データインバウンド
自治体の災害時のインバウンド対応、事前準備で都道府県と市区町村に大きな差
2020.02.12
刈部 けい子新型コロナウイルスによる肺炎はいまだ収束の兆しは見えず、インバウンド業界に大きな影響を与えている。日本ではここ数年連続して自然災害に伴うインバウンド客への影響が出ており、こうした情報に関しては迅速かつ正確な発信が望まれる。ここでは観光庁が発表した、災害時の情報発信をはじめとする日本の自治体の災害時の取り組みについての調査結果をみていこう。
災害時に外国人が困ること
日本に滞在中の外国人が災害時に困っていることとしては特に次の6つがあげられるという。
・多言語対応の入手方法が不明なこと
・自国からの情報と日本で得られる情報が微妙に異なる等、情報の種類と情報源による混乱が起きる
・避難開始に遅れが生じること
・情報の切迫感があまりよく伝わらないこと
・パニック状態になり、身を守る行動を起こせないこと
・現状がわからないため、そのまま旅行を続ける
上記のような外国人がいることを想定して、非常時における対応策を事前に準備していることが望ましいが、現状はどうなのだろうか。表をご覧いただくとわかるが、都道府県と市区町村で差が大きいことがわかった。
「関係機関、関係団体(国際交流団体やその関連団体や外国語に関するボランティア団体等)と連携した情報収受・提供体制の構築」「関係機関、関係団体と連携した支援体制の構築」「災害情報等の発信」「防災知識の普及・啓発や各種訓練」などで30ポイント以上、都道府県のほうが準備をしている割合が多いのだが、「災害発生時の避難誘導」にいたっては都道府県と市区町村との差が40ポイントも開いた。また、「外国人向けの避難マニュアルの作成」は都道府県で18.9%、市区町村で10.5%とともに低かった。
また、上記の予防計画・事前対策について「何らかの事前準備を規定している」自治体のなかで、情報提供体制の状況を尋ねたところ、都道府県で「6割以上」の多言語対応をしているのは38.2%、市区町村は12.3%にとどまり、「3割以下」が都道府県で42.9%、市区町村で72.0%とまだまだ少ないことがわかった。
基本的には情報の集約と発信は県レベルで行い、現地での直接的な対応は市区町村が担うなどの役割分担をきちんと決める、また、県が持つノウハウや情報をしっかりと市町村に提供して、彼らが災害時に外国語(人)対応ができるようにするなど、大事なことではないだろうか。
起きてからでは遅い、事前準備が重要
そうしたなかで、事前準備で工夫していることとしては、災害等緊急時の人での確保として、通訳ボランティアの活用や地域に外国人支援ボランティアの登録をすすめていることが挙げられる。また事前訓練では、市国際交流会が在日外国人とワークショップを行い、訪日外国人に見立てた訓練に取り組んでいたり、コミュニケーションツールとして各避難所に多言語シートを置くことで訪日外国人ともコミュニケーションを取れるようにしていたり、平常時から観光案内所等へ県作成の外国人向け防災ガイドブック(5カ国語対応)を配布し、啓発活動を行っているなどの回答があった(いずれも市区町村)。
なお、過去のデータインバウンド「台風で旅程変更は7割、インバウンド客が感じた台風情報のわかりにくさは?」でも取り上げたが、情報発信する際の課題として、予備知識(震度の概念、地震時の対応、台風の影響、日本固有の地域名称)のない外国人旅行者は、情報を理解できないということが挙げられている。いわゆる外国人目線での準備が求められるわけだが、そのためには、「正確な情報」を「わかる表現」に言い換えて発信する工夫が必要だ。また、外国人旅行者が知りたい情報について、どこを調べたらいいか分からないという周知の問題では、大使館との連携強化や交通事業者とJNTOとの連絡体制の構築、駅頭や車内、観光施設、宿泊施設等においてNHK WORLD、日本政府観光局の各ツールにアクセス可能なQRコードを掲出するなどの提案がされている。
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