インタビュー
シンガポールは日本ブーム
NTOシンガポール観光宣伝事務所の所長を務める冨岡秀樹氏にインタビューをいたしました。アメリカの大学を卒業後JNTOに入り、様々な経験を積まれた後、シンガポール事務所の設立に携られました。事務所立ち上げの苦労や、現地から見た日本の様子など詳しくお話いただいておりますので、ぜひともご覧ください。
Q1.シンガポール事務初代所長である冨岡さまの過去の経歴について簡単に教えて頂けますでしょうか?
1989年、アメリカの大学卒業後、当時のJNTO(国際観光振興会)に就職しました。就職のきっかけですが、特に旅行業界に就職したいといった思いがあったわけではなく、なんとなく外国人が日本に来て、文化の違いや食べ物に驚いたり、感動したりしているのを見るのがすごく好きで、海外の人に日本をもっと紹介したい、知ってもらいたいといった気持ちがあったと思います。その気持ちは今も変わりません。
現在のJNTOロゴは日本列島をかたどったカラフルなものに変わっていますが、当時のJNTOのロゴは紺色の富士山のマークで、富士の裾野にJNTOと入っていて、感動したのを覚えています。
入社3年少々で、最初の赴任地となるロサンゼルス事務所に派遣されました。1992年当時はロス暴動の直後で街のあちこちに黒焦げのあとがあり、唖然としたことを覚えています。また、着任1年後にはノースリッジの大地震も経験しました。
1997年、ロサンゼルスから帰国後、4年半にわたりJNTO組織の中にあるJapan Convention Bureauという部署で国際会議の誘致に携わりました。ここでは、著名な大学の教授、医師、研究者といった方々に直接お会いして話が聞けるといった光栄に恵まれ、充実した4年半でした。また、日本で国際会議を開催することがどれほど大変なことか理解できたように思います。
2003年JNTOが特殊法人から独立行政法人に変わる変革の時代を挟んで経理部、管理部といった部署をまわり、大きな組織改変に係って大変苦労しました。これからもっと苦しい時代があるかもしれませんが、過去20年で一番苦しい時代でした。
その後、2005年4月からバンコク事務所で約1年、訪日プロモーションの仕事をしながら、シンガポール事務所の設立準備を行い、2006年5月、当時の北側国土交通大臣の列席のもと、めでたくシンガポール事務所の開設にこぎつけることが出来ました。それから2年、今はシンガポールにどっぷりと浸かっています。
<経歴>
氏 名:冨岡秀樹(とみおかひでき)
出身地:京都市
生年月日:昭和39年(1964年) 4月3日生 年齢44歳
出身大学:平成元年2月 米国ミネソタ州立大学 文学部 英語学科卒業
<職歴>
平成元年4月 (特)国際観光振興会入会
平成4年8月 JNTOロサンゼルス観光宣伝事務所次長
平成9年3月 国際コンベンション誘致センター
海外誘致部 マーケティング課
平成13年11月 経理部 財務課
平成15年10月 (独立行政法人)国際観光振興機構となる
管理部 管理グループ
平成17年4月 JNTOバンコク観光宣伝事務所次長
平成18年3月 JNTOシンガポール観光宣伝事務所長
平成20年6月 現在に至る
Q2.シンガポール事務所の立ち上げ時の様子を教えて頂けますでしょうか?
