インタビュー
世界が認めるジャパンクオリティ正当な価値を認知させる交渉力
漫画、アニメ、ファッションなど世界が認める日本のクールなコンテンツの普及を、投資といった経済的側面から支えるクールジャパン機構。その代表である太田伸之氏は、“ジャパンクオリティ”に自信を持ち、強気なビジネス交渉を進めることの重要性を訴える。太田氏の豊富な体験談の中から、外国人相手のビジネスを進める上での重要なポイントを探ってみたい。
プロフィール:【略歴】
1977年:明治大学経営学部卒業後、ジャーナリストとして渡米(ニューヨーク)
1985年:東京ファッションデザイナー協議会を設立(事務局長)
1995年:(株)松屋営業本部顧問、(株)東京生活研究所専務取締役
2000年:(株)イッセイミヤケ代表取締役社長
2006年:(社)日本ファッション・ウィーク推進機構理事
2011年:(株)松屋常務執行役員
【公職等】
元内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ・日本ブランド専門調査会委員、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構理事
日本の“格好いい”“おいしい”を投資を通じて世界に広める
村山
早速ですが、クールジャパン機構の設立経緯からお聞かせいただけないでしょうか?
太田
クールジャパンとの関わりは、株式会社イッセイミヤケ社長当時、小泉政権時代の内閣官房に知財本部コンテンツ専門調査会というものがあり、そこでは漫画、アニメ、映画、音楽といったコンテンツを、世界にどうやって効果的に発信していくかについての議論が行われていました。
やがて、ファッションや食、地域ブランドといったジャンルも含まれることになり、民間委員としての参加を要請されることになったのがきっかけです。
TV局や出版社の社長、漫画家、著名なシェフなど、各界の一流の方々が集まり議論を重ね、ある一定の形になったのが麻生政権になってからのこと。
そこで私は一旦、解放されたのですが、続いて各省庁に、次なる段階として具体的な実行に落とし込むべく機関が誕生していく中、クールジャパンの組織を作り、経済的な支援をしていくべきではないかの議論がはじまったようです。
村山
そこで、太田社長に白羽の矢が立ったのですね。
太田
事業の意義は感じていたものの、株式会社イッセイミヤケで10年間社長職に従事してきたため、もういいかと(笑)。しかし、昨年の8月、関係者の方々の間で正式に推薦したいとの声が固まり、お受けすることにしたのです。
村山
太田社長に期待が集まったのは、どのような背景があってのことだと考えられますか?
太田
恐らく、海外生活が長く、日本の良いモノを世界に広げようとやってきた、その経験が買われたのだと思います。
海外の方とのビジネス交渉にはそれなりに自信がありましたしね。
そしてもうひとつ、個性的なデザイナー集団を10年間まとめてきた、その経験が生かせるのではと期待が集まったのだと考えます。
海外市場を相手取り、個性的なクリエイターをまとめ上げながら、コンテンツビジネスを展開していく、そんなクールジャパンの事業には必須の力と評価されたのでしょう。
村山
なるほど。それでは、続いて事業概要をお聞かせいただけますでしょうか?
太田
ひと言でいえば、日本の“格好いい”“おいしい”を世界に広めていきたいという企業に対し、リスクマネーを供給するというものです。
一般のファンドと違い、長い目で見て投資を行い、慌てて回収はしない。
一般ファンドほど利益をあげる必要がなく、あくまで投資先の企業に、しっかり利益をあげてもらうおうと。
そして最終ゴールは、海外の方々に日本のことをよく知ってもらい、関心を持っていただくこと、それを政治的でなく、文化的側面から働きかけるのです。
したがって、ただ書類を作って手続するのではなく、自分たちも現場に入り込んで、一緒に汗をかかなくてはならないというのが、この会社に与えられたミッションであると理解しています。
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