データインバウンド
アジア太平洋のインバウンド、2028年に最大7.6億人と予測も1.6億人の下振れ余地
2026.04.23
やまとごころ編集部アジア太平洋地域の観光は回復から成長局面に移行する一方、先行きには不透明感も残る。Pacific Asia Travel Association(PATA:太平洋アジア観光協会))が発表した「Asia Pacific Visitor Forecasts 2026–2028」によると、同地域への国際訪問者数は2026年以降にコロナ禍前の水準を上回り、2028年には最大7億6120万人に達する見通しだ。一方で、地政学リスクや経済変動の影響によっては、約5億9970万人にとどまる可能性も示されている。
本予測は39の国・地域を対象に算出されたもので、APACを中心に、アメリカやトルコ、メキシコなども含めた比較となっており、観光市場全体の動きを幅広く捉えた内容となっている。
アジア太平洋訪問者数、2028年最大7.6億人も下振れで2019年比88%のリスク
アジア太平洋のインバウンドは、回復を経てさらに成長が見込まれる一方で、その伸び方には幅がある。標準的な予測では2028年に7億6120万人とコロナ前を上回る見通しだが、下振れ予測では2019年の6億8270億人と比較して約88%の5億9970万人にとどまる可能性もある。両者の差は約1.6億人にのぼり、外部環境が需要に与える影響の大きさがうかがえる。
▶︎アジア太平洋地域への訪問者数推移と将来予測
青線:現在の回復基調が継続した場合の標準的な予測
赤線:地政学リスクや経済変動などの影響を考慮した下振れ予測

背景には、地政学的な緊張や経済の不安定さがある。紛争や国際関係の変化は、渡航需要や国境を越えた移動に影響を与える要因とされる。
さらに、航空便の供給不足や運賃の高止まり、ビザ政策の変化、気候変動の影響なども重なり、観光市場の先行きは読みづらさを増している。デジタル化やAIの進展といった環境変化も進む中、成長のペースや地域ごとの差が大きくなる見通しだ。
Pacific Asia Travel AssociationのCEO、ノル・アフマド・ハミド(Noor Ahmad Hamid)氏は「観光は成長を続けるが、さまざまな圧力が強まっている。従来のような安定した成長は見込みにくい」と述べ、状況に応じた柔軟な戦略とデータに基づく判断の重要性を強調している。
回復の地域差は拡大、27地域がコロナ前超え。日本は150%超と突出
デスティネーション別では回復のばらつきが顕著な点も指摘された。2028年までに39地域中27地域がコロナ禍前の訪問者数を上回る見込みだ。中でも、日本、モンゴル、チリ、モルディブ、スリランカは2019年比150%超と高い回復を示すと予測されている。
また、中国、アメリカ、トルコは訪問先として多くの旅行者を集める主要デスティネーションだ。日本も訪問先として5番目に位置している。
▶︎アジア太平洋の主要旅行先と訪問者の出発市場
上部のグラフ:各国・地域における国際訪問者数の推移と今後の見通し
下部:各デスティネーションにおいて、どの国・地域からの訪問者が最も多いかと、その割合
※本図はAPACに限定せず、観光動向を広く捉えるため、米国やトルコなど域外の主要デスティネーションも含めている

一方、中国や香港、アメリカ、韓国は海外旅行者を多く送り出す市場として、観光需要を支える存在となっている。こうした上位市場だけで、APACへの総到着者数の約53%を占めており、特定市場への依存度の高さもうかがえる。
▶︎アジア太平洋の主要送客市場(出発地)ランキングと将来予測
2026年から2028年にかけて、APACに旅行する訪問者の出発市場別ランキングとその推移を示す

特に香港は中国からの旅行者が77%を占めるなど依存度が高く、日本も韓国が22%と近距離市場への依存が一定程度みられる。
特定市場依存がリスク、需要分散と官民連携が安定成長の鍵
先行きが不透明な中で、Pacific Asia Travel Associationは、特定の国や地域に依存しすぎない観光戦略の重要性を指摘している。訪問者の出発市場を分散させるとともに、行政と民間が連携して受け入れ体制を整えることが、観光地の安定した成長につながるとする。
また、需要の変化をいち早く捉え、柔軟に対応していくことも欠かせないとし、データを活用した迅速な判断が、変動の大きい市場環境において競争力を左右すると指摘している。
【編集部コメント】
高成長が見込まれる日本市場、持続に向けたヒントはどこに
日本市場の回復・成長は際立ち、2019年比150%超という予測は大きな機会を示している。一方で、韓国など近距離市場への依存は続いており、外部環境の変化に影響を受けやすい構造でもある。アジア太平洋全体で最大約1.6億人の振れ幅が示されたことは、日本にとっても例外ではない。この成長をどう持続的なものに変えていくか。遠距離市場の開拓や単価向上、データに基づく需要把握など、戦略の再設計を検討する余地があるのではないだろうか。
(出典:Pacific Asia Travel Association(PATA) PATA Outlook: Tourism Growth to 2028 Faces Headwinds from Geopolitical Uncertainty)
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