2005年の初頭、管理部からバンコクへの赴任命令が下りました。自らずっと欧米派だと思っていたので、いきなりのアジア事務所赴任命令には、少々戸惑いがありました。家内には2日ほど言えずに黙っていましたが、理事長決裁まで済んでいると聞いていたので、覚悟を決めました。また、その背景には 2006年にはシンガポール事務所を立ち上げるという未知なる挑戦もしてみたかったという理由もありました。しかしながら、実際にはバンコク事務所で通常の訪日PRの仕事をしながら、国を隔てたシンガポール事務所立ち上げの準備は結構苦労しました。
何度かバンコクからシンガポールに出張してきて、事務所候補の物件を当たったり、設立のための諸手続きをしたりと、また、2006年の2月半ば JETROビジネスサポートセンター内に借りた仮事務所では、2週間ほどたった一人で心細かったです。雨季はとっくに過ぎているはずなのに、度々夕方になると急に空が暗くなって、雨が降り始めた窓の外を眺めていたのを思い出します。翌月には待望だった助っ人の次長が派遣され、シンガポール人のスタッフも出来、やっと事務所らしくなってきました。
本事務所の内装もぎりぎりまでかかりましたが、4月下旬の引越しまでに何とか終えることが出来ました。いよいよ5月、北側国土交通大臣をシンガポールにお迎えして、プラザシンガプーラというショッピングモール前の広場で開所記念イベントを開催しました。当地の旅行業協会からも祝福され、何とか開所にこぎつけることが出来ました。
Q3.シンガポール事務所の具体的な役割をご紹介頂けますでしょうか?
表向きバンコク事務所担当地域以外のアセアン全般のマーケットを担当するということになっていますが、JNTO現状予算、人員ではなかなか大変です。VJCでは新興市場として調査を始めているマレーシアやインドがありますし、インドネシアもインドとほぼ同数の人たちが訪日しています。これらの有望市場をシンガポールからマーケティングするためにはそれ相応の予算と人員体制が必要です。
いまのところ、当地でのマーケティングに集中して事業推進に当たっています。幸い日本の受け入れ側でも、昨今のシンガポールからのお客さんの伸びに関心を持ってくださるところが増えてきましたので、当地でのセミナーやtomioka6.jpgプロモーションイベントのお手伝いをしたり、VJC事業としてNATAS旅行フェアに出展したり、訪日教育旅行やインセンティブ旅行の誘致を目的とした各種セミナーを実施したりしています。
また、今年はウェブ上でのフォトコンテストやクイズを行う訪日キャンペーンや、市内を走るバスを媒体とした広告も打って当地での訪日旅行需要を喚起しようとしています。最後に忘れてならないのは、訪日ツアーを日々販売してくれている当地のエージェント各社です。常によい関係を作り、少しでも訪日ツアーを販売していただけるよう、できる限りの支援をしています。
Q4.シンガポールから日本へのアウトバウンドの現状(旅行者数・トレンド)について教えてください。客層や旅行形態、旅行プラン等もお教えいただけますと幸いです。
とにかく国土が小さいためか、シンガポール人は旅行が大好きです。きちんと有給休暇をとって、旅行に出かける人々がたくさんいます。人口450万人程度(そのうち外国籍が100万人以上と言われる)の都市国家で、陸路での旅行を含めると年間960万人もの人がマレーシアに渡り、550万人以上の人が海外旅行をしています。
シンガポールからの上位訪問国としては、マレーシア、インドネシアに次いで、タイ、中国、香港、オーストラリア、台湾、米国、日本となっています。訪日旅行に限ると、事務所開所前の2005年の来訪者数は9万5千人弱。2006年に初の10万人を突破して115,870人となり、2007年には一気に151,860人を記録。開所前の2005年に比べると61%の伸びとなりました。
シンガポールからの訪日は、統計上7割以上が観光目的で、大きく分けて学校休暇時期の子供連れと、それ以外に別れると思います。毎年ピークを示すのが6月と年末で、特に学年の変わり目となる11月、12月の学校休暇の時期には旅行客が集中して航空座席が足りなくなるほど、多くの人が日本に来てくださっています。これらの時期は丁度日本が閑散期となるよいタイミングで、空き室を埋めてくれる重要なマーケットであることを日本のインバウンド関係者には覚えておいてほしいと思います。
人気の旅行地としては北海道、東京近郊、関西周辺が主な訪問地です。すなわち、観光地として見所のある自然があり、食事も美味しく、ショッピングが楽しめるところというのが絶対条件になります。また、子供連れの場合はディズニーランドやユニバーサルスタジオ等のテーマパークも欠かせない場所となっています。
また、最近では学校休暇にとらわれない富裕層やシニア層の訪日旅行も増えてきていると思います。政府の高官も結構プライベートでも訪日しているようです。
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