インバウンド特集レポート
日本はベジタリアン対応の後進国?
さて、マーケットインの考え方から、現地のニーズにどう向き合うべきか。
ここ最近では、ハラルへの関心の高まりで、モスリムフレンドリーの飲食店も増えた。実際に日本で完全ハラル対応は、困難であるので、可能な範囲でのハラル対応の飲食店だ。
一方、ベジタリアン対応が遅れているとの指摘もある。
欧米では、ベジタリアン対応が、ここ20年で急速に伸びたという声がある。
11月にベジタリアンに関するイベントが開催され、満席となるほどの盛況ぶりだった。
それは、Tokyo Smile Veggiesのキックオフイベントで、My Eyes Tokyoの共同開催で、東京の西日暮里にある「フロマエcafe&ギャラリー」で開催された。
マクロビオティックという体に優しい食生活を指向されている女性が集まり、トーキョー・スマイル・ベジーズを立ち上げ、東京のレストランにベジタリアンメニューを広めることをミッションとしている。
参加メンバーは、普段は会社員として勤務しながら、週末利用しての女性たちだ。以前、体調が優れなかったが、マクロビオティックの“ベジ食”に出会い、体質改善ができたという面々だ。そのマクロビオティックを勉強している仲間と立ち上げたという。
この団体のコンセプトは、「東京にベジなおもてなしを!」とあるように、訪日外国人にもベジ食を気軽に楽しめるための飲食店の普及活動だ。決してベジタリアン専門店を増やしたいわけではなく、一般のレストランに一食でもベジタリアンメニューを増やしてもらえるような取り組みだ。
とかく、ベジタリアンというだけで、食事のお誘いが減ってしまうようだ。ベジタリアンも肉が好きな人も魚好きの方も一緒のテーブルにつき、食事を一緒にしたいという。
イベントに参加されていたイギリスのインディペンデント誌の女性ジャーナリストによれば、イギリスでは25%がベジタリアン。肉を毎日食べたい人は少ない。イギリス全部のレストランには、ベジタリアン向けのメニューがあるそうだ。ステーキのベジタリアンフードもある。
つい20年前にはなかったにも関わらず、ここまで普及したのだ。かつて欧米でもベジタリアンメニューは、サラダぐらいしかなかったが。
Tokyo Smile Veggiesによると、年間の訪日外国人は1000万人を超えているが、欧米では12%がベジタリアンだという。
それに対し、東京都内における飲食店9万店舗のうちわずか500店舗ほどがベジタリアン対応を行っているものの、これらのほとんどが「ベジタリアン専門店」だ。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたおもてなしとしては、残念ながら遅れているとしか言えない。
ところで、ベジタリアンについてあらためて説明しよう。ベジタリアンの種類は16種類(※1)とも言われており、ビーガン、ラクトベジタリアンなどと呼ばれ、食べる食材で分かれている。肉だけではなく、魚や動物性のオイルなど、タイプによってまちまちだ。
なぜベジタリアンになったのかも個人により異なる。殺生を嫌う、体質、宗教、環境保護、アレルギーの問題で制限がかかるなど動機も多彩。
(※1:ベジタリアン分類については諸説あり、例えばお肉の中でも鳥肉だけは食べる「ポゥヨゥ・ベジタリアン」をベジタリアンに含めるか否かで見解が分かれるようで、定義する団体によって数は微妙に異なってきています)
Tokyo Smile Veggiesの今後の活動としては、ベジタリアンマップを作成し、ベジタリアンマークを飲食店に貼ってもらいたいという。さらにベジタリアンメニューの提供も考えている。シェフを呼んだワークショップを構想中で、クラウドファンディングを活用しての実現を目指している。
おいしいおしゃれなベジタリアンメニューが全国に増える日も近いかもしれない。
日本には精進料理があり、土壌としてはベジタリアンメニューの相性が高いはずだ。どれだけ本気で取り組むかで普及の速度が変ってくる。
食×体験で新しいニーズを掘り起こす!
