インバウンドコラム

【体験レポ】評価4.98の明治神宮モーニングツアー、訪日客の心をつかむ小さな工夫の積み重ねとは?

2026.06.11

飯田 千聖

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東京観光の定番スポットとして知られる明治神宮。その魅力は本殿だけではありません。原宿駅から一歩足を踏み入れると、都心とは思えない静かな森が広がり、ゆったりとした時間が流れています。

今回参加したのは、都内でローカル体験・現地ツアーを展開するJapan Local Experienceが催行する「Meiji Shrine Morning Walk & Brunch」。朝8時から約1時間半、明治神宮を散策しながら日本文化に触れ、その後カフェでブランチを楽しむツアーです。内訳は、境内散策が約1時間、カフェでのブランチが約30分。料金は5000円程度で、カフェでの飲食代は各自支払いとなっています。Airbnbでは4.98の高評価を獲得する人気ツアーです。

実際に参加してみると、単なる神社ガイドではなく、訪日客の満足度を高める工夫が、随所にちりばめられていました。

 

迷わないための徹底した事前案内、集合前から始まる体験

当日参加したのは、アメリカから訪れた家族4人でした。集合場所はJR原宿駅を出てすぐの案内マップ前です。

印象的だったのは、「迷わず来てもらうための工夫」が徹底されていたことでした。原宿駅周辺は出口も多く、人の流れも複雑なため、初めて日本を訪れる旅行者にとっては意外と迷いやすい場所です。

▲集合後、マップを見ながら原宿エリアや当日の流れを案内

このツアーでは予約直後、前日、当日直前と、詳細な地図付き案内を複数回送っているとのこと。朝の通勤ラッシュも踏まえ、余裕を持って移動できるよう案内しています。遅刻は他の参加者の体験にも影響するため、事前案内は少し大げさに感じるくらい丁寧に行っているそうです。

参加者にとって、体験は集合前から始まっています。特にインバウンド向けでは、不安なく体験を始められることも満足度を左右する重要な要素だと感じました。

 

なぜ8時なのか? 満足度を高める“朝の明治神宮”という選択

今回のツアーでガイドを務めるArisaさんに案内されながら、一行は明治神宮へ向かいます。

朝8時の境内は驚くほど静かでした。参道にはまだ人も少なく、木々に囲まれた空間をゆっくり歩くことができます。都心とは思えない穏やかな空気が流れていました。

▲朝の静けさと木々の空気が心地よい参道

この「朝」であることこそ、ツアー最大の価値のひとつです。

ツアーを主催するJapan Local Experience代表の木岡久能さんによると、欧米からの訪日客は時差ぼけで早朝に目が覚めるケースも多く、「朝に何をすればいいか分からない」という声をよく聞くといいます。実は、このツアーも最初から朝8時開始だったわけではなく、いくつかの時間帯を試した結果、最も満足度が高かったのが現在の時間帯だったそうです。

加えて、明治神宮は8時半を過ぎると団体観光客が増え始めます。人が少なく、早すぎもしない8時だからこそ、本来の魅力である静けさや森の空気感を楽しめます。

運営面でもメリットがあります。夏場は暑さで休止する都内ツアーもある一方、明治神宮は木陰が多く朝も比較的涼しいため、夏も継続して催行できているそうです。同社の複数あるツアーの中でも、年間を通じて安定した集客につながっているといいます。

実際に参加してみると、その価値を体感できました。今回参加したゲストも「朝の観光が好き」と話しており、前日に朝早く浅草を訪れたものの、多くの店が営業前で思ったほど楽しめなかったそうです。一方、この日は本殿周辺もスムーズに見学でき、写真撮影もしやすい環境でした。ガイドのArisaさんは「朝の神社の雰囲気に合わせて、元気すぎない案内を心掛けています」と話していました。

▲人気の撮影スポット・酒樽前も朝ならゆったり。混雑を避けて記念撮影を楽しめる

ガイド中に、混雑時の本殿の写真も見せてくれました。普段の賑わいを知ることで、この時間帯だからこそ味わえる静かな明治神宮の価値をより実感できました。

 

「説明」より「対話」。高評価を生む“日本人の友達”のようなガイド

ツアー中、特に印象的だったのは参加者との会話量の多さでした。

一般的なガイドツアーでは、ガイドの説明を聞きながら進みます。しかしこのツアーでは、歩きながら参加者との会話を楽しむ時間が多く設けられていました。明治神宮は本殿まで距離があり、自然と移動時間が生まれます。Arisaさんはその時間を活かし、参加者の出身地や普段の生活、旅行中の予定などについて質問を投げかけていました。

