データインバウンド

欧州への長距離旅行の意欲を調査、ブラジル・アメリカは積極的

2022.02.28

印刷用ページを表示する



欧州各国の政府観光局の連合体である「European Travel Commission欧州旅行委員会)」*が、ブラジル、カナダ、中国、日本、ロシア、アメリカを対象に、今後旅行を予定している行18歳~70歳各1000人に対して、居住地域以外への旅行についてアンケート調査を行った。その結果、欧州への旅行を望んでいる人が多いことがわかった。

特にブラジル(63%)、中国(57%)、アメリカ(45%)で欧州への旅行を望む人が多く、ブラジルとアメリカでは欧州へ旅行したいと思っている人の割合がパンデミック以前のレベルに戻っているという。その一方で日本では長距離の海外旅行を希望している人はわずか23%にすぎず、そのうち欧州を渡航先に考えているのは15%だった。数は少ないものの、長距離旅行では欧州の人気が高いといえるだろう。

 

ブラジルとアメリカの長距離旅行への意欲はパンデミック前に匹敵

また、この調査では回答者全体の旅行意欲を指数化。長距離旅行センチメント(心理)指数としてグラフ化(下の図)、100を基準としてそれを越えると前向き、それ以下だと後ろ向きとしている。それによると2022年の長距離旅行に前向きなのはブラジル、中国、アメリカだが、欧州への旅行に対しては、ブラジルとアメリカはその指数が104とわずかにプラスであるものの、中国の欧州行きへの意欲は100を切っており、欧州行きの希望は大きいものの、現実的には後ろ向きなのがわかる。一方、ロシアと日本は長距離旅行にも欧州旅行にも否定的だが、日本は欧州には行きたい(99)が長距離旅行へは後ろ向き(79)と考えている人が多いのが興味深い。

▶︎長距離旅行センチメント指数
左から、ブラジル、中国、ロシア、アメリカ、日本で、棒グラフが長距離旅行に対する指数、折れ線が欧州旅行に対する指数

 

調査では年代別と収入別でも回答を得ており(下のグラフ)、全体を通して若い世代(18~34歳と35~49歳)は2022年に長距離旅行をする割合が高く(それぞれ、47%と38%)、50代以上は比較的少ないことがわかる。もっとも中国は例外で、50代以上が最も意欲的だ。また、富裕層では長距離旅行への意欲が高く、特にアメリカ、ロシア、中国で顕著だ。

▶︎2022年に長期旅行をすると答えた回答者

左よりブラジル、カナダ、中国、日本、ロシア、アメリカ、全体平均
上のグラフは世代別(18-34、35-49、50以上)、下のグラフは所得別(低、中、高)

渡航先のワクチン接種、コロナ対応、感染防止対策に注目

海外旅行の意欲を後押しするものとしては、ワクチン接種(29%)、渡航先がパンデミックに適切に対処していること(28%)、住民や旅行者の安全を守る健康プロトコルが実施されていること(28%)が三大要素と言えそうだが、国によって違いがあるのも興味深い。

たとえば、柔軟なキャンセルポリシーを重要視したのがアメリカ(22%)とカナダ(28%)、渡航前のPCR検査を挙げたのは中国(38%)やブラジル(40%)、入国規制の撤廃はロシア(45%)や日本(31%)が挙げている。

訪問先のタイプとして、1位に都会、2位にビーチリゾートを挙げた国が多く、アメリカ(都会:53%、ビーチ:40%)、カナダ(54%、27%)、中国(56%、51%)、日本(64%、41%)となっている。ブラジルは1位が都会(51%)、2位がいろいろな場所(49%)で、ロシアは1位がビーチ(41%)で僅差で都会(40%)だった。

最後に、ウェブ上で目にする旅行意欲をそそるトピックとして挙げられていた項目が、国によって異なり、興味深いので紹介しよう

・アメリカ:有名人の体験談、欧州が目的地のクルーズ旅行
・ブラジル:高品質の食事、セレブの旅行体験
・カナダ:サイクリングルート、目的地が複数ある電車の旅
・中国:中国人学生に人気の大学、インスタ映えする場所
・日本:ヨーロッパのフードマーケット、建築物
・ロシア:東欧の格安旅行、骨董市

今回の調査は欧州向けに行ったものだが、アメリカ、カナダ、ロシア、ブラジルの旅行者にとっては日本も長距離旅行の目的地となる。この調査を見ると、ワクチン接種など、コロナ禍における各国の対処方法も影響されるが、観光客に対する日本の入国規制が緩和されれば、インバウンドの回復も見込めると予測できるのではないだろうか。

*欧州旅行委員会(European Travel Commission)は1948年に設立された欧州各国の政府観光局の連合体。ヨーロッパ以外の長距離市場に観光地としてのヨーロッパを宣伝することを目的としている。

最新のデータインバウンド