インタビュー

原宿表参道欅会 商店街振興組合 理事長 松井 誠一氏・副理事長 穐山壮志氏②

2011.06.09

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段階的なインバウンド施策と東京ファンウィークがもたらしたもの

村山

そんな魅力的な街が実施するインバウンドへの取り組みとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

松井

以前から少しずつ取り組んでいたのですが、本格的にインバウンドを意識するようになったのは2010年から。

この原宿・表参道エリアは、銀座や新宿など他の街とは違って団体観光客を呼ぶことが難しく、どうしても個人客が中心となってしまいます。したがって、この街に何度も来て下さるリピーター作りが必要不可欠となってきます。

こういった根本的な発想から3段階の施策を打ち出し、実行に移してきました。
まず1段階目として、この街でストレスを感じないで、あたかも自国でリラックスして過ごすことができるような環境をつくっていくことを意識し、言葉の問題やショッピングにおける決済習慣の違いをクリアしていきました。もちろん、商売としての対価を得ることは大切ですが、それ以前に、ストレスを軽減することで、この街を楽しみ、滞留していただくことを目的としたのです。
そして、第2段階として、SNSなどのインターネット・サービスを活用し、外国の潜在客に対して情報を発信。
そして、3段階目として、旧来の旅行代理店など通じ、積極的な誘致を進めていった経緯があります。

村山

効果はいかがでしたか?

松井

アメリカやヨーロッパの方々は、これまでも比較的多くいらしていたので、ターゲットとして東アジアを意識し、情報発信を強化したことで、この2月末まで実施していた訪日客促進キャンペーン「東京ファンウィーク」では、シンガポール、マレーシア、タイの方々が多く参加されていました。

穐山

「東京ファンウィーク」の趣旨は、あくまで“この街を楽しんでもらう”こと。したがって、参加店の割引優待ではなく、もっと立体的な、例えばツアー形式で街を散策してもらったり、スタンプラリーを実施したり、公共FREE Wi-Fiを設置してSNSと連動したり、普段の観光では味わえない街の魅力を伝えることを主眼としたイベントとしました。

企画に関してはコンサルや企画会社を入れず、すべて観光協会さまと欅会の実行員会で一緒に考え、アイデアを出し、文化祭のようなノリで進めていきました。コスト面もそうですが、自分たちの手ですべてを企画したことで、画一的なものではなく、この街の本質、すなわち“多様性”を表現することができましたし、参加されたお客さんとの距離が非常に近くに感じられた、意義あるイベントとなりました。

松井

街全体がこのキャンペーンに賛同して積極参加をしてくれたのも、スムーズな運営が可能となった要因のひとつでしょう。先にも述べたように、この街に属するすべての人の意識が高いということ、そしてこれまでのコミュニケーションの積み重ねが功を奏したのだと思っています。

キーワードは自己の財産の再発見と人の心をつなぐコミュニケーション

村山

今回のイベントを終え、商店街がインバウンドを実施する上で起こるべく問題点など、改めて見えてきたことはございますか?

穐山

やはりコストの問題でしょう。今回は、東京観光財団やVISAさんが強力にバックアップしてくれたことで充実した内容のキャンペーンを実施することができました。しかし、これも商店街単独ではなく、街全体を巻き込んで実行していたからこそ応援してくれたという部分はあると思っています。

村山

なるほど。周囲と連携することで協力者を得るということは重要かもしれませんね。

穐山

商店街同士の連携も必要ですよね。外国人観光客から見たら、街と街との間に線を引いているわけではないのですから、周囲と連動して、連続した多様性を提供していくべきだと思います。それは10年後、20年後のビジョンを共有することで一体化できるような気がします。行政と連携することで可能となるのではないでしょうか。

村山

おっしゃる通りですね。それぞれに素晴らしいコンテンツを持っている街が連続することで、さらにその魅力も拡大していきそうですね。ところで、現在のインバウンドにおける問題点について松井理事長の考えをお聞かせいただけますか?

松井

外国人の方々が日本のどこにいきたいか、なぜそこにいきたいのか、どういう楽しみ方をしているのかを分析し理解すべきですし、そして自分たちが何を持っているのか正確に把握すべきだと思います。恐らく、多くの方々が、これまで東京というのは観光とは関係のない場所であると思っていたでしょうから、これをよい機会とし、自らの観光資源や財産を再発見すべきだと思います。あとはコミュニケーション。対話を積みかさねることも大切ですね。

村山

せっかくよいものを持っていても、伝える手段がないと意味がありませんからね。

松井

言葉を交わすだけではなく、感動や体験の共有から生まれる意識の交流ほど、いつまでも人の心の中に印象として残るものはありません。

私たちが主催している“スーパーよさこい”には、ベトナムのチームも参加しています。彼らが国に帰って、知人に街の様子を話したり、また数年後に観光に訪れて「この街で踊ったんだ」という思い出を持ってもらうことで、ここはその人にとって特別な場所になります。
これも意識の交流の一種です。
現在、“スーパーよさこい”はタイやゴールドコーストのお祭り紹介イベントにも参加し、各地で強烈な印象を残しています。自分たちが持つよいものを武器に、海外の人々の心に響く形でアピールしていくことが重要なのではないでしょうか。

村山

本日は、ありがとうございました。

 

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