インバウンド特集レポート
2023年も残すところあとわずか。
日本では昨年10月にインバウンド観光客の受け入れが本格的に再開されました。欧米や東南アジアに遅れをとったものの、今年に入ってからは訪日客の回復も目覚ましいものがあります。
パンデミックの行動制限のある日々を経て、国内旅行はもちろんのこと、海外へ足を運ぶ人が増えた年でもありました。
改めて、2023年の観光/インバウンド業界はどのような1年だったのか、編集部がセレクトした注目の話題とともに、今年を振り返ります。
1.2025年までの新たな「観光立国推進基本計画」決定。訪日消費5兆円、持続可能な地域づくりに本腰
政府は、2023年3月31日の閣議にて、新たな「観光立国推進基本計画」を決定しました。本来は2021年3月末に改定される予定でしたが、コロナ禍で観光を取り巻く環境が見通しづらいことなどを理由に延期が続いており、2年遅れての決定となりました。
2025年度末までの3カ年計画として、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘致促進」の3つをキーワードに、「持続可能な観光地域づくり戦略」「インバウンド回復戦略」「国内交流拡大戦略」に戦略的に取り組むとのこと。持続可能な観光地100地域、インバウンド消費額5兆円(1人当たりの消費単価20万円)、訪日客1人当たり地方部宿泊数2泊以上など、地方誘客、消費単価増を掲げるなか、訪日客数については2019年比超えを目指すことのみ言及し、具体的な数値は提示しませんでした。
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2.2023年10月の訪日客数250万人超え、コロナ禍以降初の単月で2019年比プラス。完全回復へ
日本政府観光局(JNTO)が11月15日に発表した2023年10月の訪日外国人数*(推計値)は、251万6500人でした。2019年同月比100.8%に達し、新型コロナウイルス感染拡大後、初めて2019年同月を超えました。なお、2023年1月から10月の累計は1989万1100人となり、2019年同期間の74%となっています。特に、東南アジアや米州からの訪日の伸びが著しくなっています。2023年1~10月の累計で、2019年同期比2桁増という市場もあり、シンガポールが2019年同期比19.9%増の39万1,500人、ベトナムで同16%増の49万人、米国は同17.3%増の167万7900人となっています。また訪日客数は少ないものの、伸びが大きい注目市場としては、カナダが14.2%増の35万400人、メキシコが28.8%増の7万5700人、中東市場は18.2%増の9万4300人などが挙げられます。
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3.ATWS2023北海道開催、64カ国・地域から約750人参加。改めて明らかになった日本の可能性と課題
2023年9月11日~14日、北海道でアジア初となるアドベンチャートラベルワールドサミットが開催されました。北海道が中心となり、JNTOなど官民連携で準備を進めてきたATWS2023。AT関係者が強調していたのは、サミットは1つの通過点にすぎず、ATWSを機に世界から注目を集めた日本が、今後どのようなアクションをとるかが最も重要であるということです。2024年11月にAdventure Weekが沖縄で開催されることも決定、AT関係の旅行会社やメディアが参加する5泊6日のファムトリップに向けた準備が始まります。
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4.中国からの訪日旅行約3年半ぶりに完全解禁も増加は緩やか、勢いが出るのは2024年以降か?
コロナ禍以降、長らく中国からの訪日が制限されてきましたが、2023年8月10日、中国政府は国内旅行会社に対して「団体旅行」及び「航空券+ホテル」の販売を解禁しました。約3年半ぶりとなる渡航制限の全廃となりましたが、中国経済の停滞や航空路線の回復の遅れなどが背景となり、2023年1~10月の訪日客数は185万4200人で、2019年同期の約23%の水準にとどまっています(2023年10月単月では、同35%の25万6300人)。
回復は緩やかですが、現時点でも韓国、台湾に続く3番目の市場規模を誇る中国市場の旅行動向やニーズの変化に注視し、いかにして地方誘致や高付加価値化の取り組みを推進できるかが、今後のカギになりそうです。
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5.観光業の高付加価値、各地域で進む。伝統文化、祭りの保全にも活用
人口減少社会に突入し、高い経済成長率を維持することが限界を迎えるなか、少ない人数で効率よく稼ぐことが求められ、観光業でも「高付加価値化」に向けた取り組みが進んでいます。2024年度の観光庁予算要求でも、「高付加価値化」関連の事業に120億円が計上されるなど、2024年も引き続き、注目のトピックスです。
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