データインバウンド
世界の旅行者が注目するサステナブルな旅、その意識と行動のギャップとは?ートリップドットコム調査
2024.11.07
やまとごころ編集部今やサステナブルであることは人間の営みの上で欠かせないことであり、それは旅行においても同様だ。ここでは、世界的な旅行サービスプロバイダーであるトリップドットコム・グループが発表した「サステナブルな旅行消費者レポート2024」について見ていきたい。今回で2回目となるこのレポートは、109カ国の9867名の旅行者を対象に行った調査に基づくもので、サステナブルな旅行に対する意識の高まりと、行動とのギャップが明らかになった。
(図版出典:Trip.com Group Sustainable Travel Consumer Report 2024)
サステナブルな旅行に対する期待と行動のギャップ
今回の調査では、92.0%がサステナブルな旅行の重要性を認識していると回答があったのと同時に、実際に行動に移しているのは56.9%にとどまることがわかった。多くの旅行者がサステナブルな旅行の必要性を口にする一方で、実際に行動に移すことには消極的であるようだ。
▶︎サステナブルな旅行を検討していますか?
サステナブルな旅行を選択しない理由の上位には「そのコンセプトが理解しづらい」という声があり、このことからも消費者教育がサステナブルな旅行の促進に欠かせない要素であることが示唆される。
▶︎サステナブルな旅行を選択しない理由のトップ3
サステナビリティに関する情報提供の必要性
世界の旅行者の平均54.7%が、次の旅行を計画する際にサステブルな選択肢に関する情報を重視している。しかし、何がサステナブルで何がそうでないのかが不明瞭であることや、オンラインでの明確な選択肢不足が、サステナブルな選択を妨げる要因となっている。旅行業界、とりわけOTA(オンライン旅行代理店)はこの情報不足を補う役割を担っており、サステナブルな選択肢を増やすべきだ。
▶︎サステナブルな選択肢が必要ですか?
▶︎サステナブルな旅行を促進するために消費者がOTAに期待することトップ3
とはいえ、サステナブルな旅行を選択する旅行者はすでに、CO2排出量の少ない交通機関を利用し、環境に優しい宿泊施設に泊まり、カーボン・オフセット・プログラムに参加し、使い捨てプラスチックの使用量を積極的に減らしていることもわかっている。旅行業界関係者にとって、こうした消費者の嗜好を理解することは、よりサステナブルな旅行を促進するための次の一手を考える上で効果的といえるだろう。
サステナブルで重要視するところは?地域で異なる認識
サステナブルな旅行に対する意識は共通して高まっているが、具体的にどの側面に重きを置くかについては地域ごとに異なる傾向がある。調査結果によると、旅行者が最も重視するのは「旅行体験の環境面」(47.3%)と「文化面」(38.2%)であり、次に「経済的影響」(32.5%)、「野生生物保護」(27.9%)、「社会的側面」(24.7%)が続く。
▶︎サステナブルな旅行ではどこに重点を置きますか?
APAC(アジア太平洋)やLATAM(南米)では、環境保護がサステナブルな旅行に取り組む主な動機となっている。一方で、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)やNORAM(北米)の旅行者は、環境保護のみならず、野生生物保護や文化遺産、経済的影響にも意識を向けており、サステナブルな旅行に対してより多面的なアプローチをしているようだ。
サステナブルな旅行の経済的負担
消費者教育の不足に加えて、不安定な経済状況や生活費の上昇が、サステナブルな旅行を選択する際のハードルとなっている。調査では、世界の旅行者の38.8%がサステナブルな旅行のために追加費用を支払う意向がないと回答している。ただし、全体の42.5%はある範囲内であれば割増料金を支払うことに前向きだ。
▶︎サステナブルな旅行のために追加費用を支払いますか?
中でも、APACの旅行者においては特にその傾向が強い。一方で、NORAM(北米)やEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)では割増料金に対する抵抗感が比較的高いことがわかった。
▶︎サステナブルな旅行のために追加費用を支払いたくない旅行者は?(地域比較)
サステナブルな旅行は誰が推進すべきか?
世界中で温室効果ガスの削減が求められている中、旅行業界もこの重要な課題を抱えている。調査では平均で35.1%の旅行者が、旅行による悪影響に対処するためにはすべての利害関係者ー個人、政府、旅行業界ーが協力すべきと考えている。ただ、APACの旅行者は、サステナブルな旅行を「共有すべき義務」として捉えるよりも、個人の責任として捉える傾向があり、逆にLATAM(南米)では利害関係者全員で推進すべきと考える人が多い。
▶︎サステナブルな旅行を推進すべきは?(地域比較)
サステナブルな選択をする新世代の旅行者
最後に、今後の旅行需要を牽引するZ世代の旅行者について見てみよう。
Z世代は10人中9人近くがサステナブルな旅行を検討すると答えているが、前述した全体平均と同様に積極的に実践している人は多くない。ただし、Z世代の旅行者の73%がサステナブルな旅行商品を提供するOTAを使う意思を示しており、これはミレニアル世代(76.7%)に次いで多い。また、オンラインでサステナブルな選択肢を探しているのはZ世代が最も多く、環境保全をその主な動機としている。
▶︎サステナブルな選択肢の多いOTAを選びますか
▶︎オンラインでサステナブルな選択肢を定期的に探していますか
とはいえ、Z世代の48.3%はサステナブルな旅行の概念が曖昧であると感じており、31.5%はサステナブルな旅行の利点を感じていないとも回答している。また、35.8%はサステナブルな選択をする際に追加費用を支払うことに抵抗があると回答しており、この傾向は他の世代にも共通している。
こうしたZ世代の特性を理解し、次世代の旅行ニーズを捉えれば、サステナブルな旅行がなお一層普及することが期待される。
▼観光庁の調査でもサステナブルな旅行が重要視されていることがわかります
7割の訪日客がサステナブルツーリズムを重視、台湾・タイ・インドネシアで意識高くー観光庁調査
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