インタビュー
全国約2万台のATMで海外発行カードが利用可能!外国人旅行者の「おサイフ」として大活躍
日本を訪れた外国人旅行者は、「両替所や海外で発行されたクレジットカード・キャッシュカードが使えるATMが少ないこと」に不便を感じている。日本では、海外発行カードが使えるATMが限定されているほか、クレジットカードでの支払いに対応していないお店も多く、地方の観光地では特にその傾向。そのような中で、セブン-イレブンを中心に全国展開するセブン銀行のATMは、海外で発行されたクレジットカード・キャッシュカードで「日本円」を引き出すことができ、外国人旅行者から好評だ。外国人旅行者の多い場所に設置されているATMの中には、海外発行カードだけで1日に200件以上利用されるものもあるという。
目次:
セブン銀行の設立と外国人対応の経緯について
外国人対応のスタートとサービス内容について
外国人利用状況やニーズについて
外国人対応の今後の展望について
セブン銀行の設立と外国人対応の経緯について教えてください
セブン銀行は、ATMサービスを主とする銀行として、2001年に開業しました。
セブン-イレブンではお客様のニーズを掴むため、定期的にアンケート調査を行っています。1990年代に行った調査では、新しくお店に欲しいサービスとして、回答の上位にいつもATMがあがっていました。
お客様にATMサービスを提供するために様々な検討がされましたが、最終的には新たな銀行を設立することとなりました。
現在、当社の収益のうち約95%はATMサービスによるものです。お客様からお預かりした資金を貸し出して、その利ざやで収益を得る一般的な銀行とはビジネスモデルが大きく異なります。
当社は、創業以来、常にお客様の視点に立ち「いつでも、どこでも、だれでも、安心して」使えるATMサービスの提供に努めてきました。
その「だれでも」には、もちろん、外国人の方々も含んでいます。ATMを社会インフラのひとつと位置付け、あらゆるお客様にとっての使いやすさと、利用者層の拡大を目指しています。当社のATMは、NECやALSOKなどのパートナー会社と一緒に開発していますが、いずれは海外発行カードによるお取引ができるようにしようという思いが当初からありました。
たとえば、海外発行カードに対応するためには、ATMの暗証番号をタッチパネルではなくキーパッド(小型キーボード)で入力できるようにする必要がありますが、当社のATMは最初からキーパッドを標準装備していました。
外国人対応のスタートとサービス内容について教えてください
準備期間を経て、海外発行カードへの対応は2007年にスタートを切りました。当時、セブン銀行のATMは全国に約1万2000台ありましたが、全てのATMで海外発行カードが使えるようになりました。
また、海外発行カード対応の開始と同時に成田空港へセブン銀行のATMを設置させていただきました。セブン-イレブンやイトーヨーカドーなど、セブン&アイ・ホールディングスの店舗以外への設置は、成田空港が最初です。今でこそ、駅や観光地にも設置が増えていますが。
使えるカードブランドは、VISA(PLUSを含む)、MasterCard(Maestro、Cirrusを含む)、AMERICAN EXPRESS、JCB、中国銀聯、DISCOVER、Diners Clubです。
操作方法を英語、韓国語、中国語、ポルトガル語の音声・画面表示でご案内しており、ご利用明細票も4言語に対応しています。画面でどの言語を希望するかを選択すると、各言語で「いらっしゃいませ」という音声が流れる仕掛けになっています。母国語を聴いて、安心してもらおうと考えました。
ATMからの問い合わせは、日本語と英語で24時間対応しております。
2008年に当時の社長(現・会長)の安斎隆が国土交通省から「YOKOSO! JAPAN大使」に任命されました。海外発行カードで日本円を引き出せるように、旅行環境を整備したというのが選ばれた理由です。
外国人利用状況やニーズについて教えてください
おかげさまで、2014年7月末時点で、セブン銀行のATMは全国で約2万台になりました。約90%がセブン-イレブン店舗への設置ですが、空港・駅・観光地・様々な商業施設などにも1500台以上のATMを設置しています。
