インタビュー
日本の旅館の存在を“文化”として世界へ発信
プロフィール
1970 年5 月9 日兵庫県西宮市生れ。
約15年に渡る英国の高級ホテルチェーンでの勤務を経て、世界各国の富裕層旅行関係者の人脈をバックに、2004年に日本で初となる高級旅館コンソーシアム「ザ・リョカン・コレクション」を発足し、海外マーケットにおいて加盟旅館のマーケティングやPRを推進し、海外の一流ホテルチェーンを凌ぐブランド構築を目指し活動している。
経済産業省事業であるラグジュアリートラベルマーケット委員会にも事業立ち上げ当初より事務局長として参加、昨今ではツーリズム関連に留まらず、海外に向けた日本発高級ブランドや伝統工芸品、地方自治体等の海外富裕者層に向けたPRやマーケティングのコンサルティングも手掛ける。
目次
- 日本の旅館は世界的に稀有な存在。そんな魅力にひかれてホテル業界から転進
- 海外富裕層の旅行者は、旅館が持つストーリーに興味を抱く
- アートや食など業界の枠を超えた、旅行のプロモーションが今後の課題
日本旅館は世界的に稀有な存在そんな魅力にひかれてホテル業界から転進
村山
まずは御社の事業概要からお聞かせいただきますでしょうか。
福永
大メイン業務は「ザ・リョカン・コレクション」の運営です。これは日本初の海外マーケティングを目的にした日本旅館コンソーシアム(組合・連合)で、小規模な旅館が集まり、個々ではなかなかできない全世界へ向けた営業、プロモーションを行い、さらに外国人受け入れのためのノウハウを提供する組織です。現在では約1万2千人の外国人富裕層の会員があります。
そして、もうひとつが、コンソーシアムの活動を通じ、加盟旅館一軒一軒が外国人を効果的に受け入れ、経営の安定化を図る目的の事業のほか、外国人旅行客の方が日本旅館のほかに、日本の楽しみ方をご提供するコンシェルジュ事業。単純に観光地のご案内をするだけではなく、富裕層の方々が求める”一生に一度の体験”を意識した付加価値の高いサービスを提供する「RPIコンシェルジュ」を運営しています。
さらに、このような業務経験を通じて培ってきたノウハウをベースに、海外のホテルチェーンや各省庁、地方自治体に対するコンサルティング業務を行うという、3本柱にて活動しています。
村山
日本の旅館だけに特化したコンソーシアムサービスは、オンリーワンのビジネスモデルのようにお見受けいたしますが、どのような経緯で起業するに至ったのでしょうか。
福永
元々はホテルマンとして、イギリスのホテルチェーンに勤務。イギリスやシンガポールなどで世界各地のホテルの立ち上げに携わってきました。海外を渡り歩いて気づいたのが、日本のホテルマンが世界に進出している例もなかったし、そもそも日本のホテルの存在感が世界であまり認識されていなかったこと。
サービスやホスピタリティの面においては、間違いなく世界レベルであるはずなのに……。
ホテルマンとして、”私たちの日本はこんなものではない”といったジレンマのようなものを感じていたんです。
村山
なるほど。海外から日本を見ることで気づいたということなのですね。
福永
そうです。そこで、改めて日本の宿泊産業を見直してみたのです。すると日本の旅館というのは、ホテルの8倍である約6万5千軒(2004年の開業時現在)という規模があり、それこそ1300年も前から続いている伝統産業のひとつ。しかも大きな運営会社や組織的なバックボーンもなく、代々家族経営で伝統を守っているというケースが多い。
世界的に見ても稀有な存在であるにも関わらず、海外の方にはその素晴らしさが理解されていないのでは、と思ったのです。
村山
そして、起業を決意されたわけですね。
福永
当初はそんなつもりはありませんでしたが(笑)。
ホテルに勤務しながら多くの旅館を回り、様々なヒアリングを重ねていくうちに、どんどんその魅力に取り付かれていきましたし、欧米のホテル勤務が長かったせいか、逆に日本人としてのアイデンティティを強く意識するようになったのです。
そして何とかしたいという思いが強くなり、ヒアリング終了後にビジネスモデルが出来上がった時点で起業を決意したのです。
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