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世界の都市デスティネーション・トップ100発表、欧州が多数ランクイン 東京はアジアトップの15位

2022.04.28

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イギリスに本拠を置く市場調査会社ユーロモニター社が、2021年の世界の都市デスティネーション・トップ100(Top 100 City Destinations Index)を発表した。同社は2020年まで国際線到着者数に基づいて主要な旅行都市をランク付けする世界のトップ100都市訪問者数ランキング(Top 100 Cities Destinations)を発表していたが、パンデミックで世界の旅行人口が激減したため、今回からは、世界100都市の魅力を6つの主要なカテゴリー(経済・ビジネス実績、観光実績、観光インフラ、観光政策と魅力、健康と安全、持続可能性)における54の異なる指標を比較し、総合的な都市の魅力度を算出している。

トップ100の顔ぶれを見ると、ヨーロッパの都市がリードしており、39都市がランクイン。特に上位トップ10では8都市がヨーロッパの都市だった。残り2都市は2位のドバイと7位のニューヨークで、アジアは入ってない。やまとごころでも紹介した2019年のランキングでは1位香港、2位バンコクを筆頭に上位をアジアのデスティネーションが多数を占めていたが、2021年版では東京が15位とアジアでは最も高い順位にある。

 

早くから観光客が戻ったパリが1位に

今回のランキングでは総合評価でパリがトップだった。パリは、「観光実績」で最高位、「観光政策と魅力」で世界2位となった。

パリは、アメリカやアジアからの観光客が戻ってきたことで観光実績を伸ばしたが、以前は主要な市場だったイギリス人観光客の回復は遅れている。ただし、2022年3月31日にイギリスがフランスの「グリーンリスト」(感染リスクの少ない国のリスト)に追加されたため、今後は状況が変わるだろう。

「健康と安全」では、ワクチン接種を敬遠する人たちが多く71位と、トップ10のなかでニューヨークに次いで低い。フランス各地で行われたワクチン反対派のデモが日本のニュースで取り上げられることも多かった。

2位のドバイは、2020年7月から外国人観光客に開放されており、2021年には万博を開催して盛り上がりを見せた。政府が旅行・観光業を支援する取り組みに積極的で、新興国の都市としては唯一トップ10にランクイン。「健康と安全」では上位10都市のなかで最も高い順位につけた。2022年4月現在、ドバイの人口の98%以上がワクチン接種済みで、公共の場所や観光地で厳格な安全対策がとられているため、訪れる外国人観光客や地元の観光客のあいだで信頼度が高い。

3位のアムステルダムはかつてオーバーツーリズムで悪評が高かったが、テクノロジーを駆使してオーバーツーリズムに取り組んでいる点をユーロモニターは高く評価している。また、人口増加、失業率の改善、可処分所得の増加により「経済・ビジネス実績」でトップ10の都市では最も好位置につけた。

スペインは4位のマドリードと10位のバルセロナの2都市がトップ10に入った。特にマドリードは、「持続可能性」で世界1位、「観光政策と魅力」でも世界3位となった。

ドイツの都市もベルリン(6位)とミュンヘン(9位)の2都市がトップ10入りを果たした。これらの都市のパフォーマンスはすべてのカテゴリーで比較的安定しているが、ランキングの向上は「観光実績」と「観光政策と魅力」の指標が好調だったことによる。

 

日本が評価された観光インフラの重要性

11位から20位までの顔ぶれは、ウィーン、ミラノ、プラハ、ロサンゼルス、東京、ダブリン、リスボン、フランクフルト、チューリッヒ、イスタンブールで、ここでもヨーロッパの都市が多かった。

さて、15位に入った東京だが、「観光インフラ」で、ロンドンに次ぐ2位という高い評価を得た。観光インフラの整備は、デスティネーションの競争力を高め、観光サービスを充実させ、観光客に新たな体験を提供する上で、依然として重要な役割を担っている。観光インフラの上位10都市は、アジアとヨーロッパに集中している。

このカテゴリーでトップになったロンドンは、文化やレクリエーション、教育などの分野で高い評価を得ている。ロンドンには6つの商業空港があり、2019年には1億8000万人以上の旅客を迎えた。パンデミックや規制の解除に慎重なため、総合ランキングでは8位に落ちたものの、2021年の観光インフラランキングの首位には影響しなかった。ちなみに観光インフラ3位は総合順位44位のモスクワだった。

東京以外のアジアの都市では、24位のシンガポールが「経済ビジネス実績」と「健康と安全」で1位となったが、「持続可能性」の評価が低かった。そのほか、日本では大阪、京都、福岡、札幌がトップ100にランクインしている。

パンデミック前のランキングと同様に、2021年のランキングはその年のスナップショットに過ぎない。2021年は、世界的な危機の後、都市は再び足場を固め、ある都市は他の都市よりも早く世界に門戸を開いた。来年のランキングもまた、コロナ禍の回復という速い流れの中で、間違いなく異なるものになるだろうとユーロモニターのレポートは結んでいる。

 

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