インバウンドコラム

世界最大規模のB2B向け旅行博「ITB China2019」上海で開催 日本勢スキー、スノボなどスポーツツーリズムの魅力をアピール

2019.06.28

堀内 祐香

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2019年5月15日〜17日に上海で、旅行・観光業界のB2B展示会「ITBChina2019」が開催された。これは、世界一の観光取引展示会として知られるITB Berlinの中国版という位置づけで、中国マーケットに特化した見本市。3回目となった今回は、有名な観光地や航空会社、ホテル、旅行業者など世界84カ国から約800企業や団体が集結し、ブース出展や商談会などを通じて、中国の旅行会社などのバイヤーにアピールした。

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世界最大級B2B展示会「ITBChina2019」3回目の開催、スポーツトラベル公式パートナーには日本企業が選出

3日間の会期中に行われた基調講演やスピーチでは、約140名が登壇、会場への来場者は約1.7万人に上った。日本の企業では、ITB中国のスポーツトラベル公式パートナーとして選定された株式会社JTBが、VRゴーグルを使った日本のウィンタースポーツ体験コーナーを設け、来場者に対しスキーなどの魅力をアピールした。

JTBブース内では、群馬県みなかみ町や日中ツーリズム企業家倶楽部も共同出展し、会期中に合計約500社がブースを訪れた。初日の15日には、商談目当てのバイヤーの行列ができるなど、日本市場に対する注目度の高さが際立った。

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左:JTBブース 右:商談会

 

中国人の訪日スキー市場・テーマ型観光市場のチャンスと今後克服すべき課題

5月16日に開催されたフォーラムの中で、「中国人の訪日観光マーケット」というセッションが行われた。ここでは株式会社JTB訪日インバウンドビジネス推進プロジェクト担当部長の藤田清氏による講演及び、JTB上海事務所 副所長の杜立群氏、群馬県みなかみ町 台南事務所所長の阿部真行氏、日中ツーリズム企業家倶楽部創設者の王璇氏によるパネルディスカッションが行われ、訪日スポーツマーケットの動向や、スポーツツーリズム及びテーマ型観光の事例、そして、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けた日中連携の可能性と課題などをテーマに議論がなされた。

 JTBの推測によると、スキーやスノボなどを目的に訪日する中国人は年々増えており、2017年は19.1万人だったという。中国国内にも多数のスキー場があるにも関わらず日本のスキー場が選ばれるのは、交通の利便性、良質な雪質、充実したインフラサービスなどが主な理由とのこと。JTBは、外国人向けのスキー技能検定の受講プログラムを開発したり、中国でスキー場を経営する企業向けの視察旅行を催行しているほか、今年1月には群馬県みなかみ町と連携して外国人が参加する雪合戦大会を開催するなど、独自の工夫を行ってきた。群馬県みなかみ町の阿部氏は、みなかみ町の魅力はスキーだけではなく、雪合戦などのスノーアクティビティや、温泉体験など豊富なコンテンツが揃っていることを強調した。

一方、日中企業家倶楽部の王氏は、盛り上がりを見せるスキーインバウンドの課題に言及。中国国内の旅行会社の専門知識やネットワーク不足により、消費者のニーズに適う商品の提案ができていないことを指摘。また、日本国内の受入れ施設に関しても、中国語対応などの言葉の問題や、スキーやスノボのレッスンを担当するインストラクターの知識やスキル不足も課題であることに触れ、今後これらの課題に対応できるかどうかが、マーケット拡大のカギを握る、と話した。

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講演及びパネルディスカッションの登壇者

 

日中旅行業界経営者ランチ商談会、今年はじめて開催

最終日には、インバウンド関連のベンチャー企業を経営する中国人を中心に創設された、日中観光産業の活性化に取り組む団体「日中ツーリズム企業家倶楽部」の主催により、日中旅行業界の経営者間のネットワーキングイベントも開催された。

ITB中国の協力も得て今年初めて開催されたこのイベントには、中国の旅行関連のバイヤー30社、日本企業から10社、合計40社60人程度が集まり、商談や情報交換が行われた。

ネットワーキングイベントでは、日本企業が各社ステージに登壇し、それぞれの強みや魅力をプレゼンテ―ションした。参加した中国のバイヤー企業からは「今後のビジネスにつながりそうな新しい情報やサービスを得られて、良いネットワークができた」と好評だった。

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2017年に初開催されたITB中国だが、3回目となる今回、会期中に初めて中国旅行市場業界レポート「ITB China Travel Trends Report(Customized Travel Research Report)」が発表された。それによると、中国市場での個人向けカスタマイズ旅行が大幅に増加し、2級都市の旅行需要が急成長しているようで、こうした最新トレンドを、日本側の出展各社も実感したようだ。

 

[イベント概要]

ITB中国2019
主催者:MB EXHIBITIONS SHANGHAI
日程:2019年5月15日~17日
場所:上海万博エキシビション&コンベンションセンター
来場者数:延べ1.7万人
出展団体数:800企業、団体
海外出展国:84カ国

日中旅行業界経営者Executive Networking Lunch
主催:日中ツーリズム企業家倶楽部(協力:ITB China)
日時:5月17日(金)12:00-14:30
場所:ITB China展示会場区内MeetingHub
参加企業:日本企業10社(株式会社JTB/Relux China/Tourcandy株式会社/Yok株式会社/株式会社粉雪天堂/株式会社やまとごころ/株式会社阪急阪神ホテルズ/Rakuten Travel China/KADOKAWAグループJ-GUIDE Marketing 株式会社/有一居)、中国バイヤー30社

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