インバウンド特集レポート
本格的なインバウンド再開から1年が過ぎた。円安と旺盛な海外旅行需要、日本人気などに支えられて訪日客数は急速に回復、インバウンド消費も大きく伸びた1年だった。2023年を振り返り、2024年はどのような1年になるのか。各市場の専門家による市場予測と観光・インバウンドに携わる事業者に向けてのメッセージを紹介する。
富裕層や著名人による訪日進む、投資も活況
日本政府観光局(JNTO)によると、2023年9月のフィリピンからの訪日客数は4万2800人で、2019年同月比で13.4%増となった。10月は同7%増の6万9200人、11月は1.6%減の6万3700人だったが、2023年1月~11月の累計でフィリピンからの訪日客数は54万3100人に達し、ASEAN加盟国の中ではタイに次ぐ2番目に多い数を記録している。これは、セブー成田間の就航再開に加え、フィリピン国内での日本への関心の高まりや円安の影響も反映している。
現在、フィリピンの富裕層や著名人が訪日旅行を好んでおり、日本への投資も進んでいる状況だ。2024年の訪日旅行の鍵は、伝統的な観光地に加え、独自の文化を持つ地域をいかにしてPRするかである。フィリピン人観光客の好みに合わせたプロモーションが成功のカギを握っている。JNTOは地方誘致を強化し、セラー向け商談会を通じて企業のインセンティブ旅行にも焦点を当て、訪日プロモーションをさらに強化する方針である。
フィリピン人の「7つ」の特性踏まえた旅のプランを
フィリピンは国民の約80%がキリスト教徒であり、文化的にはアジアよりもアメリカの田舎に近いと言われる。フィリピン人は「Faith(信仰心)」「Friendly(友好的)」「Food(食事重視)」「Face(面子を保つ)」「Forget & Forgive(許しの心)」「Fiesta(お祭り好き)」「Family(家族重視)」という7つの特性を持つ。これらの特性を踏まえ、旅程の組み立て、食事の提供、宿泊施設の選定に配慮することが重要である。例えば、長い距離の歩行を避け、滞在時間を長めに確保し、座敷や大浴場・温泉に不慣れな国民性に配慮し、和食の連続提供を避けるといったことが挙げられる。
2024年、観光事業者はフィリピン市場の特性を踏まえた多様な体験を提供し、サステナブルツーリズムやMICE誘致に注力することで、訪日フィリピン人観光客の増加を促すことが可能である。
プロフィール 日本とフィリピン間の経済交流を支援するマーケティング企業「Philippine Primer」事業では、フリーペーパーとウェブポータルサイトを通じてクロスメディアを展開し、日本人、フィリピン人、外国人駐在員に情報を発信。クライアント企業のビジネスチャンス創出と読者への有益な情報提供をミッションとし、インタラクティブなコミュニケーションを通じてフィリピンに新しい社会的動きを生み出すメディアの構築を目指す。 |
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