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LGBTQ+旅行者の自己開示は3割、宿泊・予約行動に表れる安全ニーズー2026年Booking.com調査

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旅行中に自身の性的指向や性自認を開示せず行動するLGBTQ+旅行者が少なくない実態が明らかになった。Booking.comが公表した「Travel Proud Research 2026」(調査期間:2026年2月〜3月)によると、世界19カ国・地域のLGBTQ+旅行者1万3331人を対象とした調査では、旅行中に自己開示している人は3割未満にとどまった。また、出張や宿泊施設選び、現地情報の収集でも、性的指向や性自認による不利益や不快な経験を避けるため、行動や自己表現を調整する傾向が確認された。

背景には、国や地域によってLGBTQ+に関する法制度や社会的受容、家族・宿泊・入国時の扱いが異なる現状があり、旅行先ごとの環境の違いが、旅行者の意思決定や旅行体験にも影響している実態がみられた。

 

旅行中に自己開示する人は3割、4割が「行きたい場所のためなら隠す」

調査では、旅行中に自身がLGBTQ+であることをオープンにしている人は31%にとどまった。一方、40%は「行きたい旅行先へ行くためなら、自身のアイデンティティを隠してもよい」と回答した。

また、旅行中に自身をオープンにしていない旅行者は、LGBTQ+旅行者の中で唯一、過半数が「性的指向や性自認によって旅行体験に影響が及ぶ不安を感じていない」と回答した層だった。過去1年間に性的指向や性自認に関連したネガティブ体験をした割合も34%と、全体平均(62%)やトランスジェンダー旅行者(73%)を下回った。

レポートでは、この結果を「安心して旅行できている」のではなく、「自己表現を抑制することで安全を確保している状況」と捉えている。旅行市場における受入環境整備の必要性を示す結果といえる。

 

ポジティブ体験は82%、一方で半数超が行動変容を経験

旅行中の体験では、82%が性的指向や性自認に関連するポジティブな経験をしたと回答した。特に、スタッフの歓迎姿勢や適切な対応(34%)、プライド旗やジェンダーニュートラルトイレなどの表示(32%)、LGBTQ+スタッフの存在(32%)が評価された。

一方、ネガティブな経験をしたと回答した人の割合は58%にのぼった。具体的には、「手をつながないなど行動を変えた」(18%)、「パートナーを友人や兄妹と誤認された」(16%)、「宿泊施設スタッフへ相談しづらかった」(15%)などが挙がり、旅行中の行動や自己表現にも影響していた。

 

旅行中の自己開示や安心感に地域差、タイ・インドでは受容改善の一方で不安も高水準

レポートでは、LGBTQ+旅行者の多様な旅行行動を地域別、世代別、属性別などの視点からも、整理している。

地域別の調査結果では、旅行中の自己開示や安心感に大きな違いがみられた。旅行中の自己開示率が最も高かったのはスペイン(57%)で、調査対象国の中で唯一、過半数が旅行中に自身をオープンにしていた。一方、日本では41%、イタリアでは39%が「日常生活でも旅行中でも自己開示していない」と回答した。また、台湾(36%)は、調査対象国で唯一、親しい友人より旅行中の方が自己開示しやすい傾向がみられた。

旅行を自由や解放を得る手段として捉える動きもみられ、シンガポールでは、自国におけるLGBTQ+への制約から距離を置くために旅行すると回答した割合が38%と、世界平均(18%)を大きく上回った。

さらに、タイのLGBTQ+旅行者の93%、インドのLGBTQ+旅行者の74%は、近年LGBTQ+への社会的受容が改善したと感じており、世界平均(58%)を上回った。一方で、両国の旅行者は調査対象国の中でも旅行時の不安感が高い傾向にあり、受容の進展が必ずしも安心感の向上につながっていない実態も示された。

 

世代・家族構成で異なる旅行行動、安全と制度への配慮が課題に

世代別の調査結果では、旅行に求める価値や安全意識に違いがみられた。高年齢層ほど旅行中に「自分らしくいられること」を重視せず、人前で親密な行動を控える理由としても現地の文化や慣習への配慮を挙げる傾向が強かった。一方、若年層は安全確保を理由に行動を控える傾向があり、旅行中に親密な行動を取る前に周囲の安全性を確認する旅行者は48%に上った。

