データインバウンド
東京が3位、大阪・京都もトップ20入り。日本の都市が存在感 ー2025年 世界観光都市ランキング
2025.12.19
やまとごころ編集部英国ロンドンに本拠を置く市場調査会社ユーロモニターインターナショナルは、世界の観光都市ランキングとも言える、2025年版「世界のトップ100都市デスティネーション・インデックス/Top 100 City Destinations Index」を発表した。本調査は、世界の主要都市を対象に、経済・観光実績、観光政策、観光インフラ、衛生・安全、持続可能性など55の指標を用いて総合的に評価するものであり、世界の都市観光の現在地と将来性を示す指標として国際的に注目されている。
パリが5年連続首位、東京は世界3位を維持。日本勢3都市トップ20に
2025年版ランキングで首位に立ったのはフランスのパリ。これで5年連続の世界1位となり、文化・歴史資産の厚み、都市としてのブランド力、交通や宿泊を含む観光インフラの完成度の高さが引き続き高く評価された。成熟した観光都市でありながら、常に新たな体験価値を提供し続けている点が強みだといえる。
2位にはスペインのマドリード(マドリッド)がランクインした。都市の持続可能性や観光政策の先進性、都市活力の高さが評価されており、欧州都市の存在感を改めて示す結果となった。
3位には日本の東京が入り、前年に続いて世界トップクラスの観光都市としての地位を維持した。文化、食、エンターテインメント、都市の利便性といった多様な魅力を兼ね備えた年として評価されている。
トップ10のうちに欧州が6都市、アジアからは東京の他にシンガポールが9位、ソウルが12位からランクアップして10位、そしてアメリカ大陸からは唯一ニューヨークが入っている。

今回のランキングでは、日本の都市が総じて評価を高めている点も注目される。東京に加え、大阪と京都がトップ20にランクイン、トップ20に3都市を送り込んだのは調査対象国・地域で日本だけだ。さらに札幌や福岡といった地方都市もトップ100に名を連ねており、訪日観光の裾野が広がっていることがうかがえる。
ユーロモニターによれば、2025年の世界の海外旅行者数は前年比で約4%増加しており、観光市場は着実な回復と成長局面にある。世界全体の旅行支出は2030年に向けて拡大が続き、都市観光は引き続きその中心的な役割を担うと見込まれている。
アジア勢がインバウンド客数で存在感 バンコクが1位、東京は11位
2025年のインバウンド客数が多い都市の上位10位には、アジアから4都市、欧州から3都市、中東・地中海地域から複数の都市がランクインする結果となった。
首位はタイのバンコクで、インバウンド客数は3030万人に達した。前年からはやや減少したものの、依然として世界最大級の観光都市であることに変わりはない。2位には香港が入り、国境再開以降の回復を背景に前年比6%増と堅調な伸びを示した。アジアからはこのほか、マカオ(4位)とクアラルンプール(10位)もランクインしており、短距離旅行や都市滞在型観光の強さが改めて浮き彫りになっている。

欧州勢では、ロンドンが3位、パリが9位に入った。いずれも長年にわたり世界有数の観光都市として地位を確立しており、文化・歴史資産と都市機能を兼ね備えた「定番都市」として安定した集客力を維持している。また、トルコのイスタンブールも5位にランクインした。ヨーロッパとアジアの交差点に位置する同市は、歴史遺産と都市観光の双方を強みとし、近年は中東・欧州・アジアから幅広い旅行者を集めている。
中東・地中海地域からは、ドバイ、メッカ、アンタルヤといった都市が上位に名を連ねた点が注目される。ドバイは国際的なハブ空港と高付加価値型観光を背景に、前年比7%増と着実な成長を続けている。ラグジュアリー観光やビジネスイベント、乗り継ぎ需要を含めた都市戦略が奏功している都市といえる。
なかでも、日本ではやや馴染みの薄い都市ながら健闘しているのが、7位のメッカと8位のアンタルヤだろう。メッカはサウジアラビアに位置するイスラム教最大の聖地であり、宗教巡礼を目的とした訪問者が世界中から集まる特殊な観光都市だ。レジャー観光とは性質が異なるものの、年間を通じて安定した国際訪問者数を誇り、インバウンド客数ランキングでは常に上位に入る。
アンタルヤはトルコ南部の地中海沿岸に位置するリゾート都市で、欧州を中心に「ビーチリゾート×大型リゾートホテル」の目的地として高い人気を誇る。オールインクルーシブ型の滞在モデルが確立されており、前年比8%増と高い成長率を示している点も特徴だ。文化観光とは異なるが、「滞在型・消費型観光」の代表例といえる都市である。
このトップ10の顔ぶれからは、世界のインバウンド市場が「文化都市」「ハブ都市」「聖地・リゾート都市」といった多様なタイプの都市によって支えられていることが読み取れる。インバウンド客数の多さは必ずしも観光の質や付加価値と一致するわけではないが、世界の旅行者の動線や嗜好の変化を理解するうえで重要な指標であることは間違いない。
なお、東京は昨年比12%増で11位、大阪は37%という大幅増で13位となっている。
観光インフラ・安全面で高評価の日本、持続可能性で欧州に後れ
観光都市ランキングを分野別に見ると、東京・大阪・京都は観光インフラや衛生・安全の分野で高い評価を得ているが、オーバーツーリズムやエネルギー効率と廃棄物管理など持続可能性の分野では他都市に後れをとっている。持続可能性は依然として都市の重要課題であり、マドリード、パルマ・デ・マヨルカ、バレンシア、セビリアなどのスペインの都市が先進的な環境施策をリード。また、ヘルシンキやオスロなどの北欧都市も、エコフレンドリーな取り組みで注目されている。
【編集部コメント】
都市観光の成長と持続可能性、いま地域が向き合うべき視点とは
このランキングは単なる順位表ではなく、世界の旅行者が都市に何を求め、どのような価値を評価しているのかを映し出す指標である。東京が3位、大阪・京都も20位内に入り、札幌・福岡もトップ100入りと、日本の都市は高く評価された。ただし、都市観光のポテンシャルの高さを改めて示す一方で、「持続可能性」の項目で欧州都市に遅れをとった点は、今後の地域戦略における重要な示唆となる。観光客数やインフラ整備だけでなく、地域社会との共生、環境負荷軽減といった視点をいかに取り込むかが問われている。北欧やスペインの取り組みを参考に、「持続可能な都市観光」に向けたロードマップを自地域でも描いてみるとよいだろう。
(出典:2025年世界の観光都市ランキング、東京は3位、大阪・京都もトップ20入り)
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