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2022年の旅行動向、パンデミック前より意欲大「新しい体験」を求めて予算増加 —トリップアドバイザー

2022.02.04

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新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生以降、トリップアドバイザー(Tripadviser)では定期的に旅行者の意識変化や新たな旅行スタイルについて調査を実施してきたが、このほど、2022年の旅行動向と今後の展望について最新の分析結果を発表した。

調査はIpsos MORIと協力し、2021年11月1日~16日にかけてアメリカ、イギリス、オーストラリア、日本、シンガポールの5市場、計10390人の旅行者を対象に実施したインタビュー調査結果と、トリップアドバイザーの主要8市場(アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、日本、シンガポール)のデータ分析を組み合わせたもので、2022年は新しい目的地や旅行体験を求めて旅行に前向きな傾向が見えてきた。

(図表出典:トリップアドバイザー2022年の旅行動向:今後の展望)

 

2022年の旅行意欲、パンデミックよりも高い傾向

変異株が出現するたびに移動制限の強化と緩和が繰り返され、なかなか旅行予定が立てずらい状況が続いているが、それでも2022年にレジャーやビジネス、友人や家族に会うために何かしらの旅行に出かける可能性が高いと回答した人が5市場すべてで半数を超えた。シンガポールが89%と最も高く、次にイギリス85%、 オーストラリア79%、アメリカ78%、日本は最も低い58%だった。調査対象の5つの市場すべてで、2019年調査当時よりも2022年のほうが旅行意欲が高くなっており、旅行業界にとっては明るい材料といえそうだ。また、旅行前後の検査や自主隔離の手間を考えて、海外よりも国内旅行を選ぶ傾向は続いている。

提供:トリップアドバイザー

 

次の旅行で求められているのは、今までにない「新しさ」

今後の旅行プランを立てる際に何を重視するかの質問では、「行ったことのない場所を訪れる」、「新しい体験」、「レストランで外食する/新しい食べ物に挑戦する」ことが上位3つに挙がった。こうした「新しさ」を求める傾向は、これまでメジャーではなかった観光地にとってもチャンスであり、宿泊施設などにとっても新規顧客を獲得する絶好の機会といえる。トリップアドバイザーでは、今後1年間のマーケティング戦略を計画する上でこの点を念頭に置く必要があると指摘している。

提供:トリップアドバイザー

 

新しい体験を求めて旅行費用も高額に、アメリカでは2019年より3割増

このように旅行者が新しい体験や新しいグルメを求めて旅行を計画すると、旅行支出額にも変化が生まれてくる。今回の調査では、感染拡大前よりも贅沢な旅行をしたいと回答した人はアメリカで33%、シンガポールとオーストラリアで28%、イギリスで25%にのぼる。実際のトリップアドバイザーサイトの行動データによると、アメリカでは、2019年と比較して2022年には平均予約料金が29%増加した。オーストラリアでも16%上昇、ドイツ6%とシンガポール7%増加した。一方、コロナ禍で経済的な閉塞感が続く日本とイタリアは逆の傾向が出ており、2019年と比較して日本では30%減少、イタリアで19%減少している。

提供:トリップアドバイザー

より贅沢で目新しい旅行体験を求める旅行者ニーズに応えられるよう、受け入れる観光地やツアー会社は準備しておく必要があるだろう。

 

2022年のレジャー ビーチやドライブ旅行が人気も、セルフガイドにも注目

2022年に計画している旅行タイプとして、英米豪では約3割の人がビーチ滞在を計画しており、次いでドライブやキャンピングカーの利用、グランピングなども人気となっている。ショッピングもシンガポールでは38%が支持しており、日本では文化・観光を満喫する旅が46%と最も多かった。他には、グルメやワインといった食を目的にした旅、ウェルネスリトリートなどを希望する傾向も出てきており、密を避けて自然の中で過ごすことで、感染リスクを抑えながらリラックスできる滞在を望んでいる様子がうかがえる。

提供:トリップアドバイザー

また、今回の調査結果から、上記のような旅行タイプのほかに、2022年に旅行者が興味を持つと考えらえる分野の1つとして、セルフガイドの文化アクティビティに注目している。もともと専門ガイド付きツアーは人気があるアクティビティであったが、コロナ禍で、セルフガイドのニーズも高まりつつあるという。実際にイギリスでは、今後は専門ガイドツアーを感染前よりも多く利用したいと答えたのが20%に対し、セルフガイドツアーは25%もいた。アメリカでも同様で専門ガイドが22%、セルフガイドが33%と上回った。旅行者自身がゆったりと自分のペースで地域の魅力を深く学びたいという意向が表れている。

 

コロナ前より旅行の滞在日数は短縮傾向に

滞在日数については、トリップアドバイザーのホテル検索データによると、オーストラリア、シンガポール、日本の3市場では、2020年と2022年とでは若干日数が伸びたものの、2022年と感染拡大前の2019年と比較すると、8市場すべてで短縮傾向にあった。滞在日数の短縮を計画しているにも関わらず、かける費用は増やそうということは、次の旅はより贅沢で特別なものにしたいと考えている旅行者が多く存在していることを示している。

提供:トリップアドバイザー

また、今後もしばらくは続くウィズコロナ時代において、衛生・安全対策がきちんとされているかどうかが、宿泊先やレストランを決める際に重要なポイントであることも明らかになった。

提供:トリップアドバイザー

 

旅行分野での会員制登録サービスの台頭

外出自粛が続くコロナ禍では、映像コンテンツや音楽、宅配など多くの業界で有料登録サービスが普及したが、今回の調査では旅行業界においても会員制の登録プログラムに関心が高まっていることがわかった。アメリカでは回答者の17%が、既に旅行関連の有料登録プログラムまたはサービスに現在加入していた。今後加入を検討していると回答した人も 23%いた。イギリスでは25%、オーストラリアでは29%、シンガポールでは31%が旅行関連の有料登録サービスに現在加入中または加入を検討中と答えた。加入者を世代別にみてみると、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは18~34歳がボリュームゾーンなのに対し、日本では55~75歳が全体の45%、シンガポールでは45~75歳が30%と年齢が高い層が主流となっていた。住んでいる場所や年齢に関係なく、調査対象の回答者の大半は、適切なメリットがあれば、旅行関連の有料登録サービスに加入する意欲を示しており、今後、更なる普及が期待できる。

今回の調査では、パンデミックが旅行者にとってマイナスに働いただけではなく、新しい旅行先やセルフガイドツアー、有料の会員制サービスなどを模索するきかっけとなり、前向きな兆候も見て取れた。ウィズコロナの生活様式に慣れつつあるなか、旅行意欲は決して減少しておらず、むしろ次の旅行はより贅沢にリラックスして過ごしたいという旅行者像が浮き彫りとなった。

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