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世界一の規模を誇る中国越境EC市場、アフターコロナに買いたい日本の商品は?

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経済産業省は8月中旬に「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」の取りまとめを発表した。国内EC市場についての報告が主だが、「世界のEC市場の動向と日本・米国・中国3カ国間の越境EC市場規模」と題した項目もある。ここでは、世界の半分のシェアを持つ中国のEC市場、そのなかでも日本との関係が深い越境ECについて詳しく見ていく。

なお、越境ECの定義についてEUでは、「消費者が居住している国以外にある販売者または提供者からの全ての購買」とし、自国内に所在している販売者からの外国製品の購入は含まないとしている。ただ中国ではTmall Global(天猫国際)のように、中国事業者のECモール上に日本企業が出店し、多数の日本製品が販売されている事例もあることから、本調査ではこれも「広義の越境EC」として含めている。
(図・表出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」)

 

世界52.1%のシェア、中国のEC市場

それではまず、世界のEC市場の国、地域別シェアを見ていこう。グラフはトップ10市場を示したもので、中国が52.1%と圧倒的シェアを持ち、次いで米国が19%となっている。日本はイギリスに次ぐ4位に入っているものの、世界シェアは3.0%に過ぎない。

なお、世界の越境EC市場拡大予測については、2019年の時点で7800億米ドルと推計されているが、2026年には4兆8200億米ドルにまで拡大すると予測されている。この7年間の年平均成長率は30%に上る。

市場規模の大幅な拡大の背景として、消費者側では越境EC自体の認知度の上昇、自国にない商品への取得欲求、自国よりも安価に入手可能な商品、 商品やメーカーに対する信頼性等が挙げられる。一方、事業者側からは、越境ECにより、自社の商品を購入する消費者を世界に拡大しようとする積極姿勢がある。また、物流レベルの向上も越境ECを促進する要因の一つになっていると考えられる。

 

中国の総市場規模は4兆7165億円

次に、日本、中国、米国3カ国間の越境EC市場規模をご覧いただきたい。推計は図表の通りだが、中国の越境 BtoC-EC(日本・米国)の総市場規模は4兆7165億円となった。このうち、 日本経由の市場規模は2兆1382億円、米国経由の市場規模は2兆5783億円だった。

 

米国の市場調査会社eMarketer によると、中国の越境EC市場の規模は、2021年は1773億米ドルで、前年比17.4%増と推計されている。越境EC市場は拡大傾向にあり、2023年の同市場の市場規模は2209億米ドルとなると予想されており、前年比8.2%の増加が見込まれている。

なお、新華社通信によると、中国商務部のデータでは、中国の越境EC総合試験区のオンライン総合サービスプラットフォーム登録企業は3万社を超えているという。越境ECが国際貿易の専門性ハードルを大幅に引き下げたことで、「できない、資金が足りない、参入資格がない」状況だった多くの零細業者が、今は新型貿易事業の経営者になっているとのことだ。

 

中国の越境ECの特徴

それでは中国の越境ECの特徴を見ていこう。この報告書では8つの項目を挙げている。

越境ECに利用されるWebサイトの種類
まずは中国での越境ECに利用されるWebサイトのシェアだが、1位の天猫から4位までは中国企業が並び、この4社で86.4%を占め、5位のアマゾンのシェアはわずか4.3%だった。

年齢層
越境ECを最も利用しているのは、25歳~34歳で34%となっている。18歳から54歳の年齢層では17%以上が利用しているが、55歳~64歳の年代層は8%と利用率は低下、65歳以上の年代では1%未満となっている。ただし、65歳以上の年代の場合、越境ECを利用して物品を購入したいときは、自身がWebサイトにアクセスのではなく、家族や友人による代行を通じて商品を購入するケースもあることが、EC事業者へのヒアリングなどで明らかになっている。

利用デバイス
続いて、越境ECを利用する際のデバイスだが、スマートフォンの利用が圧倒的に多く96%だった。複数回答が可能になっているため、ノートパソコン利用者も47%いるが、アクセスの容易なスマートフォンの利用拡大は今度も予想される。越境EC事業者にはスマートフォンでの閲覧を前提としてサイトの構築が求められる。

決済方法
越境ECを利用した際の決済方法については、トップはALIPAY(アリペイ)の43%、続いてクレジットカード42%、中国銀聯37%となっている。ALIPAYは中国最大のECプラットフォーム「タオバオ」の決済手段として普及したが、クレジットカードもよく利用されていることがわかる。

商品の見つけ方
では、利用者はどのように欲しい商品を見つけているのだろうか。調査によると、トップ は「アイテム/ブランドの検索」で64%、続いて「SNSおよびリンク先」47%、「友人/家族のすすめ」45%となっている。

SNSなどの口コミを通じてほしい商品を見つける人が5割近くいるが、EC専門事業者によると、「中国の小売市場ではリアル店舗もEC市場も『偽物』や『品質を過大にアピールする誇大広告』『中古品を新品表示』といったことが多いので、他人の評価を参考にして購入する傾向が強い」とのことだった。

 

日本商品を購入したい理由
越境ECをしてでも日本の商品を購入したい理由はなんだろうか。グラフにあるように、トップは「自国で購入できないから」で77%、続いて「価格が安いから」37%、「品質がよいから」31%、「日本ブランドに安心を感じるから」26%などとなっている。

「自国で購入できないから」が8割近いことから、日本で越境ECを成功させるには、商品のオリジナリティや日本限定等の「プレミアム感」をいかに出せるかが鍵になるのではないだろうか。

コロナ後に購入したい日本の商品
コロナウイルス感染症拡大が収束し、訪日が可能になった場合、越境ECの利用で購入したい日本の商品を尋ねたところ、トップは「おもちゃ、ゲーム、アニメグッズ」で48%、続いて「本・DVD/CD・エンタメ」41%、「家電製品、カメラ、AV機器」32%だった。


インバウンドと越境ECには密接な関係

中国人による爆買が話題になっていた頃、外国人観光客が実際に日本滞在中に購入したり、見たりした商品を、帰国後に購入するという話を聞いたことがある。実際に、日本貿易振興機構 (JETRO)が過去に実施した訪日経験のある中国消費者へのアンケート調査では、「なぜ越境ECを使って日本の商品を購入したか?」という問いに対し、「日本に旅行をしたときに購入して気に入った製品だから」と答えた消費者が、2017年8月調査では40.4%(N= 992)、2018年8月調査では21.6%(N=1059)いたという。また、BEENOSグループの調査では、8割が「訪日後のリピート買いに越境ECを利用したい」と回答している。

パンデミックで外国人観光客はいなくなり、現在は越境ECがインバウンド需要の受け皿になっている状況だ。中国に関しては渡航規制は厳しいままで、日本も徐々に規制を緩和しているとはいえ、まだまだハードルは高いが、日本経済とっては、越境ECと相乗効果のあるインバウンド消費がいち早く回復することが望まれる。

 

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