データインバウンド
世界5カ国の旅行者の傾向を調査、ライフステージによって大きく異なるニーズとは?ートリップアドバイザー
2025.01.09
やまとごころ編集部世界最大の旅行プラットフォーム、トリップアドバイザーは、旅行者の行動や価値観がライフステージごとにどのように変化するかをまとめたレポート「Travel Through Life(人生を通した旅)」を発表した。本レポートでは、人生の8つのステージ「大学生」「新婚・婚約中」「子どもが生まれたばかりの親」「子育て経験豊富な親」「キャリア形成中」「キャリア形成後」「子どもが自立した親」「引退後」における旅行者の特徴や傾向を分析し、それぞれのステージに合った効果的なアプローチを提案している。
調査は2024年第2四半期に、今後12カ月以内に旅行を計画しているオーストラリア、ドイツ、日本、アメリカ、イギリスの旅行者(18歳から75歳の6700人)を対象に行われた。
(図版出典:Tripadvisor, Travel Through Life)
大学生:費用を抑えつつ思い出づくり。情報収集はレビューとSNSで
大学生は限られた予算の中で最大限の価値を追求し、記憶に残る体験を楽しむことを重視する世代だ
全体の84%が年間1〜5回の旅行を計画する一方で、72%が「費用」を最大の課題と感じている。特にレジャー旅行(72%)、宿泊費(64%)、交通費(55%)が主な障壁として挙げられる。これらの割合は平均を上回っており、大学生が費用面での負担をより強く感じていることがわかる。
▼大学生にとって費用が障壁となる分野(黄=大学生、緑=平均)
左から、レジャー旅行、宿泊、交通、体験
そのため、多くの大学生は親や外部からのサポートを受けており、58%が旅費の一部を彼らに頼っている。限られた資金でできるだけ多くの体験をすることを望んでおり、「思い出に残る体験(61%)」「リラックス(61%)」「日常から離れる(58%)」ことが旅行の主な目的となっている。
旅行前にはオンラインで積極的に情報を収集し、レビューやSNSの投稿を重視している。大学生旅行者の93%がSNS上の旅行コンテンツに反応し、82%がレビューを投稿している。
この世代に効果的にアプローチするためには、インターネットを活用して旅行の魅力を発信することが不可欠だ。
新婚・婚約中:節目を彩る贅沢な旅行。半数以上がSNSで計画・共有
新婚・婚約中のカップルにとって、結婚式やハネムーンの旅行は人生の大切な節目を祝う特別な機会だ。50%が過去5年間と比べて旅行を優先しており、これは平均の35%を大きく上回る。また、約3分の2が1年以内に海外旅行を計画し、約半数がユニークで一生に一度の体験を求めている。旅行先を選ぶ際に最も重視するのは「場所」であり、日常を離れて二人だけの特別な思い出を作ることを目的としている。
この層は豪華で特別な体験に価値を置き、費用を惜しまずに、「アップグレード」を追求する傾向がある。たとえば、ビジネスクラスの航空券やホテルの客室マッサージといったラグジュアリーな選択肢を選び、買い物やイベント、アクティビティへの支出も他の層より高い。
▼新婚・婚約中のカップルが贅沢をしたい旅行分野(紫=新婚・婚約中のカップル、緑=平均)
上から、宿泊施設、目的地までの交通、現地での交通、買い物、イベント、アクティビティ
さらに、旅行準備段階から購買意欲が高い点も特徴的だ。94%が新しい服を購入し、88%がアクセサリーを買う予定があるほか、電子機器やエンターテインメント商品、ヘアケア用品、スーツケースなども購入対象になっている。
SNSを積極的に活用する彼らは、平均を大きく上回る107%の割合で旅行関連コンテンツに「コメント」「いいね」「シェア」といった反応を示し、53%が旅行計画中にSNSを多用している。また、52%が自分の旅行を投稿するなど、「見せる」旅行へのこだわりが強い。
新婚・婚約中のカップルは、旅行を通じて人生の節目を彩り、かけがえのない思い出を作ることを重視している。贅沢な選択肢を求める彼らに対しては、計画段階からSNSを活用した効果的なアプローチが鍵となる。