▲参道を歩きながら自然と会話が広がる

今回のゲストはインド系アメリカ人の家族でしたが、自身の宗教観や文化についても積極的に話してくれました。神社や神道について学ぶだけでなく、お互いの文化を知る時間にもなっていました。

▲参拝の作法も必要最低限に。神社文化を学びながら、心地よいテンポで体験が進んでいく

このツアーでは、ガイドがゲストのことを知るだけでなく、自分自身のこともオープンに話すことを大切にしているそうです。そのため、参加者には事前にガイドのプロフィールも共有しています。今回も、Arisaさんの英語教師としての経歴が会話のきっかけになっていました。

単なる観光案内ではなく、お互いのことを話しながら、「日本人の友達と散歩しているような時間」をつくる。そうした心地よい時間が、訪日客の記憶に残る体験につながっているように感じました。

 

ブランチは食事ではなく“対話の延長戦”

ツアー終盤、一行は近隣のカフェでブランチを楽しみました。このブランチの時間は、食事を楽しむだけでなく、体験全体の満足度を左右する重要なパートになっています。

明治神宮を歩くだけでも満足できます。ただ、席についてゆっくり話す時間が加わることで、体験はもう一段深まります。参道での会話を通じて関係性ができているからこそ、旅の感想や日本での暮らし、日本人には普段聞きづらいことまで自然に話題が広がります。今回も旅の思い出や日米の暮らしの違いなど、会話は尽きませんでした。

こうした時間は満足度だけでなく、その後のレビューにもつながっています。

▲楽しいブランチの時間。ツアー中に自然と距離が縮まり、会話もさらに盛り上がる

ツアー終了時には、日本のお菓子の詰め合わせとともにレビュー投稿用のQRコードを手渡します。さらにレビュー投稿者には箸をプレゼントする仕掛けも用意されています。

主催の木岡さんによると、ガイドによってはレビュー依頼にハードルを感じることもあるため、プレゼントをきっかけに自然にお願いしやすくしているそうです。旅の思い出にもなる小さな工夫ですが、最後まで満足度を高める仕掛けとして機能していました。

▲最後には小さなおみやげのサプライズ。レビュー導線も自然に組み込まれていた

 

評価4.98はどう生まれたのか。運営者に聞く高評価ツアーの裏側

朝の静かな明治神宮を舞台に、多くの訪日客から支持を集める「Meiji Shrine Morning Walk & Brunch」。その体験づくりの裏側について、運営するJapan Local Experience代表の木岡さんに話を聞きました。

— どのような方が参加されることが多いのでしょうか?

一番多いのはアメリカを中心とした北米からのお客様です。加えて、ドイツや北欧などヨーロッパからの参加も多いですね。

属性はソロ旅行者、カップル、ご家族と幅広いですが、他のツアーと比べると50代以上の方も多い印象です。特にヨーロッパのお客様は、日本について事前によく勉強されている方が多いですね。

— 主な予約経路について教えてください。

現在はAirbnb、Viator、byFood.comで販売しており、最も多いのはもともと始めたAirbnb経由です。

最近は自社サイト経由も増えています。会社のInstagramアカウントのフォロワーが1万人を超えたこともあり、SNSから認知して、そのまま予約するケースも増えてきています。

— このツアーを始めたきっかけを教えてください。

もともとは新宿の居酒屋ツアーを運営していましたが、訪日客と話す中で、多くの人が明治神宮を訪れていることが分かりました。ただ、明治神宮をゆっくり歩いて楽しむウォーキングツアーが少ないことに気づき、2019年に始めました。

— ツアー中の案内で意識していることはありますか?

説明しすぎないことです。ガイドは神道や明治神宮について勉強しています。ただ、多くの参加者は講義を聞きたいわけではありません。

詳しく知りたい方には答えられる準備をしつつも、基本は「ほどよく日本を知りたい」というニーズに応えることを大切にしています。知識を伝えるより、その場の空気や会話を楽しんでもらう。そのほうが結果的に満足度は高くなると思っています。

今回の明治神宮での体験を通じて見えてきたのは、訪日客の満足度を左右するのは、必ずしも特別な演出や豊富な知識ではないということです。集合時の安心感、朝という時間の活かし方、会話が生まれる場づくり、最後のひと工夫。そうした積み重ねが、高評価レビューにつながっていました。地方の体験コンテンツでも応用できるヒントは少なくありません。

 

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