インタビュー
中国駐東京観光代表処・首席代表の王偉氏にお話を伺い、最近の中国の流行と日本が人気の理由について教えていただいたPart1。活発化する女性が引っ張る中国マーケットや、ブームになっていること、情報収集方法などを語っていただいたPart2。最終回となる今回は、中国市場からの集客方法のための具体策などを伺った。
中国市場を攻略するための情報発信
——上海に行った際にその急速な発展ぶりと共に驚いたのが中国のネット事情でした。「中国ではGoogleが使えない」「中国のみで使われているサービスが多い」は知識としては知っていましたが、実際に中国に行くとネットの使い勝手が違い戸惑うことだらけでした。逆に中国の方が日本に来る時にはやはり自身が使い慣れているサービスを利用するのではと思います。中国の方が旅行情報を収集するのに人気のサイトを教えてください。
中国最大の総合旅行サービスサイトであるCtrip(シートリップ)や、穷游网(チュンヨウ)の人気があります。
穷游网には、世界各国に旅行した人のブログが整理されています。たとえば東京で面白かった所、美味しかったお店などについて多くの人がブログを書いているので、それらを読んで情報を集めることできます。また、穷游网はサイト上でイベントをよくやっています。「日本で行くべき場所を紹介してください」と公募し、入賞者には賞金が支払われるというようなイベントには、多くの人が情報を投稿します。そうやって集められたネット上での評価を参考に、ホテルなどに点数が付けられていきます。
また、Ctripでは旅行した人が訪れたホテルやレストランの点数を付けることができます。これから旅行をする人は、このような情報を参考にしています。
——中国の方の情報収集はネットが中心ということであれば、集客する側はパンフレット制作よりもネットに力を入れるべきということでしょうか。
圧倒的にネットですね。最近の中国人は紙からの情報収集は、ほぼしません。名刺も紙で持たず、Wechat(ウィチャット)上で交換して済ませますので、私も名刺は日本に来てから作りました(笑)。
——中国の観光客に来てもらいたいと考えているエリアや店舗などは、何をしたらいいのでしょうか。
やはりネット上の情報を充実させることですね。その手法としては、Ctripや穷游网などに載せる。また、自社サイトの多言語情報を充実させることも大切です。
中国市場向けには、スーパーブロガーを通じた情報発信が非常に有効なやり方です。ネット上でブログを頻繁に書くスーパーブロガーに実際に現地に来てもらい、写真を撮ってもらいブログに書いてもらうと、多くの人に情報を届けることができ強い影響力があります。
中国の観光当局が国内でイベントをする際にも、例えば、スーパーブロガーを全国各地から50名集め、食事と交通と宿泊を提供することでネットに発信してもらっています。1回に200社を集めて説明会をするだけでは効果がなかなかあがりませんが、スーパーブロガーによる情報発信の方が、インパクトがあるのではないかと考え始めています。
——中国市場に影響力のあるスーパーブロガーはどうやって見つけたらいいのでしょうか。
スーパーブロガーは、Ctripや穷游网に連絡を取ってアレンジしてもらうこともできますし、スーパーブロガーを何人も抱えていてアレンジしてくれる会社もあります。スーパーブロガーには130万人のサッカー好きのファンを持っている人、ファッション、スポーツ、食事に強いなど、それぞれ得意分野がありますので、発信したい情報に合わせて選ぶ事も大切です。
——日本を訪れた中国の方は、どのような事に不便を感じているのでしょうか。
「都会から離れると交通が不便」「言葉が通じない」「パンフレットがネット上にない」。このような事に不便を感じています。特にネット上に中国語の情報を掲載することは重要です。どんなに素晴らしい観光地であったとしても、サイト上に情報がなければ、存在を知ることもないし、そこに行くまでのナビがなければ辿り着くことはできませんので。
——ナビとしては、具体的にはどのような情報が必要でしょうか。
例えば東京駅からどうやって来るかとか、その中でどうやって遊べるか、中国に居る人達に想像付くように情報を発信する必要があります。そのためには中国人が情報を検索する際に利用する百度(バイドゥ)や、腾讯(テンセント)のサービス上に情報を掲載しておく必要があります。
——日本はどんな事に取り組んでいくべきだと、王さんはお考えでしょうか。
日本は、中国人の渡航先1位だからと安心しているのではなく、もっと相互交流していくべきだと考えます。昨年日本から訪中した人は268万人ですが、その大半はビジネスが目的でした。
相互交流人口を増やすには、国と国との関係がちゃんとしているという前提のうえ、民間交流がとても大切です。民間交流には文化と観光の両方があります。たとえ政治的に何があっても、文化と旅行そのものに影響を与えないような関係を構築していく事が大切です。
——民間交流向上のために、どんなアイディアをお持ちでしょうか。
相互交流向上には、日本人観光客をもっと中国に呼ぶ必要があります。ーーそのための相互理解として3つの方向を考えています。1つはネットを利用して若い世代に向けたイベントの実施。2つ目はリアルの場での大きなイベントの開催。今年4月に新宿公園で開催した四川フェスには6万5000人、9月に代々木公園で開催したチャイナフェスティバルには15万人が集まりました。これらの規模をさらに大きくしたイベントを開催していきたい。3つ目は、東京だけではなく地方でのイベント開催です。
——地方でのイベントは、具体的にはどんな物になるのでしょうか。
例えば軽井沢などで、中国観光をテーマにイベントを日本観光観光関連団体や、中国大使館とともに開催できたらと考えています。イメージとしては鳥取で行われた「村跑」や新宿で開催したチャイナフェスティバルの地方版として市民会館などで開催し、日本の旅行会社にも来てもらい、そのエリアに住む日本人に来てもらう。そこに中国からも観光客も連れていって、お互いがその場で盛り上がるようなイベントが実施できたら訪中・訪日相互の交流になり面白いなと考えています。
——訪日中国人の数を増やしていくためにも、来てもらうだけでなく、行くことでの相互交流をしっかりとし両国の関係をしっかりと築いていくことが、本当に大切ですね。本日は、中国の今を知ることのできるお話をいただき、ありがとうございました。
→Part1:「中国人が日本を訪れる理由は“癒し”」
→Part2:「中国の旅行マーケットを引っ張る女性達」
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