データインバウンド
利用者の8割強が満足する航空機の旅、最優先するのはスピードと利便性ー2023年 IATA旅行者調査
2023.11.24
やまとごころ編集部国際航空運送協会(IATA)は、2023年世界旅客調査(GPS)の結果を発表した。それによると、旅行者が最優先するのはスピードと利便性であることが分かった。2012年から行っているこの調査だが、今年は世界200カ国、8000人の航空機利用者を対象としている。
飛行機を利用した旅の満足度8割超も、預け入れ荷物に悩みあり
航空機を利用した旅行の満足度について、旅客の82%が満足していると回答し、これは2022年の80%、2019年の75%よりも上昇している。では、予約、チェックイン、搭乗など、空港でのプロセスの中で最も満足度が低いのは? どれも満足度は比較的高いのだが、最も低いのは68%しか満足していない預け入れ荷物の受け取りであり、14%が不満を抱いていることも分かった。それが後述するエアタグの利用にも表れている。
それではここから詳細に見ていこう。
旅行計画においては「利便性」重視、出発地決定は、価格よりも交通の便
乗客は旅行を計画する際や出発地を選ぶ際に利便性を求めている。
出発地を選ぶ際に乗客が最も重視したのは、空港からの近さだった(71%)。これは航空券の価格(31%)よりも重要だった。例えば、東京の西側に住む旅行者が成田空港と羽田空港からのソウル便の料金を比べたときに、成田空港発のほうが安い場合が多いが、羽田発の便を選ぶといったことだろう。
また、航空機のチケットの予約の際、航空会社に直接予約することを好む乗客は、52%と過半数を超えた。そして、どこで予約しようと、利用者は、オプションやサービスの把握が簡単で、料金が一目でわかることを望んでいる。
また、料金の支払いでは、7つの異なる支払い方法のうち、最も人気があったのはクレジットカード/デビットカード(73%)で、デジタルウォレット(18%)、銀行振込(18%)が続いた。同時に、クレジットカードの利用には地域差が大きかった。クレジットカード/デビットカードは、中南米(85%)、ヨーロッパ(81%)、北米(74%)で最も普及しており、最も普及していないのはアフリカ(57%)だ。デジタルウォレットの普及率が最も高いのはアジア太平洋地域で、回答者の41%がデジタルウォレットの利用を希望した。次に多かったのはヨーロッパ(15%)と中東(14%)だった。銀行振込はアフリカ(36%)で最も好まれ、次いで中東(21%)だった。
いずれにしろ、62%の旅客が特定の支払い方法を選択した主な理由として「利便性」を挙げている。
「支払いは、販売の最後に行われる金銭的な取引としてだけでなく、商品提供の一部と見なす必要がある。顧客は、利便性と安全性を備えた好みの支払い方法を利用できることを望んでいる。市場はそれぞれ異なり、万能の答えはない。好みの支払い方法が利用できなかったり、複雑すぎたりすると、潜在的な売上が失われる可能性がある。 顧客が好みの支払い方法を利用できるようにすることが重要だ」とIATAの金融決済・流通サービス担当上級副社長であるムハンマド・アルバクリ氏は語った。
旅行円滑化へのニーズ、9割近くが出入国情報の共有に前向きな考え
複雑なビザ要件は、便利でデジタルなオンライン・ビザ手続きを望む旅行者を躊躇させる。さらに、空港での入国審査をより迅速に行うために、入国情報を共有することを望む旅行者も多い。
36%の旅行者が、入国審査要件のために特定の目的地への旅行を思いとどまったことがあると回答している。手続きの複雑さは、49%の旅行者が主な抑止力として強調しており、19%がコスト、8%がプライバシーへの懸念を挙げている。
ビザが必要な場合、旅行者の66%が旅行前にオンラインでビザを取得することを希望し、20%が領事館または大使館、14%が空港での取得を希望している。
87%の旅行者が、空港での到着手続きを迅速化するために出入国情報を共有すると回答し、2022年に報告された83%より増加した。
「時間のかかる複雑なビザ要件は旅行者を遠ざけ、目的地の経済から貴重な観光収入を奪う。各国がビザ要件を撤廃すれば、観光客数の増加によって経済が繁栄することは、これまでに何度も確認されている。ビザ手続きが簡素化されるだけでなく、空港での手続きがより迅速かつ円滑になるのであれば、旅行者は入国情報を共有する準備ができている。オンライン手続きの利用や事前の情報共有に積極的な旅行者を活用することは、常に双方にとってメリットのある解決策だ」とIATAの運営・安全・警備担当上級副社長ニック・カレン氏は語る。
空港での合理的な手続きと待ち時間短縮への期待大
空港では、スピードが命だ。乗客は合理化された手続きと最小限の待ち時間を望んでいる。手続きを迅速化するためにバイオメトリクスを使用することに熱心で、より多くのプロセスをオフサイトで完了することを好み、飛行機に乗る準備ができてから空港に到着したいと思っている。
乗客は、空港内での移動がこれまで以上に速くなることを期待している。機内持ち込み手荷物のみで旅行する場合、空港の入り口から搭乗ゲートまで30分以内で移動することを期待していると答えたのは74%で、2022年の54%から増加している。
また、空港では当たり前のようにある行列風景は最も避けたいものとして挙げられている。特に、搭乗時のゲートでの行列や保安検査場の行列を4割前後の回答者が嫌っている。
旅客は空港外でより多くの手続きを済ませることを望んでいる。45%の旅行者が、空港外での手続きとして出国審査を最重要視しているが、これは2022年の32%から増加した。続いてチェックインが33%、手荷物チェックイン(19%)がそれに続いた。
例えば、韓国では仁川空港行きの直通列車のチケットを持っていれば、ソウル駅でチェックイン、手荷物の預け入れ、出国審査までできる。また、ロンドンのヒースロー空港では出国審査が無人の場合が多く、その場合は審査なしとなっていた。
生体認証への信頼も高まっている。過去1年間に空港で生体認証を利用した旅客は46%で、2022年の34%から増加した。さらに、75%の乗客が従来のパスポートや搭乗券よりも生体認証データの使用を好んでいる。旅行中に生体認証を利用したことがある人のうち、46%が85%の満足度を報告している。データ保護は半数の旅行者にとって依然として懸念事項だが、個人情報の安全性が確認できれば、40%はバイオメトリック・ソリューションをより受け入れると回答しており、これは2022年の33%から増加している。
最後に手荷物の預け入れと受け取りについて、乗客はより柔軟な方法、さらに荷物の所在を把握することを望んでいる。67%が自宅での集荷と配達に興味を示し、77%が空港に着く前にタグを付けて預けることができれば預ける可能性があると答えた。また、自分の荷物を追跡できることへの関心も高まっており、87%が荷物を追跡できれば預ける意思があると答えている。旅行者の57%がエアタグを使用したことがあるか、使用したいと考えており、2022年の50%から増加した。これはコロナ禍で預け入れ荷物が行方不明になったことが大々的に報じられるなどした影響もあるのだろう。
「乗客は、手続きのために行列に並ぶ時間をなるべく少なくするためにも、テクノロジーの頑張りを期待している。そして、そのためならば率先してバイオメトリクス・データを利用したいと思っている。ただ、現在利用可能な安全な技術でそれを実現するためには、バリューチェーン全体および各国政府との協力が必要だ」とカレン氏は話す。
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