▶︎人前で親密な行動を控える理由に世代差

LGBTQ+旅行者(世代ギャップ)

左:ベビーブーマー世代(61歳以上)― 現地の文化・慣習への配慮
右:Z世代(18〜28歳)― 個人の安全確保

また、ベビーブーマー世代(61歳以上)は、旅行中にネガティブな体験がなかった割合が67%(世界平均42%)と高く、比較的リラックスして旅行していた一方、旅行中に自身を開示していない割合も31%(同12%)と高く、安心感の背景に自己開示を控える傾向がうかがえた。

家族旅行では、法制度や家族構成の違いが不安要因となっていた。主な懸念は、子どもが周囲から異なる扱いを受けること(32%)、家族構成への質問(30%)、「母」「父」を前提とした書類対応(27%)だった。

特に、中南米では子どもが周囲から異なる扱いを受けることに対する不安が世界平均の2倍超、アジアでは入国管理や法的書類への不安(34%)が世界平均(22%)を上回った。

一方、性的指向や性自認に関する属性別では、トランスジェンダー旅行者は安全対策や旅行不安への意識が高く、オープンリレーションシップやポリアモリー層では、コミュニティ情報や他のLGBTQ+旅行者のレビューを重視する傾向がみられた。

 

出張需要の拡大に対し、LGBTQ+従業員への安心設計は追いついていない

世界のビジネストラベル市場は2031年までに2.4兆ドル規模へ拡大すると予測される一方、LGBTQ+従業員にとって出張時の安全性や支援体制は依然として課題となっていることも今回の調査からわかった。

調査では、仕事目的の旅行で50%が「リラックスできる」と回答した一方、23%は不安を感じていた。また、45%は安全確保のため出張中に自身のアイデンティティを隠した経験があり、52%は高リスク国への出張をキャリアへの悪影響なく辞退できると回答した。

一方で、企業側の支援不足も明らかになっており、49%は企業側の出張ポリシーや支援制度の説明不足を、46%は渡航前のLGBTQ+関連法規に関する情報不足を感じていた。さらに、42%は懸念を社内で相談しづらいと回答している。

こうした状況は就業判断にも影響しており、58%は勤務先選びでLGBTQ+旅行保護方針を重視し、44%は方針が不明確な企業への応募や就職を避けた経験があった。出張時の安全配慮は、福利厚生ではなく採用・定着にも関わる要素になりつつある。

 

テクノロジーが旅行時の安心を支援、AI活用と安全対策が進む

さらに、LGBTQ+旅行者にとって、テクノロジーは旅行の利便性向上だけでなく、安全確認や情報収集を支える手段になっている。

調査では、44%が数年前と比べて旅行時により多くの安全対策を取るようになったと回答した。具体的には、信頼できる相手との位置情報共有(25%)、VPN利用(19%)、国境通過前のアプリ削除(17%)、一時利用の携帯電話の持参(18%)などが挙げられた。

一方、66%は過去1年間にAIを使って旅行計画を立てたと回答した。37%は現地のLGBTQ+コミュニティに関する繊細な質問を人よりAIに相談しやすいと感じ、43%はAIから偏見のない客観的な旅行アドバイスを得られると回答した。また39%は、通常検索では見つけにくいLGBTQ+フレンドリーな施設探しにAIが有効だと考えている。

さらに、30%はオンライン予約時に「LGBTQ+フレンドリー」フィルターが役立つと回答しており、旅行事業者には安全性や受入姿勢を分かりやすく伝える情報発信も求められている。

【編集部コメント】

安心は「ある」ではなく「伝わる」が問われる時代

この調査で注目すべきは、LGBTQ+旅行者の満足度やポジティブ体験の高さだけではなく、その裏側で「安心のために行動や自己表現を調整している」という実態だ。自己開示率3割、行き先のために自身を隠す人が4割という数字は、受入環境が利用意向や予約行動に直結している可能性を示している。観光事業者や地域に求められるのは、設備整備だけではない。情報発信やスタッフ対応も含めた“安心が伝わる設計”が競争力となる時代だ。旅行前の段階から、安心を届ける工夫が十分に機能しているかを見直す視点も重要になりそうだ。

(出典:Booking.com, Travel Proud Research 2026

 

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