データインバウンド

コロナ禍で旅行者の意識に変化、多様性と持続可能性を重視。旅を通じた地域社会への支援意欲高まる

2021.05.10

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アメリカンエクスプレス・トラベルが世界7カ国の旅行者に2021年の旅行について調査したアンケート結果によると、回答者の87%が「将来の旅行を計画することが楽しみ」と答えていることがわかった。

調査対象はアメリカから2000名、日本、オーストラリア、カナダ、インド、メキシコ、イギリスから各1000名で、2019年に少なくとも1回は航空機を利用した旅行を経験したことのあるアメリカンエクスプレスのカード保有者で、調査期間は今年1月15日〜24日に行った。

「次の旅行の目的は?」という問いに対し、対象国において最も選択した人が多かった回答は以下の通り。日本とイギリスは家族との旅行をトップにあげ、海外に親族が住んでいる場合が多いインドは、家族との再会を楽しみにしているのがわかった。なお、全体の78%はコロナ禍のストレスを和らげるために旅行したいと回答している。

クルーズ旅行にペントアップ・デマンド大きく

また、各国の入国規制が緩和されたり強化されたりと変更が多く、旅行のキャンセルポリシーが柔軟になっていることもあり、56%の人はあとでキャンセルしなければならないとしても今すぐ予約をしたいと考えていることがわかった。

特にクルーズ旅行に対するペントアップ・デマンド(繰越需要)が大きく、2022年のクルーズ旅行の予約を早めに入れる人が多く、クルーズ愛好者のみならず、初めてのクルーズ旅行を楽しみたい人も増えていると、クルーズ大手のカーニバル社がコメントしている。

次の旅行はいつもより多めの支出を予定

全体の回答者の61%は、2020年に旅行できなかったので、2021年は普段よりも多めの支出を予定していると答えた。また、一人旅を計画している人の64%は美味しいものを食べるために休暇を取ると答えており、全体の62%は旅行中に一番やりたいことは美味しいものを食べることとしている。その点で、アメリカ国内ではマイアミ、サンフランシスコ、シカゴ、ヒューストンを、国際カードを持っている人はメキシコ、シンガポール、東京を目的地のトップリストにあげている。

さらに興味深いのは、回答者の65%が休暇を取れるなら、SNSが1カ月できなくてもいいと考えていることがわかった。これはコロナ禍で旅行することに引け目を感じていると推察される。コロナ中にあちこちの旅行先の写真をあげたり、楽しんでいる様子がネガティブに取られかねないという思いと、旅行もままならない人のことを慮ってという、二つの心情が働いているのだろう。

デジタル・ノマドの出現

一方で、コロナ禍で働き方の形態が代わり、リモートワークが当たり前になったことで、デジタル・ノマド(仕事をしながら世界を旅する人)が増加している。特に多いのはインドの87%だが、全回答者の54%はパンデミック以前よりも、仕事をしながら旅行ができる柔軟性に魅力を感じており、ビーチリゾートのワーケーションや長期滞在による宿泊割引などを活用したいと考えている。特に、メキシコ、カナダ、イギリスの利用者は、アメリカ、インド、オーストラリア、日本の利用者より倍ぐらい長い8日以上のホテル予約を考えているとのこと。

また、パンデミックによってラグジュアリーに対する意識が変わっており、個人的な体験(82%)、清潔さ(81%)、プライバシー(79%)が最も贅沢なアメニティであると答えている。実際に80%は、混雑を避けるためにオフシーズンに旅行したいと回答。そして59%が信頼できる旅行代理店に次の旅行計画を立ててもらいたいと考えていることがわかった。

また全体の69%が、混雑を避けるために、あまり知られていない目的地への訪問に興味があると回答している。アメリカンエクスプレス・トラベルの予約データによると、ポルトガルではリスボンよりポルト、ニュージーランドではオークランドよりウェリントンへの関心が高いことがそれを裏付けているという。

旅行への目的意識の変化、地域社会支援のニーズ高まる

自分たちの価値観に沿った企業を通じて旅行を予約したいという意識が高まり、コミュニティにプラスの影響を与えることができる目的地に旅行するようになっている。回答者の59%は、観光を通じて目的地をサポートするために休暇や体験を選択し、「慈善活動」に関心があることが分かった。

さらに旅行者は、目的地をユニークにする中小企業やコミュニティをサポートしたいと考えている。回答者の72%は、観光収入と地域経済の向上を支援するために目的地へ旅行したいとし、77%は、旅行中に地元の小規模企業を支援することをもっと意識したいと考えている

ダイバーシティやサステナビリティに配慮した旅行ブランドを支持

旅行者は、自分たちが利用する旅行ブランドが自分たちの価値観と一致することを期待しており、多様性を促進しているところと予約したいと考えている。そのため、回答者の69%は、多様性と包括性を重視し、従業員が多様な顧客基盤を反映している航空会社/ホテルを選択したいと考えているという

回答者の55%は、「カーボンネガティブ」な旅行に興味があると答え、60%は、カーボンニュートラルな取り組みを行っている航空会社を予約したいと考えている

最後に、回答者の68%は、サステナビリティに配慮した旅行ブランドをもっと意識してサポートしようとしているということもわかった。パンデミックでこれまでの常識が覆されたり、これまで当たり前であったことができなくなったり、旅行者の価値観に変化が起きている。受け入れ側としては否応なしにそれを意識した対応が迫られているといえるだろう。

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