インタビュー
外国人による外国人のための旅行会社
Tokyo Gaijinsという在日外国人向けのサービスをする旅行会社がある。代表も在日外国人のリッキー・ファリナス氏だ。フィリピン出身のスポーツマンで、快活なキャラもこの会社の魅力の1つ。
今回の取材では、具体的にどんな活動をしているのか、在日外国人の求めるもの、さらに訪日観光への可能性を探った。
目次:
Tokyo Gaijinsの設立の経緯
どのようなツアーが在日外国人に喜ばれたのか
参加される在日外国人はどんなニーズ
今後はさらにどのようなことを手がけたい
Tokyo Gaijinsの設立の経緯を教えてください
私は2002年にワーキングビザを取得して来日したのですが、実は初来日は1994年だったんです。来日の理由は柔道のトレーニングが目的で、日本で稽古に励みました。当時、フィリピンで柔道選手として国の代表にも選ばれました。持ち前の身体能力でやれたのでしょう。もっともフィリピンの柔道人口が少ないから、私でもそこまでいったのでしょうね(笑)。
本当は子供のころから続けていたバスケットボールのほうが好きなんです。
2002年に来日して、バスケットボール好きな外国人仲間と出会ったのが大きな転機でした。外国人のバスケットボールサークルがあり、その活動に参加しました。職場ではなかなか友人を作れる機会が少なく、交友関係が広がりました。
そんな仲間たちと、バスケットボール以外のアウトドアスポーツもするようになり、やがて在日外国人の友人が増えていきました。
当時は、今ほどSNSが発達していなかったので、本当に口コミで、友達のその友達という関係で徐々に広がっていきました。英語の先生が多かったのですが、ほとんどが短期で母国に帰国していきました。結果として私が、世話役を買って出ることに。
つまり、Tokyo Gaijinsは、「外国人による外国人のためのサークル」として始まったのです。
現在は、アウトドアスポーツを目的とするツアーの企画・運営のほか、スポーツ、パーティー、講演等各種イベントの企画、運営もしています。
イベントはすべて英語で行われるため、対象は外国人(在住・旅行者問わず)ですが、最近は英語を勉強したい日本人も参加いただいています。
現在、メーリングリスト登録総数は、10,000人を超えました。Facebookの「いいね」は約12,500人です。
どのようなツアーが在日外国人に喜ばれたのか実績を教えてください?
実績として、夏には、伊豆諸島キャンプ、ビーチトリップ、ビーチバレー、サーフィン、カヤック、シュノーケル、ウェイクボーディング、キャニオニング、ラフティング、パラグライディング、フォレストアドベンチャーがあります。
冬は、スキー・スノーボードトリップ、地獄谷野猿公苑ツアー、雪合戦大会、スノートレッキング、クリスマスイルミネーションツアー、札幌雪祭ツアーなど。
通年としは、ハイキング、サイクリング、スカイダイビング、バンジージャンプ、温泉、酒・ワイン産地めぐりがあります。
常にスタッフは、何か新しいアウトドアスポーツはないか、リサーチをしていて、いち早く取り込むようにしています。会員も新しいスポーツを求めていますから。みんながやりたいと思う企画をモットーにしています。
また都内では、アーバンラン、パーティー、カクテルパーティー、ハロウィーンなどがあり、スポーツイベント以外に文化イベントも実施します。
ロボットレストランのイベントをいち早く開催して、好評となりました。
先日の渋谷でのハロウィーンパーティーには、多くの変装した外国人だけではなく、日本人の参加もありました。会場は予約していますが、参加は事前予約なし。Tokyo Gaijinsなら楽しいイベントに違いないと知られていて、おかげさまで参加が100名を超えました。
さらにスポーツクラブの活動もやっていて、当初のバスケットボールも継続していますし、他にバレーボール、フットサル、テニスがあり、それぞれに会員がいます。
いくつかのイベントがあるなかで、最も人気なのがスキー・スノボーツアーです。
訪れるスキー場は、白馬、妙高高原、志賀高原、ニセコですね。
12月中旬~3月中旬までの期間で毎週開催され、毎回、45名~90名が参加いただけます。
初心者向けのレッスンコースも家族連れに好評です。
宿と 交通機関がワンストップなの は、在住外国人には喜びです。
参加される在日外国人はどんなニーズをお持ちだと思いますか?
