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企業の人手不足、コロナ禍前の高水準に迫る。旅館・ホテルは約7割で正社員不足

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帝国データバンクは、企業の人手不足の状況に関する調査を2022年7月に行い、その結果を発表した。

調査期間は2022年7月15日から7月31日、全国2万5723社を対象に実施したもので、有効回答企業数は1万1503社(回答率44.7%)だった。なお、雇用の過不足状況に関する調査は2006年5月より毎月実施している。

まず、2022年7月時点における従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員について「不足」していると答えた企業が47.7%で、前年同月からは7.0ポイント上昇。2年前からは17.3ポイントの大幅上昇となった。今回の結果がコロナ禍前の人手不足割合に近い水準まで上昇しており、半数近い企業が人手不足感を抱えている結果となった。なお、人手が「適正」と感じている割合は42.5%、「過剰」は9.8%だった。

 

業種別においても、それぞれで人手不足の高まりがみられる。「旅館・ホテル」は66.7%となり、業種別でトップに。次いで、「情報サービス」は64.9%で依然として慢性的な人手不足が続いている。「建設」も62.7%と高い。

業種別で「旅館・ホテル」がトップとなったのは、過去最高だった2019年6月の73.1%以来2年1カ月ぶり。当時は旺盛なインバウンド需要によって盛り上がりをみせていたものの、2020年に入ると新型コロナの感染が拡大し一転した。2020年4月には12.5%まで減少、「第3波」に見舞われた2021年1月には5.3%となり、人手不足割合は過去最低を記録。以降は、徐々に「ウィズコロナ」が定着するなかで人手不足割合は上昇している。

 

非正社員について「不足」していると回答した企業は、前年同月比6.0ポイント上昇の28.5%となった。また、人手が「適正」とした割合は63.2%、「過剰」は8.3%だった。非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が73.0%で最も高い。全業種中で唯一の7割台となり、深刻な人手不足となっている。次いで、総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(56.5%)や、「人材派遣・紹介」(55.4%)、「旅館・ホテル」(55.3%)なども高い。

正社員の人手が不足している企業における賃上げの動向についてみると、2022年度に「2%以上の賃上げを実施」した企業は41.7%となり、全体の36.9%を4.8ポイント上回る結果になった。また、「2%未満の賃上げを実施」は30.8%と3割を超え、合計すると人手不足企業のうち72.5%が2022年度に賃上げを行っていたことがわかった。一方、「賃金を据え置き/引き下げ」は18.8%、「分からない」は8.8%と、いずれも全体を下回った。正社員が不足している企業のうち、3社に2社が「今後、賃上げを実施」するとも考えており、引き続き人手不足とともに賃上げに向けた動きが広がる可能性が示唆される。

今回の結果より、従前から人手不足が慢性化している業種を中心に引き続き高水準となった。今後もコロナ禍の状況や、景況感によってはさらに人手不足割合は上昇することも予想される。こうした状況が続けば、さらに苦境に陥る企業も増加しかねない。帝国データバンク「全国企業倒産集計2022年7月報」によると、2022年1~7月の人手不足倒産は76件発生し、前年同期(59件)を17件上回り、2年ぶりに増加へ転じた。人手不足は自社のみならず、例えば取引先などの周囲でも経営リスクとなっている可能性がある。

 

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