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世界のトップ100都市デスティネーション・インデックス2024発表、1位はパリ。3位にランクインした東京の評価ポイントは?

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イギリスに本社を構える国際市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルが、2024年の世界のトップ100都市デスティネーション・インデックス(Top 100 City Destinations Index 2024)を発表した。世界の100都市を、観光に関する6つの主要分野(経済・ビジネスの実績、観光実績、観光政策と魅力度、観光インフラ、衛生・安全、持続可能性)にまたがる55の指標を用いて比較し、観光都市としての魅力を総合評価したものだ。

2024年版では、東京が前年の4位から3位にランクアップし、初のトップ3入りを果たした。1位はパリが4年連続で選ばれ、2位にはマドリードが続いた。
(図版出典:2024年の世界のトップ100都市デスティネーション・インデックス)

 

東京が初のトップ3入り、欧州都市が上位を占める

総合評価1位の観光都市にはパリが選ばれた。夏季オリンピックをはじめとするスポーツイベントが年間を通じて開催されたことが大きな要因となった。5年前に焼失したノートルダム大聖堂が12月8日に再公開されたばかりで、ますます注目を集めそうだ。パリは2021年からの4年連続で、世界で最も魅力的な観光都市の座を維持している。

2位のマドリード(マドリッド)は、持続可能な観光戦略と責任ある観光の推進が評価された。環境戦略「Madrid 360」は、汚染物質の排出削減を目的に、気候変動対策と経済発展の両立を目指して策定されたものだ。具体的な取り組みとして、2020年から無料の電動バス「Línea Cero」を運行し、環境負荷の軽減と市内交通の利便性向上を実現している。また、2025年までに市全体を「低排出ゾーン」に指定し、大気汚染物質を多く排出する車両の進入を段階的に制限する計画も進められている。

3位にランクインした東京は、円安の長期化により、手ごろな価格と優れたインフラを兼ね備えたMICEイベントの開催地として人気を集めている。観光庁が積極的にMICE誘致を進めており、海外出張の機会を活用して観光を延泊する「ブレジャー」も増加した。さらに、レジャー目的の旅行も活況を呈し、2024年には推計約1300万人のインバウンド客が東京を訪れ、コロナ禍前を大きく上回る訪問者数を記録する見込みだ。

4位にはローマ、5位にはミラノがランクインし、イタリアの都市が続けて上位に名を連ねた。

上の表は上位20都市のリストだが、トップ10の中で6都市が欧州から選出され、トップ20には9都市がランクイン。観光インフラの充実が評価されるヨーロッパが他地域をリードしている。続いて、アジアからは6都市、北米から2都市、中東から1都市、そしてオーストラリアから2都市が選出された。前年はトップ20のうち12都市がヨーロッパだったことを考えると、他地域の存在感が徐々に高まっていることがわかる。

日本の他の都市は、京都が27位、福岡が64位、札幌が65位だった。

 

2024年海外旅行者数の半数は欧州へ、都市別ではビザ緩和でバンコクが最多

2024年は高い観光需要の後押しで、 世界全体の海外旅行者数は前年比で19%増で推移、特にヨーロッパは引き続き最も人気の高い地域であり、欧州を目的地とする旅行者数は全体の約半分にあたる7億9300万人に上る見込みだ。

海外旅行者数の目的都市別ランキングでは、バンコクが3240万人でトップだった。同都市は2023年にコロナ禍前のインバウンド客数を上回り、2024年には前年比30%以上の成長を達成した。この成長を支えた大きな要因として、タイ政府によるビザ関連政策の強化が挙げられる。2024年7月からは、93カ国の観光客に対する60日間のビザ免除が導入され、到着時に申請可能な「ビザ・オン・アライバル」の対象国も19カ国から31カ国へと拡大された。

なお、東京は12位だった。

海外外旅行者一人当たりの平均支出額は、2030年までに1264米ドル(約19万1000円)に達する見込みだ。また、2024年から2030年の間に、オランダ、中国、ポーランドといった国々では、インバウンド旅行1回あたりの平均支出額が最も高い成長を示すと予測され、さらに、ニューヨーク、ロサンゼルス、東京は、2040年までに旅行関連の消費支出が最も高くなる都市として注目されている。

 

持続可能性と独自の文化体験が新しい価値基準に

本調査レポートを執筆したユーロモニター・インターナショナルのロイヤリティ調査部門長、ナデジャ・ポポバ氏は、2024年の観光市場について次のように述べている。
「2024年、世界の各都市は観光収入を増やすために、スポーツや文化イベントを積極的に開催した。インフラ整備や継続的なマーケティングを通じて旅行者の関心を集めたことで、新たな成長機会が生まれた。一方で、労働力不足や地政学的な緊張、景気の低迷といった課題が依然として存在している」

さらに、近年高まるオーバーツーリズムへの懸念についても触れ、「これに対処するため、観光地では観光税や入場料の引き上げ、年間を通じた観光促進、持続可能な行動を促進する取り組みが進められている。また、生成AI技術の活用も加速している」と述べた。

旅行者の間では、隠れた名所やオフシーズンの体験、スローツーリズムへの関心が高まっている。スローツーリズムとは、地域に根付いた生活文化や自然の中でゆったりと過ごし、その地域ならではの食文化や体験を楽しむ旅のスタイルを指す。こうした需要の高まりにより、小規模な地方都市やあまり知られていない目的地の人気が今後ますます高まると見込まれている。

ポポバ氏は「旅行者は、文化的に豊かな、パーソナライズされた体験を優先するようになり、それが新たな旅行の価値基準となるだろう」と今後の市場動向を予測している。

 

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