データインバウンド

若年層は意識、高齢層は実践 サステナブル旅行に広がる世代差 ー2026年Booking.com調査

印刷用ページを表示する



オンライン宿泊予約サイトBooking.comはこのほど、旅行とサステナビリティに関する2026年版の年次調査レポートを公表した。

2026年1月に世界35の国・地域*の旅行者3万2500人を対象に実施した調査では、持続可能な旅行への意識は若年層ほど高い一方、具体的な環境配慮行動は高年齢層の実践率が上回る傾向が明らかとなった。また、気候変動による異常気象やオーバーツーリズムへの意識の高まりを背景に、旅行時期や行き先選びにも変化が広がっていることが分かった。

*世界35市場:アメリカ、カナダ、メキシコ、コロンビア、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国、香港、タイ、シンガポール、台湾、ベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国、日本、スペイン、イタリア、フランス、スイス、イギリス、アイルランド、ドイツ、オランダ、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、クロアチア、ギリシャ、UAE、南アフリカ、ケニア

 

若年層は「意識」、高齢層は「行動意向」で差

今回の調査では、「今後12カ月でより持続可能な旅行をしたい」と回答した割合は、Z世代が75%、ミレニアル世代が71%となり、若年層ほど意識が高い傾向がみられた。

一方で、具体的な行動実践意向では高齢層が上回った。ベビーブーマー世代では、旅行中のごみ削減や節電、地域のローカル店舗の利用、ピークシーズンを避けた旅行など、環境負荷を抑える行動を予定している割合が他世代より高かった。

これに対し、若年層では体験型のサステナブル行動が目立った。地域文化や先住民文化に触れるツアーへの参加率は、Z世代が31%、ミレニアル世代が29%となり、野生生物保全につながるアクティビティへの参加も、Z世代24%、ミレニアル世代23%と、他世代を上回った。

 

異常気象リスクが旅行先・旅行時期の判断材料に

気候変動による異常気象は、旅行行動にも影響を与えている。調査では、74%が旅行先や旅行時期を決める際に異常気象リスクを考慮すると回答し、68%は異常気象で知られる旅行先を避けると答えた。

また、55%が旅行予約時に異常気象をストレスに感じており、「暑すぎて行けなくなった旅行先がある」との回答も55%に上った。さらに31%は、猛暑や山火事、洪水、暴風雨などを理由に、旅行計画を変更・中止した経験があるとしている。

宿泊事業者側でも影響は広がっており、Booking.comの調査では、24%が異常気象による業務影響を経験。40%が熱波や暴風雨などの気候リスクを踏まえ、運営を見直したと回答した。

 

「混雑回避」もサステナブル旅行の一部に

持続可能な旅行への意識は、宿泊施設選びだけでなく、旅行時期や目的地選定にも広がっている。調査では、43%が「混雑した観光地を避けたい」と回答し、42%がオフシーズン旅行を予定。25%は、より涼しい気候の旅行先を選びたいとしている。

混雑回避を選ぶ旅行者の44%は「オーバーツーリズムへの加担を避けたい」と回答。オフシーズン旅行を選ぶ人の37%は、「地域社会や環境への負荷軽減」を理由に挙げた。

▶︎旅行者に広がる「混雑回避」「オフシーズン志向」
左から、43%:混雑した観光地を避けたい(うち44%は「オーバーツーリズムへの加担を避けたい」と回答)
42%:ピークシーズンを避けて旅行したい(うち37%は「旅行先への負荷を軽減したい」と回答)
25%:より涼しい気候の旅行先を探したい

2026年、旅行者はより意識的な旅行先選びへ

こうした需要変化は検索動向にも表れている。Booking.comによると、2025年夏季の宿泊検索では、比較的冷涼なノルウェーが前年比33%、スロベニアが29%、フィンランドが27%増となった。暑さ回避や快適性を重視した旅行需要が広がっていることがうかがえる。

また、サステナビリティ認証を受けた宿泊施設への関心も高く、今後12カ月以内に認証取得施設への宿泊を予定している割合は、全世代で35〜36%とほぼ同水準。Booking.comでは、第三者認証を取得した宿泊施設での予約泊数が2025年までに累計1億泊を突破している。

従来の省エネや廃棄物削減行動に加え、「いつ、どこへ旅行するか」という選択自体が、持続可能な旅行の重要な要素として認識され始めている。

 

サステナブル旅行の行動、「ごみ削減」が最多も「手間」「価格」が障壁に

Booking.comが公表した「2026年に旅行者が予定しているサステナブル行動トップ10」によると、「旅行中の廃棄物削減」が52%で最多となり、「野生生物に悪影響を与える行動を避ける」が50%、「エネルギー消費削減」が47%で続いた。

一方、「より持続可能な旅行を阻む要因トップ5」では、「持続可能な選択肢を探すのに手間がかかる」が42%で最多となり、「価格が高い」(38%)、「“サステナブル”表示を信用できない」(37%)なども課題として挙がった。

地元住民は観光を評価する一方、「渋滞」「ごみ増加」には課題感も

今回の調査では、旅行者視点に加え、観光地に暮らす住民から見た観光の影響や課題についても分析した。

回答者の80%が居住地域で日常的または季節的に旅行者を見かけており、60%は「観光は地域に良い影響を与えている」と回答している。

観光のメリットでは、「地域経済の成長」が59%で最多となり、「雇用創出」(46%)、「文化交流や多様性の拡大」(39%)が続いた。

一方、課題では「交通渋滞」(40%)、「ごみ増加」(37%)、「混雑」(31%)などが上位となった。

また、地域住民が必要と考える支援策では、「公共交通機関の改善」が41%で最多となり、「廃棄物管理の強化」が36%で続いた。観光振興と地域生活の両立に向け、インフラ整備や環境対策の重要性が高まっている。

【編集部コメント】

「環境配慮」は一部層ではなく旅行全体の基準へ

今回の調査では、持続可能な旅行が特定の世代や一部の環境意識層だけのテーマではなく、旅行市場全体の意思決定要素になりつつある実態が示された。特に、気候変動による旅行リスクの顕在化や、オーバーツーリズム回避の動きは、今後の観光需要の分散化やシーズン平準化を後押しする可能性がある。

観光事業者や地域にとっては、認証取得や環境配慮の取り組みだけでなく、「混雑しない」「暑すぎない」「安心して滞在できる」といった快適性そのものが、新たな価値提案になり始めているとも言えそうだ。自地域・自施設では、どのような“選ばれる理由”を打ち出せるか、改めて整理してみてもよいかもしれない。

(出典:Booking.com, Travel & Sustainability Report 2026

▼関連記事はこちら
ギリシャとEUから学ぶサステナブル観光の実践

最新のデータインバウンド