インバウンド特集レポート
2019年(令和元年)12月、中華人民共和国湖北省武漢市で発生が確認された「新型コロナウイルスによる肺炎」は、約2ヵ月を経過した今も終息の兆しは見られず、感染拡大の様相を呈している。今回は、新型コロナウイルスによる肺炎の基本情報や日中ツーリズム業界への影響を把握し、観光・インバウンド業界に携わる方々が、今この状況に何ができるか、また備えておいたほうが良いことについて、2回に分けてお届けする。
新型コロナウイルスによる肺炎と中国国内外での感染状況
2020年1月11日、原因不明肺炎により武漢にて男性が死亡したこと発端に、1月30日現在、感染者は中国国内で患者7753人、感染の疑いがある人12000人超、死者170人を数えた。また、中国本土以外の感染者も増加。香港やマカオをはじめ、日本を含む東アジア、東南アジア、欧州、北米など17の国と地域にまで広がっている。
日本国内では、1月16日に1人目の感染者に関する情報が発表されて以来、1月30日現在で感染者は11名にのぼる。当初は、武漢在住者あるいは滞在歴のある人の感染確認にとどまっていたが、中国に渡航経験のない日本人への感染が確認された事から、国内でもパンデミックへの不安が広がっている。
武漢では公共交通機関を運休、観光施設の営業取りやめも
中国国内では、新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受け、様々な拡散防止策を打ち出している。武漢市では、1月23日午前10時から、地下鉄、路線バス、長距離バス、フェリーなど、市内の公共交通機関を運休し、鉄道駅と空港を閉鎖。同市から出発する航空便も運航を停止したほか、湖北省内にある高速道路の入り口や料金所も閉鎖された。また、相乗りタクシーの営業禁止や一般車両の市中心部の走行も禁止となっている。なお、営業停止は観光施設にも及ぶ。「香港ディズニーランド・リゾート」と地元のテーマパーク「香港海洋公園」、「上海ディズニーリゾート」は、感染の拡大防止を理由に当面休園。中国の観光地では営業をとりやめる動きが広がっている。
さらに中国政府は、1月24日~30日までとしていた「春節(旧正月)」の休暇期間を2月2日まで延長することを発表。人が集まる機会を減らし、感染拡大を抑制するのが狙いだが、一方でビジネスへの影響も懸念されている。
日本国内でも、政府主導で感染防止に向けて対応
国内で新型コロナウイルスへの感染者が確認されたことをはじめ、春節における中国人観光客の大量流入、武漢市からの日本人帰国などを受けて、日本政府は関係閣僚に対し、国内の感染拡大防止に全力を尽くすよう指示している。
なお、1月28日、日本政府は閣議決定により、新型コロナウイルスによる肺炎を「指定感染症」に指定。国内で感染が確認された場合、法律に基づく措置をとることができるようした。
また、1月29日には、中国・湖北省武漢からの帰国を希望する、日本人206人を乗せた最初のチャーター機の第一便が羽田空港に到着。同乗した医師らによる検疫、また都内の医療研究センターでの診察の結果、せきや頭痛、発熱が見られた12人が病院に搬送された。
海外団体旅行の中止は、日本国内にも影響
新型コロナウイルス拡散防止対策を講じる中国政府は、1月27日、国内旅行会社に日本を含む、海外への団体旅行を当面中止するように指示。これに対して旅行会社は、無料キャンセルなどの措置を取っている。たとえば、中国の大手OTA「Trip.com」グループでは、武漢発着便の予約を対象とした無料キャンセル措置といった、新型コロナウイルスによる肺炎へのキャンセル対応を行い、状況の変化に応じて条件を追加している。
こういった状況は、日本国内の観光業にも深刻な問題をもたらしている。春節期間に訪日を予定していたツアーが相次いでキャンセルになり、旅行会社や宿泊施設などは対応に追われている。沖縄観光コンベンションビューローの集計によると、28日時点で大型クルーズ船4隻が沖縄への寄港を取りやめになったとのこと。また、入港するクルーズ船には貨物のみ搭載され乗客が乗船してないといったケースも生じているようだ。
ここまで、新型コロナウイルス肺炎の状況や旅行会社への影響を見てきた。後編では、今回のような事態で、訪日外国人を受け入れる行政やDMO、観光事業者の方たちが今取り組むべきことについて、観光危機管理専門家の高松正人氏に話を伺った内容をお届けする。
(次回へ続く)
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