インバウンド特集レポート

城や社寺、古民家等を生かして地域を面的に活性化 「歴史的資源を活用した観光まちづくり」事業とは?

2024.03.12

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人口減少・高齢化社会の到来により、日本の半数の地域が消滅の危機にあるなか、特に地方部では、いかにして地域に根付いた固有の文化伝統を付加価値の高いサービスや商品に変え、インバウンド含めた域外から人を呼び込み、消費拡大につなげるかが重要命題となっている。日本には各地に歴史ある古民家や社寺などが点在し、「磨けば光る」観光素材が多いが、観光資源として十分に生かされていないのが現状だ。

そのような中、観光庁は、地域の核となる歴史的建造物を活用した宿泊・滞在型コンテンツを軸に、伝統文化等を活用して観光コンテンツを造成、魅力的なまちづくりを進める「歴史的資源を活用した観光まちづくり」事業を行っている。

この事業では、観光庁と専門家が地域の状況に合わせて必要な調査や支援を行い、個々の店舗や宿泊施設など単体の整備にとどまらず、DMOの設立や地元行政によるまちづくり計画の策定などにまち全体が取り組むことで、地域全体が利益を得られることを目指している。ここでは、過去の取り組みや現在行われている事業の内容、今後の目標などを紹介する。

▲歴史的資源を活用した観光まちづくりの取組イメージ(出典:観光庁)

 

2020年までに全国200地域で取り組みを展開

観光庁による「歴史的資源を活用した観光まちづくり」事業が始まったのは2022年度からだが、端緒は今から8年前に遡る。

2016(平成28)年9月、日本政府は「歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォース」を立ち上げ、文化財など歴史的資源の観光への活用について、関係省庁や民間の専門家による現状と課題の整理を行った。その結果を受け、内閣官房に観光庁・農林水産省が協力し、民間との連携による「歴史的資源を活用した観光まちづくり官民連携推進チーム」が設置された。

▲歴史的資源を活用した観光まちづくり官民連携推進チームを設置(出典:内閣官房)

このチームでは歴史的資源を宿泊・飲食施設などに活用し、地域活性化や観光消費につなげることを目指し、具体的には、「人材」、「自治体連携・情報発信」、「金融・公的支援」、「規制・制度改革」の4課題について関係省庁と連携して取り組んできたほか、運営するワンストップ窓口で、地域からの具体的な相談にオーダーメイドで対応してきた。地域金融機関や地方自治体に対する働きかけや法制度の改革も含めた各省庁との協議など、官民一体で取り組んだ結果、2020年には目標として掲げていた全国200地域以上での展開を達成している。

▲全国202の地域で歴史的資源を活用した観光まちづくりが展開された(出典:観光庁、2021年4月時点)

 

2022年度の歴史的資源活用の事業、調査とモデル化創出の2軸で展開

観光庁は2020年度から歴史的資源の活用に向けて、城泊や寺泊などの個別施設の整備からスタートした。2022年度からは、面的な取り組みへと広げ「歴史的資源を活用した観光まちづくり」という事業の一環として、8地域を対象に行ったモデル創出事業を行った。専門家によるアドバイスをもとに、地域経営体制づくりや地域の宝を活用した高付加価値化・ブランド化、経済効果の最大化に取り組んだ。

▼2022年度の事業報告と2023年度の事業の方向性についてまとめた資料
歴史的資源を活用した観光まちづくり事業 (高付加価値化及び経済・社会波及効果拡大に向けたモデル創出) ナレッジ集

 

2023年度は「事業化支援」が加わり、23地域で展開

2023年度も「歴史的資源を活用した観光まちづくり」事業が継続され、前年度のモデル事例創出事業を継続・拡大する形で取り組みを行っている。今年度は「モデル創出」に加えて、「事業化支援」事業が新たに加わり、取り組む地域は2つのカテゴリーに分けられた。

「事業化支援」は、観光まちづくり組織が存在している、もしくは今後1年以内に設立の見込みがあることが条件で、推進体制の構築や観光まちづくりの将来像の検討・共有等の基本方針、推進計画の立案等事業立ち上げ段階の「ゼロイチ」の支援が行われる。

「モデル創出」の対象となる地域は観光まちづくり組織が存在し、古民家等の歴史的資源を継続的に活用、開発する体制が確立していること、歴史的資源を活用した宿泊施設等の滞在拠点が整備されていることの2点が条件だ。主に既存の取組に対し、取組エリアの拡大や未活用資源の活用検討等を目指す地域が対象となる。

2023年度は事業化支援が14地域、モデル創出が9地域の計23地域が選定され、前者は1000万円の予算で地域内の組織形成や建物の調査、まちづくり計画の策定などが行われ、後者は2000万円の予算でコンテンツ開発やブランディングやプロモーションなどが行われた。専門家5名が23地域の全体統括を行い、その下にデータ分析、建築、法務など各分野に精通するコーチ18名(うち5名は全体統括と兼任)が地域の状況に応じてアドバイスや支援を行った。

  ▲統括・コーチが選定地域を視察する様子(右:福岡県添田町、 左:広島県竹原市)

 

2025年までに300地域、2030年までに400地域を目指す  

2023年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」では、歴史的資源を観光まちづくりの核として再生・活用する官民連携による取り組みについて、2025年までに300地域に拡大するとともに、地域が一体となって多面的に高付加価値化を目指す面的展開地域を50地域に行うという目標を掲げた。さらに2030年には400の取組展開地域、100の面的展開地域を目指している。

▲2030年までに全500地域を目指す(出典:観光庁)

続く記事では、2023年度の取り組み事例として、福井県若狭町熊川地区で宿場町での企業研修プログラムの開発を行った株式会社クマツグのモデル創出事業と、協議会の立ち上げや地域経営計画の策定等を行った京都の南丹市美山町北の事業化事業を紹介する。

▼モデル創出事業 株式会社クマツグの事例

歴史的資源を活用した観光まちづくりを活用して開発、福井県熊川宿による企業研修プログラム

▼事業化事業 京都 美山の事例
「守るべきは屋根の下のくらし」京都 美山かやぶきの里が模索する、持続可能な地域の在り方とは

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