子どもが生まれたばかりの親:安全第一の家族旅行、SNSでの共感がポイント
子どもが生まれたばかりの親は、他のライフステージと比べて旅行頻度が低いものの、81%が子どもとの旅行を計画している。この層にとって安全性は非常に重要であり、40%が旅行中の危険に対する懸念が以前より増したと感じている。歩きやすい道や24時間体制の警備といった目的地の安心感に加え、持ち運び可能な子ども用ドアロックのような便利な製品の情報が求められている。
最も人気のある旅行先はビーチで、海水浴や砂遊び、貝殻拾いなど、子どもが楽しめるアクティビティが充実している点が評価される。そのほか「買い物(49%)」「動物園や水族館(46%)」「遊園地(45%)」「自然のアトラクション(45%)」といったアクティビティも人気だ。宿泊施設を選ぶ際には「家族連れに優しい」ことが最重要基準となり、30%は託児施設を備えた目的地を選んでいる。
この層が特に重視するのは、便利さや手軽さ、シンプルさだ。旅行準備で最大の課題となるのは「ベビー用品の荷造りと運搬(52%)」であり、旅行中の「睡眠の管理(53%)」や「赤ちゃんの移動(52%)」も負担となっている。加えて子どもの機嫌を取り続ける必要性などが親たちに大きなストレスを与えている。そのため、無料の受託手荷物やシャトルバス、柔軟なプラン変更が可能な早期予約サービスといった利便性の高いオプションが求められる。
親たちのストレスを軽減するには、「自分たちは一人ではない」という安心感が欠かせない。この点で、SNSは情報収集だけでなく、同じような状況にいる他の親たちとの共感や交流を深める場としても機能する。66%の親がSNSの旅行コンテンツに高い関心を示し、50%が旅行計画時にSNSを活用、36%が旅行レビューを参考にしている。
このライフステージの親に対しては、安全性を強調した情報発信や便利なサービスの提供に加え、SNSを活用してつながりを構築することが、旅行中の不安やストレスを軽減するうえで効果的だ。
子育て経験豊富な親:家族全員が楽しめる旅と親自身へのご褒美を追求
子育てに慣れた親たちは、他のライフステージに比べて旅行頻度が安定しており、子連れ旅行にも慣れている一方で、家族全員が楽しめるアクティビティを見つけるのに苦労している。特に子どもの年齢に合ったアクティビティを見つけることが重要で、44%がこれを最大の課題と感じている。43%の親が子どもの好みやニーズを基に旅行を計画しており、ターゲットを絞ったサービスや細分化された広告が家族に適したアクティビティを見つける手助けとなる。
彼らは家族全員の満足を追求しつつ、親自身へのご褒美となる体験を求めている。96%が旅行中に贅沢を楽しみ、61%がリラックスを目的としている。快適な移動を求めて航空券をアップグレードするほか、高級レストランやプライベートツアーといった特別な体験に積極的に支出する傾向がある。
この層は他の家族とつながり、旅行のアドバイスを得られる場を求めている。旅行計画時には55%がレビューを参考にし、59%がSNSを利用して情報収集を行っている。家族向けコンテンツを提供するクリエイターやインフルエンサーを活用し、親たちがヒントや体験を共有できる場を作ることが重要だ。
また、コミュニティや環境に対する意識も高く、ボランティア活動や持続可能な観光への関心が高い。地元企業や職人との連携、電気自動車や公共交通機関を活用したエコな移動手段の提供などが期待されている。
子育て経験豊富な親には、家族全員が楽しめる柔軟で多様な選択肢を提供しつつ、親自身のリフレッシュや贅沢な体験をサポートすることが効果的だ。また、コミュニティ意識やサステナビリティを重視した旅行プランを提案することで、彼らの旅行ニーズに応えることができる。
キャリア形成中:出張ついでに休暇を満喫、ビーチやリゾートでリフレッシュ
