データインバウンド
2024年夏の欧州インバウンド人気高く、アジア太平洋地域からの観光需要が大幅回復
2024.07.18
やまとごころ編集部航空・旅行業界のデータ分析のスペシャリスト、ForwardKeysのレポートによると、2024年の夏の世界の旅行需要は2023年7~8月期と比べると、平均で11%増加している。特に、アジア・太平洋地域は同17%増、欧州は同12%増と平均を上回る成長を示した。今回は欧州にフォーカスしたレポートから、この夏の興味深いトレンドを紹介する。
▶世界の到着者数の変化(6/9発券時との比較、上:2023年比、下:2023年7〜8月比)
長距離市場からのインバウンドが急増
欧州のインバウンド観光はこの夏、これまでの記録を上回ると予測されているが、 この成長は、主に域内旅行(2023年7〜8月比10%増)と、アジア太平洋(同11%増)およびアメリカ(同21%増)の長距離市場からの旅行者の大幅な増加によるものだ。
フライト検索やチケット予約の増加を見ると、世界経済には課題が多くあるにもかかわらず、ヨーロッパの目的地への関心が強いのがわかる。これはサッカーの欧州選手権(ユーロ2024)やパリ五輪など、夏季に開催される主要なイベントが一因となっている。ただし、エコノミークラスの座席の成長が2023年と比べて11%増と大きいのに対し、プレミアムクラスのチケットは2023年の水準(1%増)のままであることから、ここには景気の不透明感が反映されているのかもしれない。
なお、中央・東ヨーロッパは、ウクライナ戦争の影響で回復が遅れていたが、現在はインバウンド観光で最も急速な成長を遂げており、今年の夏のこの地域は、昨年と比べて観光客数が23%増加する見込みだ。また、北欧も、南欧の目的地(10%増)を上回る12%の成長率を記録している。
都市観光地の躍進が観光復興を牽引
特徴的なのは、夏といえばビーチという従来型のホリデーではなく、都市観光地が欧州の観光復興を牽引していることだ。ミュンヘン(2023年7〜8月比37%増)のような都市は、ユーロ2024の開催地としての恩恵を受け、大幅な伸びを示した。 ウィーン(23%増)、チューリッヒ(23%増)、エジンバラ(19%増)、バルセロナ(19%増)など、都市の観光地がヨーロッパ大陸全体で大幅な伸びを示している。
▶欧州への国際線到着者数伸び率トップ10都市(2023年7〜8月比、6/9発券時)
なお、域内旅行の滞在日数に関しては、中長期の滞在(4泊~2週間未満)が最大シェア(63%)を引き続き占める一方、1泊から3泊の短期旅行が2023年と比べて23%増と最も高い伸びを示し、全滞在の16%を占める。 2週間を超える長期旅行は、5%増とより緩やかな成長だった。
中国と日本が牽引し、アジア太平洋地域が再活性化
アジア太平洋地域は回復の兆しを見せ始めており、夏休み期間の中国(64%増)と日本(53%増)からの到着数が2023年同期比で著しく増加した。 全体のボリュームはまだパンデミック前の水準に達していないものの、航空路線の改善によりこれらの国々からの旅行者数が急増しているのだ。
特に中国は、パンデミック前に比べて座席数のシェアを大幅に拡大している(12%増)。これは、米中間の航空路線が限られているため、中国の航空会社がワイドボディ機を代わりに欧州路線に投入していることが一因だ。
▶中国発欧州行き国際線シェア(2019年7〜8月比、6/9発券時)
上から直行便、乗り継ぎ1回、乗り継ぎ2回以上
この夏、アジア太平洋市場では欧州の複数都市を周遊する旅行も需要が高まっている。 注目される都市の組み合わせは、ブダペスト―ウィーン(118%増)、ミラノ―ミュンヘン(106%増)、プラハ―アムステルダム(71%増)、イスタンブール―アテネ(63%増)などで、文化、歴史、ショッピングを楽しみたいアジア人旅行者に人気がある。
イベント開催で旅行需要アップ
パンデミック後に顕著になったことだが、イベントの開催は観光需要を押し上げる上で重要な役割を果たしている。 ユーロ2024の開催国であるドイツへの到着者数は、2023年の同時期と比較して19%増加した。 まもなくパリで開幕するオリンピック期間中の旅行需要も昨年を上回っており、中国(124%増)、日本(57%増)、ドイツ(32%増)、アメリカ(25%増)などからの観光客が上位を占めている。
また、テイラー・スウィフトのErasツアーの目的地となった都市を見ると、ストックホルム(前年同期比136%増)、ワルシャワ(同203%増)、ロンドン(同45%増)など、コンサート開催日前後の到着者数が夏の期間全体と比較して大幅に増加していることがわかる。 特定のイベント開催日と密接に結びついたこのような変化は、経済低迷の中でも「一生に一度の体験」に対する需要が依然として高いことを示している。 スタジアム、コンサートホール、フェスティバル会場など、インフラが整備された観光地は、大きな恩恵を受けることができるだろう。
オーバーツーリズム対策は必須
このように、今夏の欧州観光の見通しは極めて明るい。 地域内旅行やアメリカ、アジア太平洋地域などの主要市場が牽引し、記録的な成長が見込まれる。 中欧・東欧の急速な活性化、都市部のデスティネーションの優位性、アジア太平洋地域からの旅行の復活、大型イベントの影響など、すべてがこの楽観的な見通しを後押ししている。
ただし、一部のヨーロッパの人気観光地では、オーバーツーリズムに対する抗議デモが盛んに行われており、観光客の流れを持続的に管理し、観光客と地元の人々の利益のバランスをとるための対策が必須だ。そのためには、正確で信頼できる旅行情報の重要性がますます高まるといえるだろう。
(図版出典:ForwardKeys)
▼2023年も観光大国の多い欧州は人気でした
2023年の国際観光、訪問者数トップ フランスで1億人、観光収入27兆円のアメリカ。観光支出は中国ーUN Tourism
最新のデータインバウンド
【訪日外国人数】2024年10月訪日客数331万2000人 単月最高を記録、累計は過去最速で3000万人を突破 (2024.11.21)
2025年 世界の旅行トレンド「オールインクルーシブ」「グルメ重視の宿」「ロケ地巡り」など8つに注目 ーエクスペディア (2024.11.19)
2025年世界の旅行予測、伝統的な旅の価値観を壊し、自己成長を促す9つのトレンドとは? ーブッキングドットコム調査 (2024.11.15)
進化する世界の旅行者ニーズ、アドベンチャーからスロートラベルまで2025年の注目トレンド ーヒルトン調査 (2024.11.14)
持続可能な都市を評価するGDSインデックスのトップ40 2024年版が発表、伸び率の高さで熊本評価 (2024.11.11)
世界の旅行者が注目するサステナブルな旅、その意識と行動のギャップとは?ートリップドットコム調査 (2024.11.07)
米大手メディア ナショナルジオグラフィック「2025 年に行くべき世界の旅行先25選」に金沢を選出、その理由は? (2024.11.05)
【宿泊統計】2024年8月外国人延べ宿泊者数2019年比39.5%増の1324万人泊。石川県で159.4%増を記録 (2024.11.01)
世界一の美食の街・東京の星付き店 世界トップの170軒、ミシュランガイド東京2025発表。デザートレストランも新掲載 (2024.10.30)