その中でも外国人の利用が高いのは、空港と観光地です。
街中における外国人の利用は、観光地とそれ以外の場所で大きく利用頻度が異なります。外国人の多い観光地では、海外発行カードだけで1日に200件以上利用されるATMもあります。
海外カードの利用件数は、毎年増加をしていて、2008年度の86万3000件から2013年度には240万件へ大幅に伸びました。
セブン&アイ・ホールディングス以外の施設向けに、ATMを増やす取り組みをしていますが、海外で発行されたクレジットカード・キャッシュカードで「日本円」を引き出せるというのは、施設側への大きなアピールになります。
東京オリンピック・パラリンピックに向けて、インバウンドへの意識も伸びつつあり、ありがたいことに、いずれかのATMを設置するならセブン銀行にしたいという声も増えています。
昨年、十六銀行高山駅前支店内のATMコーナーにセブン銀行のATMを設置させていただきました。飛騨高山は、毎年15万人の外国人が訪れる国際観光都市です。海外発行カードが利用できるATMを設置して欲しいという要望が十六銀行さんへ多く寄せられ、当社へお声掛けいただきました。
今年は、茨城空港にもATMを設置させていただきました。空港が海外発行カードを利用できるATMを希望されており、地元の常陽銀行さんから相談をいただきました。
外国人対応の今後の展望について教えてください
セブン銀行のATMで海外発行カードが使えるということが、まだまだ知られていないと感じています。
そのために、国内と海外の両側面で、認知促進を図っていきたいと考えています。
国内の事業者向けには、ツーリズムエキスポやJNTOフォーラム、SCフェアなど展示会に積極的に出展し、各事業者のインバウンド政策にセブン銀行のATMを役立てて頂くようPRしていきます。
来日する前の外国人向けには、現地でのWeb広告、日本到着時の空港での広告などを使って、セブン銀行のサービスをご案内していきます。
最近は、外国人も多く訪れる地域のイベントやお祭りの会場で、認知促進に取り組んでいます。各地の観光協会とタッグを組んで、外国人向け観光地図などの配布物にセブン銀行ATMの場所を表示していますが、京都の祇園祭、大阪の天神祭などではとても役立ったようです。
グループの百貨店を通して地域と連携も図っています。渋谷界隈で行われたビジットシブヤでのキャンペーンでは、パンフレットにセブン銀行の場所を表示してもらいました。
決して押し売りではなく、外国人旅行者にも有益な情報になるので、双方にメリットがあると思います。
セブン銀行のATMがどこにあるかを探しやすくするアプリも開発しました。
http://www.sevenbank.co.jp/personal/atm/app/
8月27日から、スマートフォン向けATM検索アプリ「セブン銀行 ATMナビ」の提供を開始しました。画面表示は、日本語と英語に対応して、料金は無料です。
ARモードでどこにセブン銀行があるのか、方角と距離が示されます。対応OSは、Android 2.3以上、iOS 6以上。AR技術を利用した案内は、インターネットにつながらない環境でも利用できます。
お取引の安全性も高めてていきます。
来年末までに全国のATMすべてが、海外発行のICチップ内蔵型キャッシュカード・クレジットカードに対応します。
訪日外国人の方々に安心して利用していただくためです。
外国人アンケートでは、Wi-Fiに次いで両替所やATMに関するご不満が多いようです。2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、少しでもこのご不満の解消につながるように邁進していきます。
取材後記:
利用率からすれば国内カードと比較すると、外国人の比率は数%にも満たないそうですが、それでもしっかりと外国人向けにプロモーションするなど、設立のコンセプトを守って取り組んでいる姿勢に感銘を受けました。もしもセブン銀行のATMがなかったらと思うと、観光立国を目指すうえで、ゾッとしますね。
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