インバウンドコラム

英、仏など急速な観光需要回復に人材確保追いつかず、欧州の空港や航空会社で大混乱

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欧州ではほとんどの国において新型コロナウイルス関連の規制が撤廃され、国際的な人の往来が活発化している。一方で、航空業界は人員確保が追いつかず、急回復した夏の需要に対応しきれない事態に陥っている。こうした中、国際航空運送協会(IATA)は7月13日、EU発着枠使用ルールをパンデミック前に戻すと、旅客に混乱をもたらす危険性があるという懸念を表明した。今回は英国を中心に、旅行需要のリバウンドが起きている欧州の動きを紹介する。

 

英ヒースロー空港、人員確保が追いつかず夏の旅客数を1日10万人に制限

今年の春以降、新型コロナウイルス関連の入国規制や国内の各種規制が撤廃された英国では、旅客需要が急速に高まり、人員確保が追いつかない空港で混乱が生じている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要が急減し、業績が悪化した航空業界では、パンデミック以降、人員整理を余儀なくされていためだ。

ロンドンのヒースロー空港は7月12日、航空会社各社に対し、同空港を出発する新規航空券の予約販売を、同日から9月11日までの間自粛するよう要請した。これに伴い、1日当たりの出発旅客数を10万人に抑えると発表している。新型コロナウイルス感染拡大前の夏の時期は1日当たり約12万5000人の旅客数があったという。ロンドン近郊で2番目の規模を持つガトウィック空港も、7月と8月の運行便数に上限を設けると発表している。

一方、航空会社も人手不足に直面しており、英航空大手のブリティッシュエアウェイズは人員不足のため、4月から10月にかけて約3万便を欠航し、LCCのイージージェットも7月から9月にかけて約1万便を欠航する。

 

英国、ポンド安の影響もあり今夏は国内旅行が人気

航空便の混乱に見舞われている英国では、夏の国内レジャー旅行の予約が伸びているという。英政府観光庁が今年6月に行ったアンケートによると、パンデミック前に比べて海外旅行より国内旅行を選ぶ可能性が高くなったという人は40%近くに上ったそうだ。その理由として、65%の人は「計画のしやすさ」を挙げたほか、54%の人が「空港での長い行列や欠航リスクを避けたい」、47%の人が「国内旅行の方が安い」と回答したという。

空港の混乱に加え、英国ではポンド安が続いており、ドルやユーロに対してポンド相場が下がっていることも国内旅行を選ぶ要因となっているようだ。さらには、二酸化炭素の排出量削減への関心の高まりもあり、航空機での旅行よりも、鉄道で移動できる国内旅行を選択するという人も増えているという。

 

欧州各国の空港でも混乱が発生、搭乗手続きやセキュリティチェックに数時間

空の便の混乱は英国のみならず、欧州各地でも起きている。KLMオランダ航空は7月8日、アムステルダムのスキポール空港で人手不足が起きていることを理由に、8月28日にかけて1日あたり10~20便の運航をキャンセルすると発表した。

夏季休暇の時期に入ったドイツの空港でも混乱が生じている。人手不足に陥っていることなどから多数のフライトがキャンセルされ、空港での搭乗手続きやセキュリティチェックに数時間を要する事態が生じているという。航空会社や空港運営会社はこの問題に対処するため、外国人労働者の一時的な雇用を許可するよう政府に要請し、政府は外国人労働者を迅速に雇用できる措置を取ると発表した。

ヨーロッパの大手航空会社エールフランスKLMやドイツのルフトハンザ航空は、需要を減らすために最も安い航空券の販売を制限している。エールフランスKLMは「アムステルダム=ロンドン」といった短距離フライトの航空券の価格を通常より大幅に値上げし、ルフトハンザ航空は7月のドイツ国内での運行便数を減らしたという。

 

欧州のホテル・飲食業界は、移民の採用や賃上げで需要に対応

欧州の宿泊業界や飲食業界も、急回復する需要に人員確保が追いついていない。欧州ホテルチェーン最大手のアコーホテルズは、フランス国内の人手不足を補うため、学生や北アフリカからの移民を採用するなど、業界未経験者を試験的に迎え入れる取り組みを行っているという。スペインのホテルチェーン、メリアは、高い賃金や無料の住宅、賞与や医療保険など、手厚い福利厚生を提供して人材獲得に取り組んでいる。欧州屈指の観光地であるスペインとポルトガルでは、バーや飲食店などの接客業界も人手不足に陥っており、賃金の値上げや移民の採用などを行っているようだ。

スペイン観光当局は6月30日、今夏に同国を訪れる観光客はパンデミック前の90%に達すると予想していることを明らかにした。特に北欧からは2019年を上回る予約が入っているほか、ドイツや英国からの旅行者も今後数か月で2019年の水準を上回ると見られている。

 

パリで3年ぶりにジャパンエキスポが開催

仏パリでは、7月14日から17日の4日間にわたり、ジャパンエキスポが開催された。ヨーロッパ最大級の日本文化の祭典といわれるジャパンエキスポは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で過去2回の延期を経て、今回が約3年ぶりの開催となった。会場には日本の漫画やアニメファンが多く集まったほか、書道や囲碁、将棋に挑戦する人の姿もあったという。同イベントには、4日間で25万人の来場者が見込まれるという。

 

 

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