インバウンドコラム
社員15倍! 見学者300倍! 踊る町工場 伝統産業とひとをつなぐ「能作」の秘密
著者:能作 克治
出版社:ダイヤモンド社
本書は、創業100年超を誇る富山県高岡市の鋳物メーカー、株式会社能作に焦点を当てたものである。能作は、伝統の鋳造技術を守りながらも、デザインなどで新たな挑戦を行ったり、海外進出などの活動を続けている。地場産業の雄として活躍する能作が、どのように伝統産業としての地位を守り、社員や地域との関係を持続的に築いているかを紹介している。
著者の能作克治氏(元代表取締役社長)は、自身の想いを奮い立たせるきっかけとなるエピソードを交えながら、能作の経営理念や組織文化、製品への情熱などを語っているが、能作は、”4つのしない”にこだわった経営をしている。
「儲け」を優先しない……儲けではなく、「楽しむこと」を優先する
社員教育をしない……教えるのではなく、自分で気づかせる
営業活動をしない……営業する側ではなく、営業される側になる
同業他社と戦わない……競争ではなく、共創する
これらにまつわるエピソードや実例が書籍中に数多く紹介されている。
読み終えると、能作の成功の鍵は、従業員のモチベーションの高さとチームワークの強さにあると感じる。社員教育をせず、自立的に育てることを意識しているがゆえに、仕事に対する情熱を持った人材が育ち、組織としての一体感を高めるとともに、地域との一体感も高めていると言えるだろう。
本書は、地場産業がその地位を守るにあたって、地域との絆を深めるだけでなく、地域のシビックプライドを高め、成長し続けるためのコツが詰まっている。地場産業の保全、持続、地域の巻き込み方、という点で突破口を探している方には、参考にしていただきたい一冊である。
文:株式会社やまとごころ 竹花 駿平
最新記事
全国500超の観光事例を4つのDXカテゴリに分類して紹介「改革・改善のための戦略デザイン 観光業DX」 (2023.09.27)
地方経済立て直しとビジネス推進のヒント満載「山奥ビジネス 一流の田舎を創造する」 (2023.08.18)
下請けからの脱却『提案型』ものづくりで改革を「中小企業のまち大田区からはじまる ものづくり日本再興プロジェクト」 (2023.07.26)
地域資産の継承に必要なポイント考察 「少人数で生き抜く地域をつくる~次世代に住み継がれるしくみ~」 (2023.07.19)
過疎地の人材育成モデルの参考に「700人の村がひとつのホテルに『地方創生』ビジネス革命」 (2023.06.21)
なぜ日本の商品はこんなに安いのか、その原因と対策を深掘り「安いニッポン『価格』が示す停滞」 (2023.06.07)
地域の隠れた資産の掘り起こしと磨き上げの参考に 「スキー場は夏に儲けろ! 誰も気づいていない『逆転ヒット』の法則」 (2023.05.24)
観光業の価値と今後のあり方を見つめ直すきっかけに「人が活躍するツーリズム産業の価値共創」 (2023.05.10)