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2021年7〜9月の国際観光、ワクチン普及や入国規制緩和で改善傾向も地域間格差大きく —UNWTO

2021.12.14

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UNWTO(国連世界観光機関)の最新データによると、2021年第3四半期(7月~9月)における世界の観光客数(国際観光客到着数)は、前年同期比で58%増となった。依然としてパンデミック前の2019年の水準を64%下回っているものの、コロナ禍にあって回復しているといえる。また、2021年1月~9月の世界の観光客数は前年比20%減となったものの、1月~6月(54%減)と比較して明らかな改善が見られた。

 

夏期旅行シーズンの欧州が観光客数増加を後押し、前年を上回る地域も

海外渡航需要の増加は、急速な予防接種の普及や入国規制緩和が進んだことで、旅行への信頼性が高まったことによる。8~9月に関していえば、世界の観光客数はパンデミック開始以来最高の月間実績(2019年同期比で63%減)となった。これは欧州が夏季の旅行シーズンだったことが大きい。ペントアップ・デマンド(潜在的需要)が発生していた欧州では、EUデジタルCOVID証明書によりEU内の自由な移動が促進されたのだ。これにより、欧州の2021年1月~9月の到着者数は2020年同期と比べると8%の減少にとどまった(2019年比では69%減)。

南・地中海ヨーロッパ、カリブ諸国、北米・中米などの地域では、2021年1月~9月の到着者数が2020年を上回った。北中南米は前年同期比1%増(2019年比65%減)で世界で最も減少幅を縮めた地域となった。また、カリブ海地域は前年同期比55%増(2019年比38%減)となり、その他南アジアの島々や南・地中海ヨーロッパの一部地域でも第3四半期に過去最高を記録し、入国者数がパンデミック前の水準に匹敵、あるいは上回ったというデータもある。

 

ばらつく回復度、アジアは依然低調

このような改善は喜ばしいものの、回復のペースは依然として遅く、移動制限、ワクチン接種率、旅行者の信頼度などが異なることで、各地域で回復度にばらつきがあることが問題だ。

例えば、第3四半期で欧州では53%減(2019年同期比、以下同)と北中南米では60%減と相対的に改善したが、アジア・太平洋地域の到着者数は国境閉鎖の影響で95%減となり、アフリカは74%減、中東は81%減だった。一方で、クロアチア(19%減)、メキシコ(20%減)、トルコ(35%)は2021年7〜9月期に到着者数の最高値をマークするなど、渡航先の地域規模による格差が顕著となった。

 

パンデミック前の水準に戻ったメキシコの国際観光収入

国際観光収支においても改善が見られた。国際観光収入ではメキシコは2019年と同じ収益を記録し、トルコ(20%減)、フランス(27%減)、ドイツ(37%減)は年初からの減少幅が比較的小さくなった。観光支出額の増加は、多額の貯蓄とペントアップ・デマンドによると推察できる。1旅行あたりの平均国際観光収入は、2019年の1000ドルから2020年には1300ドルに上昇。そして2021年には1500ドルを超えると見込まれている。

 

変異株の脅威、再びか 

今後の展望は、決して明るいとはまだ言えない。UNWTOの最新データによると、国際観光客到着数は2021年も2019年水準を70~75%下回るとし、2020年同様の落ち込みが予想される。2021年の国際観光収入は、7000~8000憶ドルに達する見込みで、2020年と比較して若干の改善とはなるものの、2019年に記録した1.7兆USドルの半分以下だ。観光業の経済的貢献は、2021年には1.9兆USドルと推定され、パンデミック前の3.5兆USドルを大幅に下回る。

第3四半期の実績では、一見順調に回復に向かっている国際観光だが、油断は禁物。UNWTOのポロリカシュヴィリ事務局長は、「2021年第3四半期のデータは励みになる一方で、入国者数はパンデミック前の水準を76%下回っており、世界の各地域での結果は不均一なままだ。予防接種への平等なアクセスの確保、渡航手続きの調整、移動を容易にするためのデジタル予防接種証明書の活用や支援継続などの努力が必要だ」と楽観視はしていない。世界の一部地域での感染急拡大やオミクロン株の出現に直面している今、国際観光の安全な再開には、各国の協調した対応が不可欠となるだろう。

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