キャリア形成中の人々は、94%が過去1年で3回以上の出張経験があり、約半数が今後1年以内に仕事での出張を予定している。この層はワークライフバランスを重視し、75%が有給休暇を利用して出張を個人旅行に延長する計画を持っている。主な目的はリラクゼーションで、65%がビーチやリゾート地を好む。
一方で、この層は「有給休暇の活用の難しさ(30%)」「収入減少の懸念(21%)」「仕事から完全に離れられないこと(21%)」といった課題を抱えている。このため、スパやオールインクルーシブリゾートでの滞在を通じてリフレッシュを図る傾向が強い。特に、終日利用可能なプラン、プールサイドの宿泊施設、専用ディナー予約といったサービスに魅力を感じる。さらに、無料Wi-Fiやビジネス特典が充実したロイヤルティプログラムを活用し、ポイントやステータスを貯めることにも関心が高い。
53%がプレミアムエコノミーやビジネスクラス、ファーストクラスを利用し、宿泊施設では低価格帯より中価格帯を好む傾向がある。また、他の層に比べて食事への支出が最も高いのも特徴だ。彼らが休暇を最大限に活用できる選択肢を提供することは、現在の購買力を引き出すだけでなく、将来的な収入増加に伴うさらなる見返りを期待できる。
キャリア形成中の旅行者は、SNSを旅行計画に積極的に活用しており、66%が旅行関連コンテンツに高い関心を示している。旅行計画時にSNSを利用する割合は47%、旅行予約時でも36%にのぼる。旅行のアイデアや体験談の共有、特別なオファーを通じて、この層へのアプローチが可能だ。
▼旅行におけるSNSの利用率(紫=キャリア形成中、緑=平均)
上から、SNSで旅行関連コンテンツに高いまたは中程度の関心を示している、旅行計画時にSNSを利用、旅行予約時にSNSを利用
キャリア形成後:贅沢と癒しを求めるリラクゼーションの旅
キャリア形成後の人々は、仕事で成功を収め、高い収入と地位を得ている。7割が高所得層に属し、68%が旅行の主な目的としてリラクゼーションを挙げている。日々の忙しさから解放され、贅沢な休息を楽しむためのサービスを提供することで、大きなビジネスチャンスが期待できる。
この層は、責任から解放されると同時に視野を広げる機会を求めており、日常から離れてのんびりと過ごすリトリート、ヨガやウェルネスプログラムといった心身を癒すアクティビティ、文化的な体験を好む。75%が柔軟な思考を持ち、71%が世界を探索することを楽しむ。また、旅行先としては、ビーチリゾートが高い人気を誇るが、日本では、ビーチより文化遺産訪問の方が好まれる傾向にある。
▼国別のキャリア形成後の人々が好む旅行先(黄=ビーチ、緑=文化遺産)
上から、イギリス、オーストラリア、ドイツ、アメリカ、日本
また、90%が旅行で贅沢を楽しむ意向を示しており、70%が食事への支出を優先している。彼らの食へのこだわりは強く、人気レストランの優先予約や特別メニュー、料理教室、ワインテイスティングなど、体験型の食事に価値を見出している。
宿泊施設についても中価格帯以上を好む傾向が強く、85%が中級以上の宿泊施設を選び、81%がホテルを利用している。宿泊地を選ぶ際には、立地(57%)が最も重視され、次いでコストパフォーマンス(49%)、価格(44%)が続く。さらに、45%がプレミアム製品を選ぶ傾向があり、49%が世界トップクラスの購買力を持つ。
この層に効果的にアプローチするには、贅沢志向のサービスや体験を提供するとともに、リラクゼーションや文化的な深掘りを可能にするプランを提案することが重要だ。
子どもが自立した親:自由な時間を楽しむ旅行、インターネット検索とレビューを活用
子どもが自立した親は、子育てが終わり、自分の興味や好きなことに自由に時間を使えるようになる。学校行事や家族のスケジュールに縛られないため、旅行の日程も自由に決められ、すべてのライフステージのなかで最も旅行への障壁が少ない。34%が以前より旅行の頻度を増やし、73%が配偶者やパートナーとの旅行を計画している。また、54%が旅行計画に柔軟性を持つようになり、33%が気ままな突発的旅行を楽しむようになっている。
