データインバウンド
2022年の国際観光客数 コロナ前比65%、輸出額は7~8割まで回復との見込み — UNWTO
2022.11.28
やまとごころ編集部UNWTO(国連世界観光機関)が定期的に刊行する「世界観光指標」。最新のレポートによると、国際観光は回復が加速し、2022年末までにはパンデミック前の65%に達する見込みという。2022年1月~9月の世界の動向を総括するとともに、2022年全体の予測数値を見てみる。
この9カ月で回復スピードが加速
2022年1月~9月に海外へ旅行した観光客は推定7億人だった。力強いペントアップ需要(繰り越し需要)、信頼指数の回復、渡航制限の撤廃に後押しされ、前年比の倍以上を記録し、パンデミック前の2019年同期の63%に達した。このまま順調に回復すれば2022年は2019年比65%となり、UNWTOのシナリオ通りの順調な回復を見せることになりそうだ。
注目すべきは回復スピードの速さだ。2022年初の1月時点では、2019年比で64%減という数値だったが、9月には同27%減まで回復。とくにスピードに拍車がかかったのが第3四半期(7月~9月)だ。この3カ月間に9カ月間の総観光客数の約半分にあたる3億4000万人が旅行している。
7月~9月、ヨーロッパへの旅行客数はパンデミック前のほぼ9割
国際観光を引き続き牽引しているのはヨーロッパだ。ヨーロッパの国際観光客到着数はここまで4億7700万人で2019年レベルの81%まで回復している。中でも最も回復が早いのが、西ヨーロッパ(2019年比の88%)と南・地中海ヨーロッパ(同86%)だ。また、北ヨーロッパの回復も好調だ(同81%)。第3四半期に限れば、ヨーロッパ全体で、2019年比ほぼ90%まで回復した。域内需要の力強さとともに数値の押し上げに貢献しているのは、アメリカからの旅行者だ。
中東の勢いも活発で、2022年1月~9月の海外からの旅行者数は、対前年比で3倍を超える。2019年比では77%まで回復。9月に限れば、2019年の到着者数を3%上回る勢いだ。
北中南米は2019年比で66%、アフリカは63%まで回復。アジア太平洋では、日本を含め国境再開をする国々が増えたことを反映し、対前年比で3倍以上の旅行者数を記録したが、2019年比では17%の回復にとどまる。アジア太平洋でカギを握る中国は、ゼロコロナ政策を継続するとともに依然として、厳しい入国規制を続けている。
国際観光収入のデータを報告している国のなかでは、第3四半期にセルビア(2019年同期比76%増)、ルーマニア(同52%増)、トルコ(同15%増)、ラトビア(同14%増)、ポルトガル(同13%増)、パキスタン(同12%増)、メキシコ(同9%増)、モロッコ(同3%増)、フランス(同1%増)と、すべてパンデミック前の水準を上回った。
また、国際観光支出を見ると、フランスは、2022年1月~9月の間で2019年比の8%減とパンデミック前のレベルに迫る。その他、観光支出の数値から回復の好調さを示すのは、ドイツ、ベルギー、イタリア、アメリカ、カタール、インド、サウジアラビアだ。
フライト状況、ホテル稼働率も改善
観光業の回復ぶりは、UNWTOが発表しているホテルやフライト状況などを示したデータ「UNWTO Tourism Recovery Tracker(ツーリズム・リカバリー・トラッカー)」にも表れている。2022年1月~8月の国際線の座席数は、世界全体で2019年比の62%だった。最も回復しているヨーロッパは78%、南北アメリカは76%。国内線については、2019年比の86%。中東は99%という数値で、パンデミック前の水準を取り戻したと言える。
また、ホテルの稼働率も上がっている。世界最大の宿泊施設データサービスを提供するSTRによれば、2022年1月に世界全体で43%だった稼働率は、9月には66%に上昇。地域別ではここでもヨーロッパの回復が最も好調で、9月には77%を記録している。そのあとに続く、南北アメリカ(66%)、中東(63%)、アフリカ(61%)が6割を超えている。
専門家は今後数カ月を慎重に楽観視
ロシアによるウクライナ侵攻や、高いインフレ率、エネルギー価格の高騰という厳しい経済環境が続く中、UNWTOの観光専門家委員会では、2022年9月~12月の信頼指数を最新調査で低く示すなど、2022年第4四半期から2023年にかけ、回復ペースは鈍化の可能性も指摘されている。
一方で、国際観光輸出額は、2022年には1.2~1.3兆ドルに達する見込みで、これは、2019年に記録された1.8兆ドルの70~80%を占めることになりそうだ。
また、国際観光客到着数は2019年の65%まで回復、9億人を超えて2022年をしめくくると見られている。
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