さて、次に紹介するのは、飲食と体験をテーマにした取り組みだ。
寿司握り体験が欧米人に人気だ。築地の玉寿司では、おもに個人旅行者の参加が多い。東京の台所・築地市場を見学した上で築地の新鮮な魚介類を使って自らにぎり、その寿司を食べるというもの。
そして11月に、アジアの団体をターゲットにした寿司握り体験が六本木の「しゃぶしゃぶ・すし八山」で始まった。
12月4日には、昨年の訪日ビザ免除を受けて、訪日旅行者数が増加しているタイから、現地有力旅行会社を東京へ招き、都内観光地の視察や、都内観光事業者等との商談会を開催した。そこに寿司握り体験を加えたのだ。日本担当者(6 社6名)の方が寿司握りに挑戦した。
最初は難しく、シャリを多く取りすぎ、またワサビをたくさん載せ過ぎていた。しかし手つきも慣れてきて、だんだんと上手になった。手巻きを2本に握り寿司を8カンが並び、そこで写真を撮って楽しむ。
こちらのしゃぶしゃぶ・すし八山を運営するのは、全国に飲食チェーンを展開するクリエイトレストランツホールディングスの子会社で、日本料理ブランドを展開するクリエイト吉祥。これまでインバウンドにも力をいれきたが、新しく寿司にぎり体験への挑戦だ。
まずお店で、はっぴに着替えてもらう。お祭り気分と衛生面の配慮。
最初は、寿司のストーリーを描いた紙芝居で説明する。寿司の歴史などを分かりやすく図で解説。
次に寿司職人の握りの技を目の前で披露。これほど間近で見ることは珍しく、歓声があがるそうだ。
それから、いよいよ寿司握り体験となる。手巻き寿司2本に、握り寿司8カン。
お客さまによっては、ネタを変えることも可能。また試食会のお食事セットのしゃぶしゃぶを天ぷらへの変更もできる。
最後には、オリジナルの手拭いをプレゼントし、さらに寿司体験の認定証を渡すというプログラムだ。
4名からの催行で、2日前の予約で一人の参加費は5000円だ。
昼は営業していない店舗なので、マックス90名の対応が可能で団体客に向いている。完全に予約制であるため、時間の変更も柔軟に対応できる。
同社がインバウンドを本格的に参入したのが、2010年の10月だ。これまでのノウハウも十分に考慮されている。
最新のインバウンド特集レポート
-
20〜30代FIT層急増、ムスリム対応が成長のカギ。2025年のマレーシア訪日市場 (2024.12.25)
-
消費力が高いメキシコ市場、2025年の地方誘致は建築・アート・マインドフルネスなど特別な体験がカギ (2024.12.25)
-
2025年の訪日消費拡大と地方誘致のカギに、米国市場が注目する6つの新トレンド (2024.12.24)
-
リピーター増と共にローカル志向高まる中東市場、2025年 旅行者に選ばれるための重要なポイントとは? (2024.12.23)
-
完璧な事前の準備よりオープンな心で対応を、2025年拡大する豪州市場の地方受け入れに必要なこと (2024.12.20)
-
地域体験を求めるFIT急増、2025年シンガポール市場獲得に向けて地方ができることとは? (2024.12.19)
-
まだ見ぬ景色を求めて地方を旅するタイ市場、2025年は二次交通が地方誘致のカギに (2024.12.18)
-
香港市場が求める高品質の訪日旅行体験、2025年に米豪市場と競う日本は何をすべきか? (2024.12.17)
-
2025年の台湾市場は定番観光から深度旅遊へ。地方誘致拡大への効果的なプロモーションとは? (2024.12.16)
-
2025年中国FIT市場の潮流、国内感覚で日本の地方を旅する旅行者の心をつかむためには? (2024.12.13)
-
日中往来の更なる活発化が予測される2025年の中国市場、地方分散や受け入れキャパ不足への対応がカギに (2024.12.12)
-
小都市旅行とグルメで進化する2025年の韓国市場、日本人と変わらないスタイルへ (2024.12.11)