インバウンドコラム
社員15倍! 見学者300倍! 踊る町工場 伝統産業とひとをつなぐ「能作」の秘密
著者:能作 克治
出版社:ダイヤモンド社
本書は、創業100年超を誇る富山県高岡市の鋳物メーカー、株式会社能作に焦点を当てたものである。能作は、伝統の鋳造技術を守りながらも、デザインなどで新たな挑戦を行ったり、海外進出などの活動を続けている。地場産業の雄として活躍する能作が、どのように伝統産業としての地位を守り、社員や地域との関係を持続的に築いているかを紹介している。
著者の能作克治氏(元代表取締役社長)は、自身の想いを奮い立たせるきっかけとなるエピソードを交えながら、能作の経営理念や組織文化、製品への情熱などを語っているが、能作は、”4つのしない”にこだわった経営をしている。
「儲け」を優先しない……儲けではなく、「楽しむこと」を優先する
社員教育をしない……教えるのではなく、自分で気づかせる
営業活動をしない……営業する側ではなく、営業される側になる
同業他社と戦わない……競争ではなく、共創する
これらにまつわるエピソードや実例が書籍中に数多く紹介されている。
読み終えると、能作の成功の鍵は、従業員のモチベーションの高さとチームワークの強さにあると感じる。社員教育をせず、自立的に育てることを意識しているがゆえに、仕事に対する情熱を持った人材が育ち、組織としての一体感を高めるとともに、地域との一体感も高めていると言えるだろう。
本書は、地場産業がその地位を守るにあたって、地域との絆を深めるだけでなく、地域のシビックプライドを高め、成長し続けるためのコツが詰まっている。地場産業の保全、持続、地域の巻き込み方、という点で突破口を探している方には、参考にしていただきたい一冊である。
文:株式会社やまとごころ 竹花 駿平
最新記事
ガイドの仕事のリアルを物語で描く『通訳ガイド美桜の日本へようこそ! プロポーズは松本城で』 (2024.12.04)
日本の観光変革に必要な人材とは?『観光地経営でめざす地方創生 ─ インバウンド獲得の司令塔となる世界水準DMOとは』 (2024.11.27)
「今」求められる持続可能な観光の実践に向けて『オーバーツーリズム 増補改訂版 観光に消費されないまちのつくり方』 (2024.11.13)
事例から学ぶ 持続可能な観光地への道『観光大国スペインに見る、オーバーツーリズムの現在と未来』 (2024.11.06)
今と未来の「日本」を考えるきっかけとなる一冊『観光消滅 観光立国の実像と虚像』 (2024.10.23)
持続可能な観光、旅の本質的価値を考え直すきっかけに『センス・オブ・ワンダー』 (2024.10.09)
東大生が徹底調査、日本の魅力再発見に役立つ『外国人しか知らない日本の観光名所』 (2024.09.25)
21世紀の産業革命が観光産業に与える影響とは?『データでわかる2030年 雇用の未来』 (2024.09.11)