データインバウンド
サステナブル旅行、旅行者の関心・事業者の取り組み進むも、予約につなげるには課題
2026.09.30
やまとごころ編集部サステナブルな旅行への支払い意向が広がり、旅行会社も取り組みを進めるなか、旅行者に選ばれるためには何が必要なのか。気候変動対策を支援するWren、ATTA(Adventure Travel Trade Association)、米国ツアーオペレーター協会(USTOA)、旅行・観光分野のマーケティング企業MMGY Globalの4者が共同調査レポートを発表した。
レポートでは、気候変動対策に積極的な旅行者401人(2026年3~4月、オンライン調査)、世界13カ国の海外旅行者約5000人、米国のレジャー旅行者を中心とする一般旅行者(2026年2月、米国成人4502人へのオンライン調査など)の3つのデータを比較。旅行事業者側の2つの調査も加え、旅行者層による意識や行動、追加料金の支払い意向の違いと、事業者の取り組みとのギャップを分析した。
サステナブル旅行への追加料金、アジア太平洋・中南米の旅行者84~87%が許容
サステナブルな旅行への追加料金の支払い意向は幅広い旅行者層で見られ、環境負荷を減らすために旅行行動を変える意向も高い。
米国のレジャー旅行者では、環境負荷を減らすために追加料金を支払ってもよいと回答した割合が、2024年の56%、2025年の57%から2026年には60%に上昇した。Z世代では約81%に達するほか、地域別では、アジア太平洋地域や中南米の旅行者では84~87%と、米国を上回る支払い意向を示した。
気候変動対策に積極的な旅行者では、99%が追加料金を支払う意向を示した。追加料金の水準別に見ると、5~10%でも支払う意向がある人は92%、10~20%では62%、20%超では13%だった。いずれも実際の支出ではなく回答者の支払い意向を示したもので、この層の結果は旅行者全体を代表するものではない。それでも、1割以上の追加料金でも支払う意向を示す人が6割を超えており、サステナビリティへの高い支払い意向がうかがえる。
また、米国のレジャー旅行者では、追加料金の支払いを許容する割合が60%だったのに対し、環境負荷を減らすために旅行行動を変える意向を示した割合は82%に上った。追加料金の設定だけでなく、旅行者が環境負荷の少ない行動を選択できるよう、旅行商品の選択肢を広げることも重要といえる。
Z世代の29%が旅行選択でサステナビリティを重視、若年層の市場拡大に注目
米国のレジャー旅行者では、若い世代ほどサステナビリティを旅行選択で重視する傾向があり、今後の旅行市場における世代構成の変化が注目される。
サステナビリティが旅行の意思決定に「大きく影響する」と回答した米国のレジャー旅行者は、全体では15%だった。世代別ではZ世代29%、ミレニアル世代25%に対し、X世代10%、ベビーブーマー世代3%と、大きな差が見られた。
こうした世代間の意識差は、今後の旅行市場を考える上でも注目される。現在、旅行先で6000ドル以上を支出する割合はベビーブーマー世代が23%と最も高い。一方、米国のレジャー旅行に占めるZ世代とミレニアル世代の割合は、2023年の約3分の1から2030年には過半数に達する見通しだ。サステナビリティを重視する若い世代の存在感が、旅行市場でも高まるとみられる。
旅行会社の75%が持続可能な取引先を重視、気候変動対策より地域貢献が先行
旅行事業者側でも、サステナビリティへの取り組みが進んでいる。
米国ツアーオペレーター協会(USTOA)の会員企業を対象とした調査では、75%が持続可能な取引先との連携を重視し、73%が地域社会を支援する旅程づくりに取り組んでいる。一方、炭素排出量の削減・オフセットに取り組む事業者は46%、サステナビリティ戦略を事業全体に組み込む事業者は19%にとどまった。
世界のアドベンチャーツアーオペレーター329社でも、57%が持続可能な取引先から調達し、51%が地域社会への支援を計画している。一方、化石燃料の使用削減に向けた旅程の見直しは34%、気候変動対策の方針を正式に策定している事業者は23%だった。
両調査から、地域貢献や持続可能な調達が、炭素排出量削減などの気候変動対策に先行する傾向がうかがえる。こうした地域経済への貢献は、旅行代金の使途にも表れている。アドベンチャーツアーでは、旅行代金の約75%(平均2250ドルのツアーで約1688ドル)が現地のサプライヤーに支払われ、旅行者1人当たり平均263ドルが現地の手工芸品の購入に充てられている。
認証を重視する旅行者78%、排出量削減を目的に選ぶ人は8% 予約時の情報提供に課題
一方、事業者の取り組みを旅行者の予約時の選択につなげるには、課題が残る。
気候変動対策に積極的な旅行者の78%が事業者のサステナビリティ認証を重視する一方、炭素排出量削減のために予約時に認証取得事業者を選ぶと回答した人は8%にとどまった。また、64%が予約時に明確なサステナビリティ情報を求めており、レポートは情報提供が不十分なことを課題に挙げている。
世界のアドベンチャーツアーオペレーターでは、53%が認証を取得済み、または取得に向けて取り組んでいるものの、その取り組みが旅行者に十分伝わっていない。
また、米国のレジャー旅行者を中心とした一般旅行者の29%は、企業のサステナビリティに関する主張を信用していない。信頼できる情報源には、個人的な推薦(36%)、サステナビリティに言及した口コミ(31%)、第三者認証(22%)が挙がった。
予約時に認証や地域貢献の実績を可視化、体験価値とAI対応も提言
レポートでは、サステナビリティへの取り組みを予約時に分かりやすく提示するよう旅行事業者に提言している。
具体的には、第三者認証や環境対策に加え、旅行代金の現地還元率や取引先など、具体的な実績を示すことが重要だとしている。
具体策として、以下の3点を挙げている。
1.環境負荷の低減と体験価値の向上を両立
気候変動対策に積極的な旅行者の50%が、遠方の憧れの目的地への旅行を最も諦めたくないと回答。直行便や長期滞在などを通じ、旅行者の希望に応えながら環境負荷を抑えることを推奨している。
2.女性旅行者への情報提供を充実
同じ旅行者層では、女性は男性より追加料金の支払い意向が高い一方、費用を障壁と感じる割合も高い(女性46%、男性41%)。信頼できる口コミや推奨情報の提供が重要だとしている。
3.AIによる旅行検索に向けた情報整備
米国の大手ツアーオペレーターのAI利用率は、2年前の28%から80%に上昇。AIによる旅行検索を見据え、サステナビリティ情報をAIが読み取れる形式で整備することを提言している。
【編集部コメント】
サステナブル旅行、選ばれる鍵は「価格」より「価値の伝え方」
サステナブル旅行への追加料金の支払い意向は、世界の幅広い旅行者層で高まりを見せている。一方、米国では追加料金を許容する旅行者が60%に対し、環境負荷を減らすために旅行行動を変える意向は82%に上る。注目したいのは、価格への上乗せだけが選択肢ではないという点だ。地域食材の活用や地元事業者との連携など、すでに行っている工夫も旅行者にとっての価値になり得る。まずは自社の取り組みを棚卸しし、予約ページなどで具体的に伝えることから始めてみたい。
(出典:Wren、ATTA、USTOA、MMGY Global, How Climate-First Travelers Reveal the Future of Sustainability in Travel)
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