インタビュー
タイ人が携帯電話を使って日本でしたいことは何か?
訪日外国人が感じる不満は日本の通信事情。世界では差換可タイプSIMカード方式がスタンダード。今や水や電気と同じぐらい重要インフラになった携帯通信も訪日旅行に欠かせないものだ。訪日外国人が増加し、日本でもやっとSIM方式も始まった。
日本国内独自の携帯電話システム事情ゆえ、受入側のSIMやフリーWIFIのノウハウ蓄積や慣れがまだまだ不足している。今回は、訪日者数の伸び率が高く、実リピーター率70%を誇るタイ人について、「訪日外国人が携帯電話を使って日本でしたいことは何か」を探る。タイでSIMの販売に携わるジャパンエモーション社の村上浩之社長にタイの事情をうかがった。
目次:
ジャパンエモーション社の概要
タイ人が旅先でネットに求めるものは?
日本にもフリーWIFI設置が増えているが、ユーザーからどんな声が?
今後はどのように展開したいか
1:貴社の概要を教えてください。
訪日タイ人向けに携帯SIMカード販売やポケットWIFIのレンタルをしています。日本での携帯電話業界の経験は15年ほどあり、タイでの携帯電話関連事業も10年行っています。携帯電話を使用するうえでの課題や不満そしてそれをいかに解消するかという蓄積を現在の訪日タイ人向けSIM販売事業に生かしています。
当社は訪日タイ人がタイとは違うシステムの日本の携帯事情にどれほど困らずストレスなく設定や接続が出来るかということに着目して販売およびアフターケアを展開中。
日本に到着しSIMを差し込んだ後の設定上の不明点は公開しているLINE IDや日本の事務所に常駐しているタイ人スタッフにタイ語で問い合わせることが出来ます。
このサービスが好評を得ていることは口コミサイトでの評価や販売提携をしている日系大手旅行会社を通して知ることが出来ます。また、リピーターの多さやリピーターが紹介してくれるご新規さんの増加によって当社でも実感できています。
ジャパネモーション社のタイ国内向けサイトトップ画面
2:タイ人が旅先でネットに求めるものは何ですか?
SNS、FacebookやInstagramを利用したい、がまず第一位です。楽しい自分を自慢したい、友人知人を羨ましがらせたい、というもの。美味しそうな料理、地元特産品に触れる体験はもちろん、手軽に変身願望が満たせる着物やかつらを被るなどのコスプレ系は特に好まれています。その次が買い物。一般的な化粧品やお菓子はもちろん、特にここ5-6年のスマホの普及でタイ人の趣味は爆発的に多様化し日本での買い物も非常に細かいこだわりを持ったものになってきています。
日本人にも知られていないような創業何百年という店をネットで探して注文し宿泊。そんなことも頻繁ですよ。
他は「静かに料理を吟味しながら食べるのも和食の文化の一環だ」という認識のもと、食事場所で子供を静かに座らせておくためにYoutubeを見せています・・・。
交通マナー周知が行き届いている日本では、車の運転も安心だということが知られており、空港からレンタカーでの移動も増えてきています。このケースでは運転中に現在情報を確認、という使い方になりますね。
3:日本にもフリーWIFI設置が増えているが、ユーザーからどんな声が?
まず日本のフリーWIFIで、一般の日本人および外国人消費者に難しいのがSSID、ユーザーネームやID設定や入力です。
ここに手間取って観光すべきものが見られなかった、SNSで挙げたいものが上がらなかった、そして不満やストレスを感じる。これでは本末転倒になるうえ、場所を移動するたびに設定するストレスも当然予想されます。タイ人訪日旅行者に対し「日本を再訪するか」という出国時アンケートでは実に90%が再訪を希望しているがここで「意外と不便だった」というコメントは携帯電話にまつわる事例が多いですね。
こういう事情によりフリーWIFIがあっても結局使わなかった、という人が多いようです。当社ではこれらを「つなげる困難、つながらないストレス」の解消は本当に大事だとみなし常時接続を目指して個別SIM販売、SIM設定時のストレス軽減を目指して、LINEや日本の事務所でのタイ人スタッフ常駐といった問い合わせ窓口設定サービスをしています。
4:今後はどのように現地で展開される予定でしょうか
日本は独自規格で携帯電話が発達したため、SIMやフリーWIFIに対するノウハウの蓄積はまだ厚いとは言えないと思っています。
当社では日本の携帯電話黎明期での蓄積、タイに進出して10年の蓄積と両国での対応が可能な背景があります。SIMばかりでなく基本的には団体行動や複数デバイスをつなげる必要がある人のためにポケットWIFIのレンタル事業も行っています。
アセアンでも随一の親日国と言われるタイからの訪日、他外国からの短期訪日人気はまだまだ衰えることないと見られますが、旅行にほとんど不満はないのに「ハイテクの国日本で外国人にとって意外と不便な携帯事情」というのをもっと簡易性利便性を高めていけたらと思っています。
そしてその点を改善したいと同じように思い、訪日外国人向け携帯電話関連事情に興味がある企業は当社との協業、共同経営、出資、様々な形でタイでの当社の経験をベースにタイおよび他の国でのより堅固な基礎に基づく素早い事業展開も可能になるでしょう。訪日外国人がより楽しく安全に日本の旅行を楽しめて事業者にも確実に利があるというものを目指したいですね。
ジャパンエモーション社
http://www.kaigai-keitai.jp/
取材後記:
在タイ15年の記者自身が日本へ一時帰国した際に携帯電話の使用で非常に右往左往し、つなげる苦労やつながらないストレスなどを体験したためこのサービスが訪日タイ人にとって非常に有効だろうという事は容易に想像できる。2016年もタイでまだまだ続きそうな訪日ブーム。日本の旅行を大いに楽しんで記憶に残しSNSで自慢して楽しむ、この縁の下の力持ちとしてSIMカードがさらに有用に活用されることを祈っている。
最新のインタビュー
日本一のインバウンド向けローカル体験を創ったツアーサービスMagicalTripが、未経験ガイド9割でも最高評価を獲得できる理由 (2024.07.26)
やんばる独自の文化体験を提供する宿の若手人材育成術「育てるよりも思いをつぶさない」の真意 (2024.04.26)
人口の7倍 62万人のインバウンド客が訪れた岐阜県高山市の挑戦、観光を暮らしに生かす地域経営 (2024.03.22)
国際環境教育基金(FEE)のリーダーが語る、サステナビリティが観光業界の「新しい常識」になる日 (2024.02.09)
パラダイムシフトの渦中にある観光業に経営学を、理論と実践で長期を見据える力をつける立命館大学MBA (2023.11.14)
2024年開講、立命館大学MBAが目指す「稼げる観光」に必要な人材育成 (2023.10.26)
【海外での学び直し】キャリア形成への挑戦、ホテル業界から2度の米国留学で目指すものとは? (2023.09.29)
広島にプラス1泊を、朝7時半からのローカルツアーが訪日客を惹きつける理由 (2023.08.04)
異業種から観光業へ、コロナ禍の危機的状況で活かせたMBAでの普遍的なスキルとは? (2023.06.09)
台湾発のグローバルSaaS企業「Kdan Mobile」の電子署名サービスは、いかに観光業界のDXに貢献するのか? (2023.05.17)
【提言】アドベンチャートラベルは「体験」してから売る、誘客に必要な3つの戦略 (2023.04.21)
世界一予約困難なレストランでも提供。北海道余市町を有名にした町長の「ワイン」集中戦略 (2023.04.14)