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2024年の外国人宿泊、4割増の1.6億人泊。石川・愛媛で2倍超、地方急伸の理由は?

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観光庁はこのほど、2024年の宿泊旅行統計調査の年間確定値を公表した。確定値は、同年2月28日に公表された2024年の速報値に、その後回収した情報を加えた再集計結果となる。

それによると、日本人と外国人をあわせた延べ宿泊者数は6億5906万人泊となり、2023年の6億1750万人から6.7%増、2019年比で10.6%増となった。

 

外国人宿泊1.6億泊で、前年比4割増。全体の4分の1占める

2024年延べ宿泊者数の内訳では、日本人延べ宿泊者数は4億9460万人泊で、前年比1.0%減と微減したものの、2019年比では3.0%増となった。

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また、外国人延べ宿泊者数は1億6447万人泊に達し、コロナ後完全回復となった2023年から39.7%の大幅な増加を見せた。

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外国人延べ宿泊者数を2019年比でみると42.2%増と、回復が著しい。

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なお、2024年の外国人宿泊者の全体に占める割合は25.0%に上昇しており、インバウンド需要の拡大が明らかとなった。

 

地方のインバウンド回復都市圏上回る、前年比51.4%増の急伸

2024年の延べ宿泊者数(全体)の上位5都道府県は、東京都、大阪府、北海道、京都府、沖縄県の順だったのに対して、外国人延べ宿泊者数の上位5都道府県は、東京都、大阪府、京都府、北海道、福岡県の順だった。

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外国人延べ宿泊者数については、三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県)と地方部で異なる回復傾向が見られた。外国人延べ宿泊者数1億6447万人のうち7割が三大都市圏、地方は3割にとどまったが、伸び率では地方が上回った。三大都市圏では前年比35.0%増であった一方、地方部では前年比51.4%増と、前年では遅れていた地方での回復がより顕著になった。

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石川・愛媛で外国人宿泊者が2倍超、その理由は?

また、外国人延べ宿泊者数の伸び率でみると、2019年比・前年比で共にトップ2に入った石川県、愛媛県はそれぞれ倍以上の増加となった点に注目したい。

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石川県:新幹線延伸と復興応援割が奏功、欧州・台湾からの誘客も拡大

石川県は日本人を含めた延べ宿泊者数全体でも前年比31.7%(2019年比24.9%)と1位の伸びを記録したが、その理由の一つとしては、2024年1月に発生した能登半島地震の影響により、被災地周辺から金沢市以南への「二次避難者」が長期滞在したことが挙げられる。

また、インバウンドを含めた観光客に関して言えば、北陸新幹線の延伸により、東京・関西圏とのアクセスが改善され、北陸を経由する新たな観光ルートが形成されたことが訪問者増の一因となっている。加えて、観光庁などが主導する「北陸応援割」などの宿泊補助制度により、全国からの旅行者を呼び込む効果も大きかった。こうした外的要因と交通インフラ・政策面の両輪が、石川県の宿泊需要を力強く押し上げたといえる。国籍別の割合では、欧州が21%、台湾18%、アメリカ11%、中国9%、オーストラリア6%となっている。

愛媛県:フォトジェニック観光とSNS活用で韓国・台湾市場を開拓

愛媛県は日本人と外国人を含む全体の宿泊者数は前年比、2019年比でもわずかにマイナスとなったが、インバウンドが大きく伸びた背景にはしまなみ海道を中心とした「サイクリング×フォトジェニック」な観光資源の強化がある。特に台湾・韓国などアジア圏の旅行者から人気を集めており、地元自治体や観光団体がSNSを活用したプロモーションを積極的に展開してきた成果が表れている。

また、伝統文化や古民家再生を通じた持続可能な観光づくりが国際的にも注目され、欧米豪からの個人旅行者に対する訴求力も高まった。さらに、地域の青年会議所などが訪日外国人の実態調査を行い、多言語対応や滞在ニーズへの対応を進めたことで、リピーターや地域ファンの形成にもつながった。

これらの取り組みが複合的に奏功し、愛媛県の宿泊者数を大きく伸ばす結果となった。国籍別の割合では、香川、徳島など四国の他県のトップが台湾であるのに対し、愛媛県では、韓国の占める割合が38%と非常に高く、以降、台湾30%、アメリカ11%、中国7%、香港5%、欧州4%となっている。

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中国が最多でも2019年比では未回復、韓国・台湾が安定成長

国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数では、中国が1位で2519万人泊(シェア18.2%)を占めた。2019年比では15.6%減である一方で、前年比では130.9%増と大幅な回復を示した。2位は台湾(1841万人泊、シェア13.3%)で、2019年比36.6%増、前年比39.1%増だった。3位は韓国(1800万人泊、シェア13.0%)で、2019年比85.2%増、前年比26.2%増。4位はアメリカ(1449万人泊、シェア10.5%)、5位は香港(779万人泊、シェア5.6%)が続いている。これら上位5カ国・地域で全体の約60.5%を占める。

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<編集部コメント>

地方回復が鮮明に、次の戦略に活かしたい“伸びた地域”の工夫

今回の調査結果から、インバウンドを筆頭に日本の宿泊需要はコロナ禍前を大きく上回っていることが、明らかとなった。外国人宿泊者数が2019年比42.2%増の過去最高を記録し、全体の25%を占める水準に達した。中でも地方部の増加は、今後の地域観光戦略を考えるうえで注視すべき傾向である。石川・愛媛のように、交通インフラ整備やプロモーションの工夫、訪日客のニーズに寄り添った環境整備が成果を生む事例が現れている。

国籍、地域別の宿泊データを起点に、主要市場ごとの旅行目的や人気エリアを明らかにし、自地域の「強み」と結びつくニーズを見直す機会としたい。

(出典:観光庁 宿泊旅行統計調査 2024年・年間値 [確定値]

 

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