インタビュー
中国のFITマーケット拡大に向け、現地の旅行会社に布石
近年、中国ではFIT(個人旅行)の需要が高まっています。株式会社フレンドリージャパンでは、2011年4月から日本初の中国旅行会社向けB to B販促冊子「壹游日本 いいよりーべん」を発行して中国のFIT化をサポートしています。中国での豊富なネットワークを活かしたさまざまな活動について、代表取締役の近藤 剛氏にお話をお聞きました。
目次:
中国旅行会社向けB to B販促冊子「壹游日本 いいよりーべん」
フレンドリージャパンの起業にいたるまでの経緯
現地旅行会社のネットワークを活かした営業代行
今後の展望
中国旅行会社向けB to B販促冊子「壹游日本 いいよりーべん」についてご説明ください。
今までの団体旅行では、ランドオペレーターにツアーの作成を丸投げして、料金勝負でツアーを販売する場所として中国の旅行会社がありました。
しかし、FIT化が進むと、中国の旅行会社は自分達で企画を作り、個人型パッケージツアーを組み立てなくてはいけません。そうすると、日本旅行のノウハウが必要ですし、各施設の情報が必要になる。でも何が面白いのか、どこのホテルがリーズナブルで使いやすいのかという情報がなかったんです。
中国の旅行会社が中国国内の旅行を作る時には、施設やホテルの情報が載っている冊子を使って企画を立てます。
これの日本版として、日本の旅行会社や宿泊・観光施設、交通機関、観光地の情報をまとめた「壹游日本」を発行したのです。これは、現地の要望を受けて発行したものなので、たいへん歓迎されました。
これの日本版として、日本の旅行会社や宿泊・観光施設、交通機関、観光地の情報をまとめた「壹游日本」を発行したのです。これは、現地の要望を受けて発行したものなので、たいへん歓迎されました。
中国人に来て欲しいと思っている企業が、1冊にまとまって載ることで、中国旅行社側もコンタクトが取りやすくなります。
2011年4月に「壹游日本」第1号を出して、季刊誌として年4回、中国で訪日旅行を取り扱っているほぼすべての約300社に無料で配布しています。掲載は有料になり、第1号目は、実物がないなかでの案内だったので苦労しましたが、このコンセプトに賛同いただき、赤字を出さずに発行に至りました。
基本的には各企業が持っているデータを載せますが、写真データをいただければ私たちがページを作ることも可能です。掲載希望の会社の増減によってページ数が変わるのですが、昨年は3.11の影響があり、創刊号より増えませんでした。2012年に入ってまた日本のインバウンド業界が活発になってきたので、ページ数が増え内容も充実してきました。来年の今頃には今の倍の200ページぐらいの厚さにしたいと思っています。
冊子の内容は現地旅行会社の声を聞いて随時改定しています。ホテルのエリア、チェックイン・チェックアウト時間、部屋の広さ、料金、Wi-Fi環境の有無を表にまとめて欲しいというリクエストが出ましたので、2号目からは各施設の基本情報が一覧できるページを作りました。また、テーマパークや桜、温泉、大型ショッピング施設の特集を組み、訪日旅行の企画を立てやすくしました。
「壹游日本」はウェブサイトhttp://www.yiyoujp.com/でも見ることができます。ウェブ版は、今後はホテルなどの予約サイトにつなげていきたいと思っています。
フレンドリージャパンの起業にいたるまでの経緯を教えてください。
独立する前は、ANAセールスに22年間勤めていました。2004年~2005年には上海に駐在して、現地の旅行会社の方ですとか、上海の影響力のある実力者と知り合う機会を得ました。私のキャラが水に合ったのか、現地の中国の方々とフランクに付き合っていただけました。日本に戻ってからも中国からの受け入れを担当し、現地の旅行会社との結びつきが非常に強くなったんですね。中国は人脈社会ですので、一回信用されると、その後は私が違う部署に移っても、私に仕事のご相談をいただけるなど、信頼関係が継続されました。
会社を設立したのは2009年12月です。中国での人脈を活かして、上海万博の事業からスタートしました。2010年11月から、インバウンドに関わる旅行コンサル、販促物の提供、中国からの誘客促進を柱に、訪日旅行事業を本格的に始めました。また、独立と同時に上海事務所を作りました。インバウンドは現地で動くことが多いので、上海事務所を作って良かったと思っています。
豊富な現地旅行会社のネットワークをお持ちですが、他にはどのような活動をされていますか。
企業のニーズや性質に合わせて、上海で代行事務所業務をしています。
中国の観光客の方にいっぱい来て欲しいというニーズはありますが、いきなり中国語で問い合わせが入っても対応できない。中国旅行社からの問い合わせを現地で受けて欲しい。そのような場合には私たちが窓口代行をやります。さらに能動的に、日本の施設やサービスに誘導するために現地でPRをして欲しいというご要望にも応えます。
冊子で紹介してくれるだけでいいという場合から、弊社の代行事務所に出向として社員を置きたい場合など、さまざまなケースに対応しています。また、自分の会社から行かせる人間はいないが、専用スタッフを置きたいということで、人選から頼まれる場合もあります。
企業が中国に事務所を出すのには莫大な固定コストもかかりますし、ルートがないと中国では相手にされません。コストをかける割には、あまり効果がないことがあります。フレンドリージャパンの強みは信頼できる現地旅行会社のネットワーク、人脈です。私たちに営業を任せてもらえば、私たちのネットワークを使ってPRを代行します。
今後の展望についてお聞かせください。
FITで来日する場合、オプショナルツアーで1日観光したいとか、入場券をセットで売って欲しいとか、いろいろなニーズがあると思います。そのような素材を販売するサイトがあるので、現地の旅行サイトにリンクをすることで利用を促しています。
日本には売れる素材がたくさんあります。FITでは、オプションや素材を用意して、個人に合わせたスキームを作る会社が勝ち残っていくと思います。
また、今はインバウンド関係の代行だけですが、今後は上海の旅行会社のネットワークを使って、現地で物を売りたい場合などにもお手伝いしたいと思っています。
これからも中国の日本市場が活性化するような仕組み作りに貢献していきたいと思います。
株式会社フレンドリージャパン
http://www.friendlyjp.com/
取材:Kanako Morishita
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