インタビュー
創作舞踊、侍体験、和的エンターテイメントを外国人に広める!
訪日外国人旅行者の間で、サムライや忍者、城、着物といった和の文化素材をからめたエンターテインメント体験が人気という。ただし、必ずしもどの施設でも集客に成功しているわけではない。では、成功の秘訣は何なのか。浅草で外国客向けのサムライトレーニングや変身スタジオなど10を超えるコンテンツを提供している日本文化体験処「JAPAN CULTURE EXPERIENCE TOURS 夢乃屋-YUMENOYA-」を運営する角田知弘氏の自由闊達な取り組みを聞いた。
目次:
変身スタジオについて
サムライトレーニングというのは
サムライ体験は外国人にとってどこが面白い
集客のためにどのような努力をされていること
1:まず変身スタジオについて教えてください。
浅草にスタジオをオープンしたのは、昨年(2015年)11月。ここでは外国客に自分の好みの着物を選んでもらい、着付けをしたあと、その場で撮影します。いま(取材日:4月下旬)いらっしゃっているのは、アフリカ系の女性ふたり。カタール航空のCAさんで、フライトの合間の休日を使って浅草に来たそうです。
写真は、南アフリカ出身のポーシャさん。彼女には濃い色の着物が映えます。ご本人もとても満足だそうです。
最初から写真スタジオを始めようと思っていたわけではなく、浅草で(後述する)サムライトレーニングを始めたところ、サムライ姿や和装に身を包んだ記念の写真に撮りたいというリクエストがあり、それならと着物を用意して、撮影だけのサービスを始めたら、特に女性客のニーズにはまったのです。着物に着替えて撮るだけでなく、着物を着て人力車に乗ってまちを走りたいというリクエストもあり、それもすぐに実現することに。とにかくリクエストがあれば、即実行。毎日が試行錯誤の連続です。
集客は、提携旅行会社や世界最大のツアーのマーケットプレイスとなっているインバウンドメディアを通して予約される方もいます。身近なところでは、浅草にある人力車と提携してのご紹介。彼らに「着物を着て写真を撮りませんか」と声をかけていただき、我々は「着物を着て人力車に乗りませんか」と相互送客し合っているのです。外国客にとって人力車に乗ること自体がアトラクションですが、どうせなら着物を着て乗りたいという人もいます。
2:サムライトレーニングというのは、どんな内容ですか。
サムライトレーニングというのは、サムライとしての所作や礼法、刀の抜き方、斬り方、しまい方を学び、後半で殺陣や立ち回りを体験する約1時間のコースです。衣装の着替えから始まり、終了後に流派公認の認定証を渡します。
講師をしているのは、金沢の創作日本舞踊孝藤流(http://www.takafujiryu.com)の剣舞のスタッフです。「JAPAN CULTURE EXPERIENCE TOURS 夢乃屋-YUMENOYA-」は、孝藤流がプロデュースする日本文化体験処のブランド名で、孝藤流のマネージメント会社である弊社(株式会社バンリーエンターテイメント)が運営しているのです。
弊社では、もともと創作日本舞踊孝藤流としての出張公演を国内に限らず、海外でも行っていました。今年2016年に和のパフォーマンス集団「JAPAN TRADITIONAL ENTERTAINMENT夢乃屋-YUMENOYA- Produced by 孝藤右近-UKON TAKAFUJI」を設立し、創作日本舞踊孝藤流二代目である孝藤右近さんを座長とする殺陣・剣舞・日本舞踊などを織り交ぜた侍・花魁ショーを展開しています。そのひとつの例が、銀座インバウンドレストラン「どすこい」での出張ショーです。7月下旬には成田空港でも花魁道中ショー公演をします。
※詳細は、やまとごころ特集レポート「第25回 なぜサムライは外国人観光客の心をつかむ? 人気の秘密を探ってみた」
(https://yamatogokoro.jp/report/2016/report_25.html)参照。
実は、弊社のサムライトレーニングは、今年5月4日、TBSテレビのバラエティ番組『あさチャン』で紹介されました。
お笑いコンビ「パックンマックン」のパトリックさんが夢乃屋を訪ねるという設定でした。
サムライトレーニングに参加する外国客の国籍はさまざまですが、欧米客の割合が高く、年代は20代から30代後半、家族やカップル、男友達同士などいろいろです。最近はASEANのお客様も増えています。
先日、NBAワシントン・ウィザーズに所属するブラッドリー・ビール(Bradley Beal)さんも夢乃屋を訪れました。講師は、創作剣舞橘一刀流の家元でもある孝藤右近さんです。楽しんでいただけたようです。その他富裕層の観光客も来店されています。
3:サムライ体験は外国人にとってどこが面白いのでしょうか?
