インタビュー
アジアのFIT客が日本の国内バスツアーに乗る時代になった
新聞広告やツアー会員誌「旅の友」でおなじみの個性あふれるバスツアーを、長年企画販売してきたクラブツーリズムが、2009年から外国人客向けバスツアーの募集を開始。アジアからのFIT客の集客に手応えを感じ始めている。どんなツアーが人気なのか。集客やプロモーションはどうしているのか。クラブツーリズム株式会社インバウンド推進部リーダーの関口和郎氏に話をうかがってみた。
目次:
外国人客に人気のツアーは?
アジア客向けのサービスのポイント
集客やプロモーション方法
今後の展開
外国人客には、どんなツアーが人気ですか?
売れ筋商品は、富士山の日帰り体験モノです。5合目を訪ね、温泉に立ち寄る一般的なコースではなく、フルーツ狩りや雪遊びが楽しめるツアーです。
人気の背景には、日本のフルーツにおけるアジアでのブランド化があります。アジアのお客様は、食べ放題ならお値打ちと考えているのです。イチゴ、さくらんぼ、桃、ブドウと、季節によってバリエーションがあるのも飽きさせない理由となっています。
おひとりでイチゴを70個も食べた方もいらっしゃいました。もともと富士山近郊の農園が国内客相手にやっていたフルーツ狩りが、いまではアジアのお客様の人気を呼んでいるのです。
さらに、定番商品としては白川郷を訪ねるコース。特に雪のシーズンに人気があります。春先にアルペンルートの雪の壁を訪ねるコースも、台湾やタイのお客様が多いです。日帰りツアーの料金は、1万円を切る価格帯で催行するよう努めています。また羽田発北海道の2泊3日ツアーも最近増えてきました。
アジア客向けバスツアーのサービスのポイントは?
ポイントは3つあります。
まず、食事はお弁当ではなく温かいものをお出しすること。そして、ベジタリアンの方についても極力対応していくようにしています。
これは東南アジアのお客様の受け入れには重要なポイントです。食事処との事前打ち合わせは欠かせません。
ふたつ目は、高速のサービスエリアでしっかり時間をとること。海外のお客様には、サービスエリアで売られているさまざまな地産品が魅力的に映るようです。たくさんお土産を買っていかれるので、ただのトイレ休憩ではなく、ショッピングの時間と考えています。
3つ目のポイントは、皆さん雪が大好きということです。といっても、本格的にスキーをやりたいというのではなく、雪とたわむれたいのです。ですから、ツアーにソリや雪合戦などの遊びを入れると大好評です。ただし、雪の寒さに慣れていらっしゃらないので、時間を見ながら切り上げることも大切です。
バスの移動中は、添乗員が観光地の解説DVDの外国語版をお見せします。またアトラクションとしてくじ引きをやり、当たったお客様には立ち寄り先のお土産をお渡しします。これも大変喜ばれます。
多くの外国人向けツアーの中には日本のお客様と外国のお客様が混載するツアーも多数あります。
興味深いのは、国内客は平均50~60代の女性が多いのに対し、外国客は30代のカップルやファミリーが一般的。車内でお客様同士、交流する姿が見られることです。これからは日本人とアジアのお客様が混載して国内バスツアーに出かけることが当たり前の時代になるかもしれません。
外国人客向けの集客やプロモーションはどうしていますか?
弊社のインバウンド推進部の立ち上げは、2008年12月です。翌年1月、英語と中国語(繁体字/簡体字)のHPを開設しました。当初、ターゲットをどこに絞るべきかわかっていなかったので、とりあえず海外のFIT向けにやってみようと始めたところ、最初の予約は香港の方でした。それ以後も、アジアのお客様の予約がほとんどで、ターゲットは欧米のお客様ではないことがわかりました。現在、外国人客の半数は香港で、それに次いで台湾、シンガポール、今年からタイやマレーシアのお客様が増えてきました。
海外のお客様はすべてHPで集客するという考えです。現在、外国人客向けメールマガジン(英語/中国語)の会員が約5万人。毎月3回発行しています。内容は、新しいツアー商品の紹介や日本の観光ニュースなどです。
実際、現在90%がネット直販です。
ツアー後のアンケートを見ると、「どうやって知ったか?」の問いに対してFacebookが必ずベスト3に入ります。やはりアジアのFIT向けにはSNSの活用は欠かせません。
今後は海外プロモーションにも力を入れていくつもりです。最初は手探りでしたが、2010年の香港のトラベルフェアに初めて出展し、以後台湾やシンガポールでも、メルマガ会員を集めることに努めてきました。会場でのツアー販売も始めています。
今後の展開をどうお考えですか?
アジアのお客様は、国によってツアーに参加される時期がそれぞれ微妙に違っています。たとえば、マレーシアは11~12月がスクールホリデーなので、最近は大勢いらっしゃっています。台湾はこの時期少なくて、1~2月の旧正月や7~8月の夏休みが多い。シンガポールは学校の長期休みが12月なので、これから増えてきます。
一方、国内客は正月明けから2月までがオフシーズンで、この時期インバウンド客はピークを迎える。日本の観光産業の長年の課題だった閑散期をアジア客が埋めてくれているのです。
弊社はこれまで国内向けに多種多様なバスツアーを催行してきました。つまり日本の消費者相手に培ってきたノウハウと豊富な商品ラインナップがあります。
売るものは揃っている。そのうち外国のお客様にどれをどう売っていくか。どれだけご満足いただけるか。また、まだ少ない中国本土のお客様にどう売っていくかは、今後の課題です。
クラブツーリズム株式会社
東京都新宿区西新宿6-3-1 新宿アイランドウイング16F
http://www.yokoso-japan.jp
最新のインタビュー
日本一のインバウンド向けローカル体験を創ったツアーサービスMagicalTripが、未経験ガイド9割でも最高評価を獲得できる理由 (2024.07.26)
やんばる独自の文化体験を提供する宿の若手人材育成術「育てるよりも思いをつぶさない」の真意 (2024.04.26)
人口の7倍 62万人のインバウンド客が訪れた岐阜県高山市の挑戦、観光を暮らしに生かす地域経営 (2024.03.22)
国際環境教育基金(FEE)のリーダーが語る、サステナビリティが観光業界の「新しい常識」になる日 (2024.02.09)
パラダイムシフトの渦中にある観光業に経営学を、理論と実践で長期を見据える力をつける立命館大学MBA (2023.11.14)
2024年開講、立命館大学MBAが目指す「稼げる観光」に必要な人材育成 (2023.10.26)
【海外での学び直し】キャリア形成への挑戦、ホテル業界から2度の米国留学で目指すものとは? (2023.09.29)
広島にプラス1泊を、朝7時半からのローカルツアーが訪日客を惹きつける理由 (2023.08.04)
異業種から観光業へ、コロナ禍の危機的状況で活かせたMBAでの普遍的なスキルとは? (2023.06.09)
台湾発のグローバルSaaS企業「Kdan Mobile」の電子署名サービスは、いかに観光業界のDXに貢献するのか? (2023.05.17)
【提言】アドベンチャートラベルは「体験」してから売る、誘客に必要な3つの戦略 (2023.04.21)
世界一予約困難なレストランでも提供。北海道余市町を有名にした町長の「ワイン」集中戦略 (2023.04.14)