インタビュー

フランス政府観光局局長 カトリーヌ・オーデン氏 スペシャルインタビュー

2008.04.10

印刷用ページを表示する


双方向ツーリズムによる観光戦略

在東京フランス政府観光局の局長としてフランスの観光PRに務めている、カトリーヌ・オーデン氏にインタビューをしてまいりました。外国人旅行者受入数世界一を誇るフランスの観光戦略や、そこから学ぶ日本の観光のあり方などをお伺いしてまいりました。

%e5%9b%b31

 

Q1.オーデン氏の簡単な経歴と日本との接点についてお教えください。

最初はフランス政府観光局のニューヨーク支局に配属されていました。そちらに10年近くいたあと、東京に来ました。東京でも10年近く勤務した後、シンガポールで3年、その後再び東京に来て、今2年半ほどになります。日本は大好きで、日本に来ることができてとてもうれしく思いました。

日本を初めて知ったのは小学校の地理の授業で、その時から日本に興味を持つようになりました。初めて日本に来たのはニューヨーク支局から東京支局に異動になったときですが、当時私のような若い女性が在東京フランス政府観光局のNo.2の座につくということは難しいのではないかと言われました。また、日本にビジネスでやってくるのはとても大変だと聞いておりました。実は赴任前にバカンスで日本にくるタイミングがあったのですが、それでは日本の表面的な部分しか見ることができないと感じたので、その時はあえて日本には行きませんでした。特に赴任が決まっていたので、初めての日本にビジネスとして訪れることがその後日本を知る上で重要だと思いました。

このようにビジネスとして初来日いたしましたが、最初の印象は本などで見たとおりの美しい国だと思いましたし、ますます日本のことが好きになりました。これからももっと日本国内を旅行し、いろいろな発見をしたいと思います。

 

Q2.オーデン氏が現在取り組まれていることについてお教えください。

今年は日仏交流150周年の記念すべき年ですが、日本とフランス双方向からの観光キャンペーンを展開しています。私の仕事は日本人がフランスに来てもらえるようにすることですが、フランス人にもたくさん日本に来てもらい日本を知ってもらいたいと思っています。ですので、今年のロゴは日本の半被とエッフェル塔を融合させたモチーフを使ったり、列車内の広告などでも日本の宮島とフランスのモン・サン=ミシェルを並べたポスターなどを使い、日本とフランス両方のビジュアルでお互い良いところをアピールしています。

また、150周年の特別サイトも作り、キャンペーンの告知やクイズなどを楽しめるようにしたり、今年はモバイル用のサイトも作成いたしました。あとはフランス広報大使を今年は、フジテレビキャスターの滝川クリステルさんと華道家の假屋崎省吾さんにお願いし、フランスのPRを行っていただいています。さらに 150周年記念ツアーというものを旅行会社さんに企画していただいて、特別イベントを盛り込んだり、パリ以外の土地で一泊することなどを条件としたツアーを制作していただきました。3月現在で18社25種類のツアーを取り扱っていただいています。

 %e5%9b%b32      %e5%9b%b33         %e5%9b%b34
                                                                                                    <モバイル用QRコード>

 

Q3.この宮島とモンサンミッシェルの並んだポスターはとてもインパクトがありますが、どのようにこのイメージは生まれたのでしょうか?

前の駐日フランス大使がスピーチで来年は150周年だという話をしていたときに、ぱっとひらめきました。お互いに呼びかけあうというイメージが浮かび、早速家に帰ってあり合わせの写真を並べて考えました。お互いの観光地や象徴的なものを並べ、「私は行きました。」「あなたは行った?」というように相互に問いかけるイメージになっています。イメージが出来上がった後は、いくつかのデザイン会社に声をかけコンペを開いたのですが、ある会社がこのように一枚の写真のなかに二つの写真を融合させるというアイデアを提案し、ビジュアルとしてもきれいですし面白いと感じましたので、こちらに決定いたしました。

 

Q4.JNTOやフランス大使館との連携はどのようになっているのでしょうか?