これまで参加いただいた外国人、また日本人の方々の傾向があります。
男性に人気なのは、スキー・スノボーで、女性はハイキング、ワインツアー、お祭です。
ニーズの違いがあります。
会員登録には、中国系の方もおりますが、実際に参加されるのはほとんどが欧米人で、他に日本人の女性です。
参加者比は、
外国人:日本人は 7:3、
男性:女性は 4:6です。
女性は外国人よりも日本人が多いのが特徴で、逆に男性の日本人があまりいないのが残念です。
基本的に英語でのサービスになり、雰囲気も日本っぽくはありませんよ。
外国人にとってのスタンダードな場づくりを心がけています。そこが喜ばれるポイントだと思います。
例えば、細かい時間など、欧米人は、きっちりし過ぎているのが苦手で、フレキシブルな対応を好みます。
またバスが走り出したとたんに、飲み会が始まり、ハイテンション。ジョークが飛び交い、騒がしいぐらいがちょうど良いのです。クレイジーツアーという参加者もいますが、リピーターも多いのです。70%はリピーターで、参加者同士も顔見知りになります。
こういう雰囲気こそ、外国人にとってリラックスできる環境なのでしょう。
一人参加の方も多くいますが、ここで出会いがあり、友人をつくったり、カップルになったり、東京に戻ってからも関係性が継続されます。
把握しているだけで、21組が結婚に至っています。
このように出会いがあるというのも魅力の理由でしょう。そのため、私はムードメーカーに徹しています。
会員は東京在住者が一番多く、企業勤務の方がほとんどです。他に米軍勤務者や大使館関係の人、JETプログラムで来日された方も。国別は、アメリカが一番多く、UK、オーストラリア、ドイツ、フランスと続きます。
一方、バスケットボールをやる人は、特にスキー・スノボー、さらにハイキングにはあまり参加しません。求めるものが各自異なり、はっきりしているのでしょう。
今後はさらにどのようなことを手がけたいと考えていますか?
今後は訪日外国人にも力をいれていきたいと考えています。
既に在住外国人に会いに来日された方の参加もあり、その範囲は広がりつつあります。
SNSによる露出も増えているおかげで、海外からの問い合わせも出始めています。
今後は、海外への新しいアプローチも検討中です。
また現在、都内で開催しているパーティーを、観光的な要素を加えたものを検討中です。例えば都心を走るサイクリングツアーも可能性がありそうですね。これですと、観光で来日された外国人が、在住外国人と出会える機会ができて、情報交換の場になります。
スタッフが少ないため、現状では、週末のツアーだけで手いっぱいです。今後は外から手伝ってくれるサポートメンバーをうまく機能させたいですね。私たちのツアーに参加してファンになった在日外国人がいるので、声をかけていきます。
今年は、墨田区観光協会に要請されモニターツアーを実施しました。都内在住の外国人を集め、意見をもらおうというプロジェクト。
外国人目線でのマーケティングのお手伝いも声をかけていただければ実施していきたいと考えています。
Tokyo Gaijins
http://www.tokyogaijins.com/
取材後記:
代表 のリッキーさんは、 取材中 、陽気に 語って いた だ。この人柄が、Tokyo Gaijinsの魅力になっている。もともとサークルから出発した旅行会社ならではの雰囲気だ。
彼は、根っからのスポーツマンで、富士山は50回以上登山した。また北アルプスの白馬岳に登った際、一般的には山小屋で1泊するところを、ペースが早いため日帰りで行く。かなりの健脚ぶりだ。
また参加者を外国人に限定せず、英語を勉強したい日本人もいるなど、柔軟な取り組みもユニーク。今度は、訪日観光客にどれだけリーチできるのか楽しみだ。
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