インバウンドコラム
著者:嶋田 俊平
出版社:文藝春秋
本書は、山梨県北都留郡小菅村での地方創生の取組を中心に紹介した、株式会社さとゆめの代表、嶋田俊平氏著の書籍である。さとゆめは「ふるさとの夢をかたちに」をミッションに掲げ、日本全国で地方創生の伴走型コンサルティングを行う会社だ。
本書では、嶋田氏のこれまでの歩みが自伝的にまとまっているが、章の中盤からは、小菅村の住民を巻き込み「700人の村をひとつのホテル」にプロデュースした様子を中心に展開されている。
彼らの取組の軸となる考え方を先に知りたい方には、第6章「『さとゆめ』というプラットホーム ─「地方創生」新時代の組織のかたち」から目を通していただくとよい。ここでは、さとゆめの特徴「伴走型コンサルティング」の「伴走」について、3つのフェーズに分解し、各フェーズにどのような人材(素養)が必要なのかを分析している。
また、嶋田氏が創業時より意識してきた某ブランド論の話が展開されており、さとゆめブランドが短絡的な戦術ではなく、長期的な戦略として意識的に作られてきたこともわかる。その結果として、彼らの事業化プロセスが、取組の過程で「計画起点」から「人起点」へ転換していったという話も面白い。
人口減少により消滅可能性待ったなしの自治体が、今後さらに増えていく。どの地域も「人」がボトルネックになっていくことは間違いない。本書は、過疎地域における地方創生にむけた人材育成スキームを作る一助となるのではないだろうか。
文:株式会社やまとごころ 竹花 駿平
最新記事
今と未来の「日本」を考えるきっかけとなる一冊『観光消滅 観光立国の実像と虚像』 (2024.10.23)
持続可能な観光、旅の本質的価値を考え直すきっかけに『センス・オブ・ワンダー』 (2024.10.09)
東大生が徹底調査、日本の魅力再発見に役立つ『外国人しか知らない日本の観光名所』 (2024.09.25)
21世紀の産業革命が観光産業に与える影響とは?『データでわかる2030年 雇用の未来』 (2024.09.11)
観光先進国、訪日有望市場から学ぶ『物語 オーストラリアの歴史 イギリス植民地から多民族国家への200年』 (2024.08.21)
「歩く」から考える観光地域づくり『フットパスでひらく観光の新たな展開 あるく・まじわる・地域を創造する』 (2024.08.14)
若きホテル経営者から学ぶ思考法『クリエイティブジャンプ 世界を3ミリ面白くする仕事術』 (2024.07.24)
観光産業の現状と未来を考えるヒントに『堤康次郎 西武グループと20世紀日本の開発事業』 (2024.07.17)