』 (2024.11.13)
事例から学ぶ 持続可能な観光地への道『観光大国スペインに見る、オーバーツーリズムの現在と未来』 (2024.11.06)
今と未来の「日本」を考えるきっかけとなる一冊『観光消滅 観光立国の実像と虚像』 (2024.10.23)
持続可能な観光、旅の本質的価値を考え直すきっかけに『センス・オブ・ワンダー』 (2024.10.09)
東大生が徹底調査、日本の魅力再発見に役立つ『外国人しか知らない日本の観光名所』 (2024.09.25)
21世紀の産業革命が観光産業に与える影響とは?『データでわかる2030年 雇用の未来』 (2024.09.11)