インバウンドコラム
1月21日に中国の春節連休が始まった。中国政府は「ゼロコロナ政策」を事実上終了し、1月8日から、入国時の強制隔離の撤廃や中国人による海外渡航の再開を認めている。春節連休前に行動制限を撤廃したことにより、コロナ禍前は、例年話題となっていた国民の大移動「春運」も再び取り沙汰されているようだ。今回は春節連休に伴う中国の動向を紹介する。
春節前後の40日間で、延べ21億人が国内を移動
「ゼロコロナ政策」が終了した中国では1月22日、4年ぶりに行動制限のない春節を迎えた。2023年は1月21日~27日の7連休となり、中国当局は春節前後の40日間で延べ21億人が国内を移動すると発表している。コロナ禍前の30億人と比較すると7割にとどまるが、前年同期比で倍増する見通しだ。中国の交通運輸省によると、旅客の8割近くが帰省を目的としているそうだが、帰省によって重症化リスクの高い高齢者が多く住む農村部などでの感染拡大が懸念されている。
春節連休には、中国5大名山の一つで湖南省にある衡山(こうざん)や、中国のハワイとも言われる海南島などにも観光客が詰めかけ、賑わいを見せている。観光需要の増加に伴い、中国の大手旅行予約サイトでは海南島で1泊20万元(約380万円)のホテルが出現したとも報じられている。また、上海市の上海ディズニーリゾートや北京市のユニバーサル・北京・リゾートといったテーマパークでは春節イベントが行われており、大勢の人が押し寄せている。中国当局の発表によると、交通機関で移動した人は、1月7日からの累計で延べ6億人を超えたようだ。
春節の人気渡航先はタイ、香港など。2月6日に海外への団体旅行を解禁へ
1月8日からの渡航規制緩和で、春節期間中の北京首都国際空港も賑わいを見せている。行き先の半数はアジア各国・地域が占め、中でも香港やマカオ、タイなどが人気だという。旅行大手の携程集団(トリップドットコムグループ)の発表によると、春節期間中に香港へ向かう航空便の予約数(1月8日時点)は前年同期の31倍、マカオへ向かう航空便の予約数は同2倍だった。また、同社が運営する中国人向けの旅行サイトCtrip(シートリップ)のデータによると、中国本土から東南アジアへの航空券予約数(1月12日時点)は、前年比で864%増加している。東南アジアのデスティネーションの人気トップ5は、タイ、シンガポール、マレーシア、カンボジア、インドネシアだった。
中国政府は、春節が明けた2月6日から海外への団体旅行の販売を解禁すると発表した。対象となるのは、タイ、インドネシア、ロシア、ニュージーランド、フィジーなど20カ国で、中国に対して水際対策を行っている日本、韓国、アメリカなどは含まれていない。中国メディアによると、海外旅行の需要が高まり、今年夏ごろには中国から海外への観光者数が2019年の5割にあたる7500万人以上にまで回復する見通しだという。
春節連休、日本を訪れる中国人観光客は限定的
春節期間中に日本を訪れる中国人観光客は限定的なようだ。中国人が日本の大使館にビザを直接申請することはできず、中国の代理店を通す必要がある。しかし、現在中国の代理店が受け付けているのは、年収1000万円以上の富裕層のみとなっているため、多くの中国人は訪日することができない。さらに日本は、中国本土からの直行便の入国者に陰性証明や陰性証明書の提示を義務付けているため、春節連休中の中国本土からの訪日は伸び悩んでいる。一方、日本と同じく中国人観光客に人気の高いタイは、中国からの入国時にワクチン接種証明や陰性証明を提示する必要がない。
なお、日本総合研究所は1月10日にレポートを発表し、新型コロナウイルス関連の水際対策が大幅に緩和されたことを受けて「インバウンド需要に本格回復の兆し」が見られ、中国人観光客が夏場以降に回復すると想定した場合、2023年の訪日客数は2000万人を超える水準まで回復すると予測した。また、インバウンド消費額は3.1兆円に上るとの見通しを示している。コロナ禍前の2019年の訪日客数は3188万人で、インバウンド消費額は4.8兆円だった。
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