データインバウンド
旅するLGBTQ+の「不安」と「自信」 旅行業界によるインクルーシブな支援が重要ーブッキング・ドットコム調査
2023.07.12
やまとごころ編集部誰もが安心して楽しめる旅の実現を目指すブッキング・ドットコムは、日本を含む世界27カ国のLGBTQ+の旅行者1万1555人に「旅行」に関する調査を実施。旅行への不安要素、旅への期待などを詳しく聞き、その統計結果を7月6日に発表した。
旅先選択に重要なこと、LGBTQ+としての安全性とウェルビーイング
旅行先の選択について、LGBTQ+としての安全性やウェルビーイング(心身的、社会的な健康)を考慮すると答えたのは、日本人の調査対象者の60%(世界の対象者では80%)で、昨年の48%(世界64%)から大幅に上昇。また、日本の43%(世界71%)は、LGBTQ+を当事者に対する態度や差別、暴力をめぐるニュースといったことも旅先の選択に影響すると答えた。
同性愛を犯罪とみなす国が世界に64カ国、死刑を科す国が11カ国存在するという事実から、日本の43%(世界64%)が旅行対象外の国がある、と答えている。旅先がLGBTQ+をサポートしないと分かり、キャンセルの経験があるのは日本で28%(世界41%)、旅先で差別を受けたと答えたのは日本25%(世界58%)。その経験には以下のようなものがあった。
・偏見に晒された 日本6%(世界29%)
・他の旅行者からの差別的な態度を感じた 4%(20%)
・現地の人からの差別的な態度を感じた 7%(18%)
・地元の警察など公的機関から脅迫や威圧的な態度をとられた 4%(13%)
トランスジェンダーの人は、性自認や名前などが一致しないパスポート情報から起こるトラブルもある。旅行中の服装、メイクといった選択にも影響がある、と答えたのは日本48%(世界62%)、性別や代名詞を勝手に決めつけられた経験があるのは5%(19%)だった。
起こりうるトラブルを回避するために行動を変える、見た目を変える努力をする、と答えたのはそれぞれ10%(32%)、8%(25%)となった。これは2022年の6%(22%)、5%(16%)と比べて増加傾向にある。特に世界のZ世代の間では増加が顕著で、それぞれ11%(40%)、14%(32%)となっている。旅行は本来、自由を満喫し開放感を味わうものであるべきものなのに、LGBTQ+として窮屈な体験を強いられている現状が伺える。
LGBTQ+の旅行者にとっては、法整備が十分な国に旅する場合でも不安は大きい。以下の統計を見ると、いかなる旅でもそれが払拭できていないことがわかる。
依然として課題は多数あるも、2022年よりポジティブな体験が増加
目的地を選ぶ際に考慮することとして「身の安全への懸念」を挙げる人々は日本30%(世界39%)に上り、重要な要素となっている。と同時に、ポジティブな動機として、旅で出会う美しい自然の風景(日本40%、世界49%)、おいしい郷土料理(52%、45%)、素晴らしいビーチ(16%、40%)などが上位にランクインしている。そして、LGBTQ+としての経験が旅行者としての自分に自信をもたらす、としたのは日本58%(71%)で、2022年の52%(62%)から増加していることがわかった。
旅先でのアクティビティについては、どんな体験にも参加できる自信があると答えた人(日本70%、世界83%)が、実際にはLGBTQ+に特化したアトラクションを選択する(45%、65%)傾向が強いようだ。ブッキング・ドットコムでは、パリのマレ地区や新宿二丁目、NYのチェルシー地区などの活気あふれる街を散策するガイドツアーなどを用意、LGBTQ+コミュニティだけでなく、世界のあらゆる旅行者に体験してもらえるようにしている。
宿泊先とのやりとりなどの交流もポジティブな体験になっている、としたのは日本48%(82%)。宿泊施設との到着前のやりとりが有益だったと答えたのは日本15%(42%)、ウェルカムドリンクや親切なスタッフなどの到着時の印象が素晴らしかったとしたのは日本26%(47%)など、こちらも2022年に比べ前向きな回答となっている。
インクルーシブな体験提供に向け、旅行業界のより積極的な支援が必要
旅行業界に対しての意見を聞くと、LGBTQ+に対するフレンドリーな態度や認識で快適さが増した、としたのは日本63%(78%)。しかしながら、旅行を予約することを楽しめた、としたのは同59%(78%)で、これは全ての旅行者を対象とした同様の調査に比べ、24ポイント(5ポイント)低くなった。
LGBTQ+コミュニティに、他の旅行者と同じように受け入れられているというインクルーシブな体験を提供するには、まだまだやるべきことがあることがわかった。チェックイン時に一般的な周辺エリアの案内をもらったのは16%(40%)だったが、LGBTQ+に関連する情報、案内を受け取ったと答えたのは4%(16%)にすぎなかった。現地の法律や宗教的な考え方、安全な場所情報など、地域に特化した情報を得たいとしたのは14%(34%)だった。
また旅行会社、観光スポットやアクティビティの取り組み内容、LGBTQ+が携わる運営ブランドか否か、インクルーシブなポリシーのブランドであるか、などに気をつけると答えたのは全体の半数あり、LGBTQ+コミュニティに対する旅行業界の支援行動やポリシーが、旅行の決定に影響することが見てとれる。
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