彼らには、費用を抑えながら混雑を避けられるオフシーズン旅行が特に魅力的だ。旅行中のアクティビティ選びでは「個人的な関心」を重視し、オールインクルーシブツアーやラグジュアリーパッケージのような快適でストレスの少ない旅行を好む。90%がゆったりとしたレジャーを求め、63%が旅行を非必需品の支出の中でも優先順位が高いと考えている。また、56%が国内旅行を選ぶ傾向にあり、無料駐車場や朝食付きプランなど利便性の高い宿泊設備や立地を重視する。
SNSの利用が少なく、インターネット検索やオンラインレビューを情報収集や予約の手段として活用しているのも特徴だ。特にオンラインレビューの利用率は他の層より96%も高い。
この層に効果的にアプローチするには、贅沢で快適な旅行体験を提案するとともに、オンラインでの情報提供を充実させることが重要だ。
引退後:自分のペースで楽しむ旅行、快適さと便利さを重視
引退後の人々は、自分のペースでゆったりと楽しめる旅を求めている。好きなタイミングで旅行ができる一方で、45%が健康問題を旅行の障害と感じており、移動や体調の制約を抱えるケースも多い。そのため、53%が国内旅行を選び、51%が車での移動を好む傾向にある。ホテルやレストランではアクセシビリティへの配慮が求められ、アクティビティでは文化的な名所(50%)や自然の観光地(57%)が特に人気だ。
この層の21%は「バケットリスト旅行」を求めている。バケットリスト旅行とは、一生のうちにぜひ訪れたい場所や体験したいことを目指す旅行のことで、特別な思い出や人生の目標を達成する旅として注目されている。
旅行計画では柔軟性や自由度の高さが重視され、自然の中でのんびりと過ごすネイチャートレイルなどが好まれる。贅沢はあまりしないが、快適さや便利さに価値を置く傾向があり、50%は今後1年以内に1万ドル(約150万円)を旅行に費やす予定だ。
この層は計画を早めに立てることを好むが、SNSの利用率が低く(77%が利用していない)、レビュー、写真、フォーラム、オンラインガイドなど、SNS以外の情報源を通じたアプローチが重要となる。自分のペースで楽しめる体験を提案することが、この層への魅力的な訴求につながる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまで見てきたように、トリップアドバイザーの調査結果から、ライフステージごとの旅行傾向には、それぞれ異なる特徴が見られることが明らかになった。旅行業界は、それぞれのライフステージに合わせたきめ細やかなサービスを提供することで、顧客満足度の向上と新たなビジネスチャンスの創出につなげることができるだろう。
最新のデータインバウンド
消費額が倍増する中国の家族旅行市場、教育的価値のある体験がカギに (2025.01.08)
アジア地域の2025年旅行トレンド、家族旅行、新しい目的地、デジタルノマド志向も高まるーAgoda調査 (2025.01.06)
【宿泊統計】2024年10月外国人延べ宿泊者数1582万人泊、石川で2019年同月比180%増。愛媛と群馬も大きく伸びる (2024.12.27)
2024年世界で最も利用者の多い航空路線ランキング 国際線1位は香港ー台北、国内線は日本が3路線ランクイン (2024.12.26)
アジア太平洋の航空旅行、日本発着路線が旺盛。2025年は韓国ーベトナム、インドーUAEが急成長 (2024.12.23)
【訪日外国人数】2024年11月訪日客数318万7000人、累計数3337万人で年間過去最高を更新 (2024.12.19)
2024年アジア太平洋地域の消費トレンド、クレカ支出の3割超が旅行費用に。ミレニアル世代の支出旺盛 (2024.12.17)
世界のトップ100都市デスティネーション・インデックス2024発表、1位はパリ。3位にランクインした東京の評価ポイントは? (2024.12.12)
2024年1-9月の国際観光客数11億人突破、観光収入も大幅増。欧州などで2ケタ成長ーUN Tourism (2024.12.09)