データインバウンド
世界の入国規制緩和を受け、国際線航空チケット販売が2月に急増 —IATA調査
2022.03.04
世界中で入国制限が解除されるにつれ、空の旅の回復が勢いを増している。IATA(国際航空運送協会)は、そのことを示すデータを発表した。
1月下旬より、わずか2週間で、国際線のチケット販売数大幅改善
IATAが発表したデータから、1月25日時点での1週間平均の国際線チケット販売数は、パンデミック前の2019年同期比で38%だったものが、約2週間後の2月8日時点では、同49%にまで回復していることが分かった。2週間で11ポイントも改善されており、これはパンデミックになって以来最速の増加だという。
ゼロコロナ政策をとってきたアジア太平洋地域でも、入国規制緩和がすすむ
IATAが毎月発表している世界の航空需要でも、国際線のRPK(有償旅客が搭乗して飛行した総距離)はわずかながら改善が続いている。2021年の世界平均は2019年比75.5%減で、2020年より0.1ポイント縮まったに過ぎないが、下のグラフにあるように2021年の後半は月ごとに減少幅が縮まり、2021年12月の伸び率では、欧州と北中南米に限ればパンデミック前の6割近くまで戻っていることがわかる。
にもかかわらず国際線のRPKの世界平均が低いのは、アジア太平洋路線で伸びがほとんどなかったからだ。その理由として、IATAはこの地域で国境閉鎖を続けている国が多いことを指摘していた。ところが、この地域でもオーストラリア、ニュージーランド、タイ、ベトナム、フィリピンなどでは最近になって規制緩和が進んでいる。
多くの国・地域で、ワクチン接種者は入国が可能
こうした入国制限緩和の発表に伴い、先述した通り、チケット販売の急増が起きているということだ。IATAが世界上位50の航空市場*(2019年のRPK世界需要の92%を占める)について旅行制限を調査したところ、ワクチン接種を受けた旅行者が利用できる路線が2月に入って増加しているというのだ。
以下のように現在様々な条件はあるもののワクチンを接種していれば入国が可能なのは37市場で、ここには前述したアジア太平洋地域に加え、フランス、イギリス、スイス、スウェーデンなど、世界で発表された一連の規制緩和が反映されている。入国不可の残りの13市場には、中国、日本、ロシア、インドネシア、イタリアなど主要経済国が含まれているという。ただ、これについても刻々と変化する可能性もあり、注目したいところだ。
50航空市場の入国条件(2月17日時点)
37市場 様々な条件下でワクチン接種者の入国可
*うち18市場は検疫や出発前検査の要件なし、10市場は検疫なし
13市場 ワクチン接種者も原則入国不可
IATA、渡航障害の撤廃を訴える
IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は、「航空路線の正常化に向けた機運が高まっている。ワクチン接種を受けた旅行者は、数週間前よりも少ない手間ではるかに広範囲に旅行できる可能性がある。このため、確信を持ってチケットを購入する旅行者が増えている。これは良いニュースだ。そして、今はこの渡航制限の撤廃をさらに加速させる必要がある」と話した。
IATAは引き続いて、次のように呼びかける。
・WHOが承認したワクチンを接種した人に対するすべての渡航障害(検疫や検査を含む)の撤廃
・出国前の抗原検査が陰性だったワクチン非接種者が検疫なして旅行できること
・渡航禁止の解除
・旅行者が新型コロナウイルスを蔓延させるリスクは、一般国民にすでに存在するリスクと変わらないことを認識し、旅行制限の緩和を加速させること
ウォルシュ事務局長は、「渡航制限は人々と経済に深刻な影響を及ぼしている。ウイルスの蔓延が食い止められたわけではないが、我々はリスクを抱える世界で生活し、旅行することを学ぶために今こそ渡航制限を撤廃する時だ。旅行者が市場にすでにある以上のリスクをもたらすことはほとんどない。すでに多くの政府がこのことを認識し、規制を撤廃している」と締めくくった。
世界の動きでも紹介したように、欧州ではすでにワクチン未接種でも入国を認める国が出ている。一方で、ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア、ウクライナ領空の飛行が制限されたり回避する動きがあり、運休も増えている。今後も世界情勢と航空需要の動きを注視したい。
*世界の航空市場上位50:アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、バングラデシュ、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、台湾、コロンビア、チェコ、デンマーク、ドミニカ、エジプト、フランス、ドイツ、ギリシャ、香港、インド、インドネシア、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、モロッコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パキスタン、ペルー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、タイ、トルコ、アラブ首長国連邦、イギリス、アメリカ、ベトナム
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