インバウンド特集レポート
観光コンテンツとして、動物が注目されている。それも動物園の珍しい動物ではない。ある意味、日本のどこにでもいるタイプのものだが、その環境が珍しいのだ。世界に一か所という付加価値が手伝って、世界の動物好きがやってくるようになった場所もある。今号の特集では外国人集客の新たなキラーコンテンツ、動物に注目してみた。
フクロウを間近でみられるカフェが口コミで人気に!
トリップアドバイザーの全国人気ランキングでは、「アキバフクロウカフェ」が2016年に初登場で9位という躍進ぶりである。秋葉原駅の近くの雑居ビルの室内には、多くのフクロウがいて、それを目当てに外国人観光客も多くやってくる。
最近都内には、まったく別経営のフクロウカフェが出現するほど盛況だ。
今回、同じく秋葉原駅の反対側にある「アウルの森」というフクロウカフェを取材してきた。
こちら「アウルの森」のオープンは2015年4月と新しいが、SNSによる効果で、知名度が一気に伸びた。そして2店目の浅草を2016年6月にオープンさせた。いずれも外国人観光客が立ち寄るスポットを選んでいるのが特徴だ。
動物好きのオーナーが、フクロウの飼育が得意だったこともあり、地元の保健所に届出をしてカフェとしてやっていくことになった。現在、ここには60羽のフクロウが飼われていて、種類は約30であると同店の広報担当者。大きいタイプで、60cmぐらいから小さいタイプで15cmなどさまざまだ。
外国人の割合をスタッフにうかがうと、正確には集計してないが、肌感覚としては、3割は固いという回答だ。欧米系が多く、アメリカ人やスペイン人を見かける。他にアジアからも珍しくない。時間によっては、外国人だけのことも多々あるそうだ。
写真を撮る、フクロウに触れられる施設としてインパクトが高い。実際に楽しんでいる外国人客に話をうかがうと、アメリカからのカップルだった。海外にはこのようなカフェを見たことも聞いたこともない。ユニークな体験が魅力だという。秋葉原で検索したところ、このカフェを知り、立ち寄ることにしたそうだ。熱心にフクロウをなでたり、一緒に自撮りを楽しんでいた。
フクロウは、なつくわけでもないが、人を嫌がるわけでもない。軽くなででも決して騒がないのだ。
このフクロウたちは、なぜ人慣れしているのだろうか?
フクロウは順応性の高い生き物で、生まれたときから人と接することで、暴れることもないそうだ。ブリーダーと呼ばれる繁殖業者から購入している。最近は、別の経営によるフクロウカフェが登場したことで、差別化を図るために店内の装飾にも力を入れている。秋葉原なのに森の中にいるような気分だ。
スノーモンキーに世界が衝撃
世界で最も有名な猿、それはスノーモンキーだろう。日本ならどこにでもいる普通の日本猿だが、温泉に浸かることで、有名になったのだ。志賀高原に近い長野県山ノ内町にある「地獄谷野猿公苑」では、雪のなか、猿が温泉につかり、気持ち良さそうにのんびりする。そんな癒しの光景を見るために世界中からやって来るのだ。
海外メディアの報道、YouTube動画、実際に現地を訪れた外国人ブロガーたちの紹介により、認知度が高まり「スノーモンキー」という名前で親しまれるようになった。
なぜ、ここに猿たちが集うようになったのか?
50年ほど前、地獄谷の旅館の露天風呂に猿達が集まり浸かるようになった。しかし、猿達は気持ちよくなると風呂の中でフンをしてしまう。そのため、衛生面への配慮から、猿専用の温泉を作ることになった。人が猿との共存を大切にしようとする姿勢がルーツになっている。
海外に知られるきっかけは、スノーモンキーが1990年代から海外のメディアで取り上げられるようになったからだ。長野冬季オリンピックが契機だったそうだ。アメリカの「ライフ」という雑誌で取り上げられ、またイギリスのBBCの教育チャンネルで継続的に取材を受けた。
ちょうどその頃の日本は、オーストラリアからスキー客が増え、北海道のニセコに次いで、長野の人気も上昇していた。欧米豪からのスキーヤーは、1週間前後と長期で滞在し、スキー三昧の合間に、近隣の観光も楽しむ。善光寺、松本城などの歴史的・文化的なもの、さらに「スノーモンキー」というユニークなコンテンツが喜ばれるようになった。
今では外国人向けの現地発着のツアーもあり、例えば白馬から地獄谷野猿公苑を巡り、ランチ、最後に善光寺を訪れるというデイツアーだ。長野県としても、スノーモンキーは県全体のキラーコンテンツという認識だ。日本には、北海道や東北など、スキー場が多く、外国人にとっては、どこを選んでよいかわからない。その時「スノーモンキー」が、訴求ポイントになっている。
そして、最近意外な動物を求めて瀬戸内の島を訪れる外国人が増えている。それは…(次回につづく)
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