インタビュー
社団法人国際交流サービス協会(IHCSA)は、主に外務省による外国人招聘客の受け皿として1970年に設立されて以来、これまで日本の国際交流活動や国際相互理解の促進を図る役割を果たし続けています。
さらに昨年からは、訪日外国人客に喜ばれる接し方やさまざまな宗教にも配慮したマナーなど、これまでの業務を通じて蓄積してきたノウハウを活用したインバウンドサポート事業に取り組みはじめました。各国の国会議員、オピニオンリーダー、ジャーナリストなどの訪日外国人に対応するために長年培ってきた知恵や工夫を生かしたインバウンド支援についてお話を伺いました。
目次:
国際交流サービス協会全体の事業概要
独自のインバウンド支援とは
「インバウンド・カフェ」というサイトの立ち上げ
今後の活動について
国際交流サービス協会の全体の事業概要
40年間にわたる業務実績があり、設立以来、主として3つの業務を通して国際交流に貢献してきました。昨年からは、これまでのリソースを生かし、さらに4つ目の柱を育てている段階です。
1つ目の柱は、インバウンドとアウトバウンドです。
外務省が招聘した賓客や要人のために、通訳や宿舎の手配といったインバウンド業務を行っています。
外国人招聘客に応対するには高度なレベルが求められるので、通訳やガイドについては44言語に対応できる人材を独自に育成してきました。
また、一般旅行業としても登録しており、外務省関係者などが出張する際の日程相談、フライトプランの作成、ビザの取得などアウトバウンドの業務も行っています。
2つ目の柱は、国際研修の運営です。
国際協力機構(JICA)の専門家など、海外赴任を控えた方々とその家族を対象に、語学や健康管理をはじめとする研修を行っています。
3つ目の柱は、在外公館派遣員制度です。
在外の日本大使館や領事館に、合計およそ260人の現地語に堪能な民間の若い人たちを派遣しています。在外公館派遣員は、現地での庶務関係業務等において、その語学力を発揮して通訳業務を担当しています。
さらにこれら3つの業務に関連して、国際相互理解促進のためのセミナ―開催、機関誌「イークサ・カフェ」などの出版物も発行しています。
4つ目の新しい柱として、育てているのが、独自のインバウンド支援です。
リソースである駐日各国大使館員とのパイプを活用したツアー造成とその新たな展開を目指しています。
日本の観光立国を推進してゆくために、国際交流サービス協会では2010年9月にインバウンドサポート事業を立ち上げ、訪日外国人に対するおもてなしの実践的なノウハウをインバウンドに携わる方々に情報発信しています。そして、駐日各国大使館員ツアーを、この事業と連動して展開するという新たな挑戦をはじめました。
独自のインバウンド支援とは
各国の在日大使館と強いつながりを持つ国際交流サービス協会では、これまで駐日各国大使館員とその家族を対象とした国内各地へのインバウンド・ツアーを実施してきました。
さらに、ワークショップやイベントも開催し、日本の内側に一歩踏み込んだ視点で伝統文化を紹介しています。谷中在住のアメリカ人墨絵画家ジム・ハサウェイ氏が講師を務めた墨絵のワークショップでは、参加者たちが墨絵に挑戦しました。
このほか盆栽、折り紙、蒔絵体験なども実施しており、日本文化の素晴らしさを外交官たちにアピールしています。
この事業はインバウンドに熱心な地域の協力を得て実施しており、駐日各国大使館員とその家族が、これまでに長野県の地獄谷野猿公苑や湯田中渋温泉郷、千葉県南房総の「ビッグひなまつり」、新潟県南魚沼市での雪国体験などのツアーに参加し、好評を得ています。
ツアー実施後は参加者へのアンケートを通して受け入れ地域に情報をフィードバックしています。
「インバウンド・カフェ」というサイトの立ち上げ
「インバウンド カフェ」を立ち上げたのは、弊協会の持つインバウンドのノウハウや情報を発信すると共に、独自開発の「外国人受入教材」購入者を会員として会員専用ページを設け、1年間無料でサポートできるという意味も含まれているのです。
インバウンド カフェ
http://inboundcafe.ihcsa.or.jp/
ところで、インバウンドビジネスを始めるには、外国語の能力や資金、長期の準備期間等よりも、やはり親身のおもてなしが大切です。そこで、インバウンドの初級から中級レベルの宿泊施設の方々を対象としたDVDおよびCD付きの教材「これなら使える!外国人旅行者実践おもてなし完全パック<旅館・ホテル編>」を作成したのです。
この教材には、30分のショートムービーによる外国人旅行者受入手順の紹介や、英語での予約・各種問い合わせに対応するための書式、旅館やホテルのビジネス現場で英語が必要になるシーンを想定した英会話例などを収録しています。
今後の活動について
新しく立ち上げたインバウンドサポート事業をどのようにして多くの人に知っていただくかが今後の課題です。インバウンドビジネスのためには、口コミサイトなどネットの力を有効に使っていくことが大切だと考えています。
今年の目標としては、駐日各国大使館員ツアーをさらに2~3本実施する予定です。
また、東日本大震災で被災した東北を支援するイベントも計画中です。今回は被害を受けなかった京都、高野山、四国巡礼など西日本の国際観光振興のお手伝いもしてゆきたいです。
東日本大震災の影響で、訪日旅行は非常に大きな打撃を受けています。インバウンドを立て直すために今必要なのは、日本に関する情報を海外の人たちに受け取ってもらうことです。
震災直後には多くの外国人が日本から出て行きましたが、その後戻ってきた人たちもいます。これらの人たちに日本の現状や安全性についてかれら自身の言葉で伝えてもらうことができれば、インバウンドを立て直すために大きな効果が期待できます。そのためには、われわれが正確な情報を流してゆくことが大切です。
また、インバウンドが戻って来た時にすぐに対応できる体制を整えておくことが必要です。弊協会では、その部分のサポートもしてまいります。
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