データインバウンド
旅行・観光開発ランキング2026、日本が世界1位 需要分散や旅行しやすさの改善が後押し
2026.10.06
やまとごころ編集部世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)はこのほど、「旅行・観光開発指数2026(Travel & Tourism Development Index:TTDI)」を発表した。2007年に「旅行・観光競争力指数」として始まった世界各国・地域の観光開発環境を比較する指数で、2026年版は110の国・地域を対象に、5分野・17項目・102指標で評価した。日本は2024年の3位から順位を2つ上げ、世界1位となった。
なお、2026年版ではデータ改定や対象国・地域の変更、一部指標の調整を行い、2019年、2021年、2024年の数値を再計算している。このため、過去に公表されたランキングとの単純比較ではなく、2026年版レポートに掲載された再計算値で比較する必要がある。
日本が3位から首位へ、スコア5.27でアメリカを上回る
2026年の首位は日本で、スコアは7点満点中5.27。2024年の再計算値からスコアを2.6%伸ばし、3位から1位へ2ランク上昇した。4位だった2019年との比較でもスコアは4.0%上昇している。

2位はアメリカ(5.23)、3位はスペイン(5.22)、4位はオーストラリア(5.18)、5位はフランス(5.17)だった。トップ10の顔ぶれ自体は2024年から変わらないものの、順位には変動があり、オーストラリアも日本と同様2ランク上昇した。
上位には引き続き欧州勢が多く、スペイン、フランス、ドイツ、イギリス、スイス、イタリアの6カ国がトップ10に入った。WEFは、これが欧州の総合的な競争力の高さを示しているとしている。
世界92%でスコア改善、アジア太平洋は3.6%増で地域別トップ
世界全体では、110カ国・地域のうち101カ国・地域(92%)が2024年からスコアを改善した。平均スコアも2024年から2.1%上昇し、2019年以降で最大の伸びとなった。国別ではアルバニアが7.0%増と最大の伸びを記録した。

アジア太平洋地域の平均スコアは2024〜2026年に3.6%上昇し、世界で最も高い伸びとなった。2024~2026年にスコアが最も改善した10カ国・地域のうち7つを同地域が占めた。WEFは、同地域ではコロナ禍後の再開が比較的遅かったことから回復が続き、旅行需要の拡大と供給力の回復が進んだことを背景に挙げている。
日本とオーストラリアも世界全体の平均をやや上回るペースでスコアを伸ばした。特に新興・途上国の改善が目立ち、ラオスは6.1%、マレーシアは5.8%、タイは5.6%上昇した。
日本の首位浮上、「需要の持続可能性」と「国境開放度」の改善が後押し
旅行・観光開発指数は、「環境整備」「旅行・観光政策と実現条件」「インフラとサービス」「旅行・観光の需要喚起」「旅行・観光の持続可能性」の5カテゴリーで構成され、さらに17項目に分けて評価される。
このうち、今回の日本の首位浮上を後押ししたのが、旅行者の特定地域への集中や季節による需要の偏りなどを評価する「旅行・観光需要の持続可能性(104位→56位)」と、海外から旅行しやすい環境を示す「国境開放度(54位→41位)」の改善だ。日本は2024~2026年に、前者で世界2番目、後者で世界4番目に大きな改善を記録した。

WEFは日本を事例として取り上げ、訪日客の出発地と訪問先の双方で分散が進んでいる点に注目している。2025年の訪日外国人旅行者数は過去最高の4270万人に達した一方、中国本土、韓国、台湾、香港からの旅行者の割合は2019年の70%から2025年には65%へ低下。対して、アメリカ、欧州、オーストラリア、中東からの割合は14%から18%へ上昇した。
訪問先の分散も進んでいる。2025年10月の地方部における外国人延べ宿泊者数は前年同月比14.1%増となった一方、三大都市圏では0.8%減だった。WEFは、こうした市場・地域の分散が、特定市場への依存や主要観光地への旅行者集中によるリスクの軽減につながっていると分析している。
日本は「文化資源」「非レジャー資源」で世界1位
日本は、充実した交通網と豊富な文化・非レジャー資源を強みとしている。2026年は「文化資源」と「非レジャー資源」でともに世界1位となった。「文化資源」は遺跡や文化施設、エンターテインメント施設など、旅行の目的となる文化的な資源を評価するもの。「非レジャー資源」は世界都市や大企業、主要大学など、ビジネスや教育を目的とした旅行需要を生み出す要素を評価している。
世界全体でも「文化資源」は2024年から9.6%上昇し、17項目の中で最も大きく改善した。次いで「観光サービスとインフラ」が9.2%、「航空輸送インフラ」が7.2%上昇した。
「観光サービスとインフラ」では、宿泊施設の供給や労働生産性、投資の増加などがスコアを押し上げた。「航空輸送インフラ」の改善とともに、旅行需要の回復を支える受け入れ環境の整備が進んでいる。
「価格競争力」は3.1%低下、観光成長の「管理」が課題に
一方、旅行需要が拡大するなか、価格上昇や人材不足、持続可能性などの課題も浮かび上がっている。「価格競争力」は2024~2026年に対象国・地域の75%で悪化し、世界平均も3.1%低下した。
WEFによると、多くの国で旅行関連の価格がインフレ率を上回って上昇している。人件費や食費、エネルギー費の上昇に加え、燃料・交通価格の変動、旅行需要の増加に供給が追いついていないことなどが背景にある。
また、「旅行・観光の社会経済的インパクト」は3.5%低下し、改善した国・地域は約17%にとどまった。旅行者や旅行消費が増える一方、観光が地域の経済や社会にもたらす効果は低下している。旅行者の集中や混雑による負荷もコロナ禍前を上回っており、観光客が増えるだけでは、その恩恵が地域に広く行き渡るとは限らないことが課題となっている。
WEFは今後、旅行者数を増やすだけでなく、その成長をどう管理していくかが重要だとしている。旅行者や訪問先の分散、地域への利益還元、人材やサービス提供体制の強化などを進め、変化に対応しながら持続的に観光を成長させることが求められる。
【編集部コメント】
世界1位の先に問われる、日本観光の「成長の質」
日本が世界1位となった背景で注目したいのは、旅行者の出発地や訪問先の分散が評価された点だ。一方、世界では価格競争力や観光の社会経済的インパクトが低下しており、旅行者を「増やす」だけでは持続的な成長につながらないことも見えてくる。日本の強みである文化資源を、地域への消費や利益還元にどうつなげるか。今回の首位を、次の観光戦略を考える材料として捉えてみてはどうだろうか。
(出典:World Economic Forum、Travel & Tourism Development Index 2026)
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