だいぶ前から150周年記念に何かやりましょうということは決まっていましたので、フランス政府観光局では観光に関してのみになりますが、各機関と協力してできる範囲のことを行っています。また、今年のように双方向でのキャンペーンを行うということは初めてですので、とてもユニークなコンセプトだと思います。JNTOさんにも前からこの双方向キャンペーンの企画を持ちかけていましたので、予算等うまく調整し、始めることができました。また、毎年国土交通省で各国との交流年というのを定めるのですが、今年はフランスが選ばれ、日仏観光交流年として補助金等も出ますので、より一層力を入れてキャンペーンを行うことができるようになりました。

 

Q5.キャンペーンを始めてからの反応はいかがでしょうか?

4月後半から列車内でポスターを貼り始めたのですが、見ていただいた方から早速メールや電話等で「とても良いですね。」「すごくきれいですね。」というようなお言葉をいただいています。また、いくつかの雑誌でこのキャンペーンの広告をぜひ無料で掲載させてもらいたいという話をいただきました。今まではそのようなことはなかったので、このポスターのビジュアルや評判がとてもいいということを感じています。メインの写真は宮島とモン・サン=ミシェルのものになりますが、その他にもいくつかパターンを用意しております。それらもとても評判がいいので、私どもの公式ウェブサイトでぜひ皆さんもご覧になってください。

%e5%9b%b35

 

 

Q6.話は変わりますが、フランスが観光客数世界一である理由は何だと思いますか?

フランスには大きな魅力が二つあると思います。
一つは多様性です。景色や歴史、文化、料理など地方ごとにそれぞれ違い、一つの地方が一つの国といえるぐらいバラエティに富んでいます。「アールドビーブル」と言って、「生きることのアート」といいますか、おいしい料理を楽しむことであったり、美しいものを見ることやゆっくりとした時間を過ごすなど、人生を楽しむための多様なニーズを受け入れられる環境がフランスにはあると思います。
そしてもう一つはエッフェル塔やモン・サン=ミシェルなど、はっきりとした観光イメージがありますが、そういったものを生かして使うことができるのもフランスならではだと思います。例えばエッフェル塔は毎日定時になると、きらきらとイルミネーションが瞬き、それは本当にきれいです。また、美術館や宮殿などではコンサートを開くことがあり、「こんなところで、こんなことを?」というようなユニークな発想で名所旧跡を活用し、観光客の方たちをもてなします。
また、フランス人はとっつきにくいようなイメージを持たれがちですが、本来人をもてなすという気質のある人種だと思います。実際会ってみるといい人が多いですし、外国人に持たれているフランス人のイメージと本当の姿は大きく違うと思います。また、フランス人の態度も訪れる人がどのように接するかによっても違うのではないかと思います。先入観を持たずに接してもらうことで、フランス人も自然な姿を見せてあげることができると思います。

 

Q7.フランスの観光戦略について教えてください。

常に国外にプロモーションをしていくことが重要で、フランスの観光イメージを積極的に発信しています。フランス政府観光局は海外に約30の支局を持っていますが、それぞれの地域において、雑誌やテレビ、インターネット、電車内の広告などの様々な場所での広報活動を行っており、それによりフランスの情報をいたるところで手に入れることができます。また、PR活動を単に行うのではなく、その国や地域のことをよく知ることもとても大切です。その国や地域の人たちの生活や習慣を知ることで、特性やニーズを捉え、より効果的な情報提供をしていくことができます。そして、マーケットごとにガイドラインを設けることで、的確なプロモーションを展開できる体制を整えています。また、フランスでは5年ごとに観光政策を立てており、中期的なプランで見直しを図っていますが、ニーズに合わせたより有効的な政策を打ち立てていくために、各地域で得た情報や新しいプロモーション手法など常にアップデートを行っています。

(Part 2へ続く)

 

最新のインタビュー