どこの国でも外国客が足を運ぶエンターテインメントショー、たとえばハワイのポリネシアンショーのようなものがありますが、日本にはそれらしい、これぞというものがない。まずはそういうエンターテインメントの場をつくれば、外国客に受けるのではないかと考えました。
でも、ただ観るだけではなく、体験型であることがポイントだと思います。実際、外国客の多くは、刀を手にすると、闘争心剥き出しというか、童心に返るところがあります。きっとトム・クルーズ主演映画の『ラストサムライ』のイメージが頭に浮かぶのではないでしょうか。
弊社の運営するサムライトレーニングは、真剣を使った居合いなどをする訳ではなく、時代劇や舞台で使用する竹光という模造刀を使い、気軽に楽しみながら体験できるライトな内容になっています。しかし、参加者の中には具体的な質問が寄せられ、それに答えると、すごく喜ばれます。
たとえば、「なぜ刀を鞘に納めるとき、刀を見てはいけないかというと、斬られる可能性があるからだ。すきを見せてはいけない」。そう説明すると、場は盛り上がります。「正座の礼や居合いの作法には、それぞれ理由がある」と話すと、面白がって聞いてくれます。
4:集客のためにどのような努力をされていますか?
もともと孝藤流は海外での出張公演のとき、現地の方からワークショップをやってほしいという話がよくありました。
やはり、サムライ体験というのは、海外で反応がいいのです。それならハワイやニューヨークにトレーニング場を出店しようかという話もあったのですが、インバウンドの時代になり、海外に打って出る前に、まず国内で外国客向けのサムライ体験の場をつくってみようと考えるようになりました。
ちょうどその頃、大手旅行会社のHIS様が都内にいくつかのツーリストインフォメーションを開設。そこでは、単に観光案内をするだけでなく、都内のさまざまな体験ツアーを販売しようとする取り組みが始まろうとしていました。
hisgo
http://www.hisgo.com
ちょうどその頃、私はある方の紹介でHISのインバウンド担当者と知り合い、サムライトレーニングを共同企画として立ち上げることになりました。HISも積極的にネットやカウンターでサムライトレーニングを販売してくれることになったのです。とてもラッキーだったと思います。
集客の秘訣ということですが、HIS様との協力関係や人力車や近隣の観光施設と組んで相互送客を行う、各種インバウンドメディアに掲載することなどです。やり方は効果測定をして常にアップデートしています。
サムライトレーニングも、当初は3時間くらいかけてみっちりでやっていました。トレーニングが終わったあと、外国客にお茶やお菓子を出したり、彼らが次に行きたい場所をネットで検索して探してあげたり、コンシェルジュのようなもてなしもしていました。
客が増えていくうちに、もう少しコンパクトに内容を絞る必要を感じたので、いまは1時間のコースにしています。そのくらいが外国客にとってもちょうどいい長さという判断です。
今後は都内の宿泊施設とのコラボレーションを始めていっています。また、オプショナルツアーコンテンツをもっと増やしていき、これから大阪、原宿などにて店舗展開していきます。
JAPAN CULTURE EXPERIENCE TOURS夢乃屋-YUMENOYA-
〒111-0032 東京都台東区浅草1-36-8 ヴェニス2F
http://www.tokyo-samurai.com/
取材後記:
もともと持っている孝藤流という日本舞踊がベースにあり、それをひと工夫するだけで、インバウンドの価値を持った。しっかりとした型があるから、対応できたのだろう。日本のオリジナリティーを世界に発信する取り組みが始まっているのだ。
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